ゲームはいつの間にか生活の一部になりました。通勤の途中、休憩時間、寝る前のひととき。気づけばスマホを開いてゲームを立ち上げている、そんな人は少なくないと思います。私自身も、ちょっとだけのつもりが結構な時間になっていた、という経験があります。
ただ、楽しんでいるうちはいいのですが、ときどき「これはやり過ぎかもしれない」と不安がよぎる瞬間もあります。楽しいはずのゲームが、もし生活のほうを削り始めているとしたら、少し話は変わってきます。
スマートフォンなどでのゲームのやり過ぎが日常生活に支障をきたす状態は、いまや世界的にも無視できない問題として扱われるようになりました。世界保健機関(WHO)は「ゲーム障害(gaming disorder)」を正式な病気の一つとして分類し、その基準を含む国際的な疾病分類が2022年1月に発効しています。これは単なる“遊びすぎ”とは区別され、一定の条件を満たした場合に医療的な対応が検討される状態です。
自分は、あるいは身近な家族は大丈夫だろうか。そんな不安を感じたことがある人に向けて、ゲーム障害の考え方や実態、見極めの目安、そして相談できる場所を整理していきます。ゲームそのものを敵視するのではなく、うまく付き合っていくための材料として読んでもらえればと思います。
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ゲーム障害とは?WHOが正式に位置づけた背景と考え方
ゲーム障害は、単にゲームを長時間プレイすることを指すのではありません。判断のポイントになるのは、あくまで「生活への影響」です。
WHOは国際疾病分類の最新版(ICD-11)でゲーム障害を精神・行動の障害の一つとして収載しました。この分類は2019年の世界保健総会で採択され、2022年1月1日に発効しています。かつて「認定されるかどうか」が話題になった段階から、国際的な診断の枠組みとして正式に動き出した、という位置づけです。
もちろん、ゲームが好きなこと自体は何の問題もありません。多くの人にとってはストレス解消や日々の楽しみであり、それを否定する話ではありません。問題が表面化するのは、その楽しみを自分でコントロールできなくなったときです。
WHOの示す考え方では、おおむね次のような特徴が挙げられています。
- ゲームをする時間や頻度、状況などを自分で制御しにくくなる
- ほかの興味や日常生活よりも、ゲームを優先する状態が続く
- 問題(人間関係・仕事・健康などの支障)が起きても、なおゲームを続けてしまう
こうした状態によって、生活面に明らかな支障が出ていることが前提になります。目安として、こうした状態が通常は12か月以上続いている場合に診断が検討されるとされていますが、症状が重い場合には、より短い期間でも判断されることがあるとされています。
大切なのは、「プレイ時間の長さ」そのものよりも「生活への影響」だという点です。裏を返せば、長時間遊んでいても生活が回っていれば直ちに問題とはされませんし、逆に時間がそれほど長くなくても支障が出ていれば注意が必要、という見方になります。
日本の現状|依存の恐れがある人は決して少なくない
日本国内でも、ネットやゲームへの依存は身近な問題として広がっています。厚生労働省の研究班による調査では、インターネット依存が疑われる人が成人でおよそ421万人、中高生でおよそ52万人と推計されたことがあり、大きな注目を集めました。
この数字を見ると、これが一部の人だけの話ではないことがわかります。街中や電車の中で、スマホの画面に集中している人を見かける機会も年々増えているように感じます。
ただ、ここで誤解したくないのは、ゲームをしている=依存症、ではないということです。次のような状態が保たれている限り、過度に不安になる必要はありません。
- 日常生活に支障が出ていない
- 自分で時間の区切りをつけられている
- ゲーム以外の活動とのバランスが取れている
一方で、仕事や学業、家族や友人との関係に影響が出始めているなら、少し立ち止まって考えたいところです。
ゲーム障害の見極めの目安と、あらわれやすいサイン
ゲーム障害は「なんとなくやり過ぎ」といった感覚で決めるものではなく、専門家が一定の基準に沿って慎重に判断するものです。ここで紹介するのは、あくまで自分の状態を振り返るための目安であり、自己診断で結論を出すためのものではありません。
先に触れたとおり、次の3つの特徴が続いているかどうかが軸になります。
- ゲームへの行動をコントロールしにくい
- ゲームを最優先にする状態が続いている
- 問題が起きてもゲームをやめられない
具体的には、たとえば次のような様子があらわれることがあります。
- 睡眠時間を削ってまでゲームを続けてしまう
- 仕事や学校に遅刻・欠席が増える
- 家族や友人との関係がぎくしゃくしてきた
- 「やめよう」と思ってもなかなかやめられない
こうしたサインが重なり、しかも本人の意思だけでは立て直しが難しくなっているとしたら、無理に自力で抱え込まず、専門的なサポートを検討する段階かもしれません。気になる項目が当てはまったからといってすぐに病気だと決めつける必要はありませんが、目安として頭の片隅に置いておくと役に立ちます。
ゲームは悪者なのか|認定をめぐる議論と冷静な見方
ゲーム障害を病気として位置づけることについては、専門家や業界のあいだで意見が完全に一致しているわけではありません。
ゲーム業界の団体などからは、独立した精神障害として扱うには科学的根拠がまだ十分ではない、といった慎重な声も上がってきました。こうした議論があること自体が、「ゲームそのものが悪いわけではない」ことを物語っています。
- ゲームには娯楽としての確かな価値がある
- 人とつながるコミュニケーションの手段にもなる
- 適度に楽しむぶんには問題にならない
つまり、問われているのは「ゲーム」ではなく「付き合い方」です。過度に不安になる必要はありませんが、無自覚のまま少しずつ深刻化してしまうケースもあるので、そこだけは気に留めておきたいところです。
なお、日本では香川県が2020年3月に「ネット・ゲーム依存症対策条例」を公布し、同年4月に施行しました。子どものゲーム利用時間などについて目安を示した全国初の条例として大きな話題になり、行き過ぎではないかという批判も含めて、社会的な議論を呼びました。ゲームとの付き合い方が、家庭内だけでなく地域や社会全体のテーマになりつつあることを示す出来事だったといえます。
ゲームとの付き合い方|依存を防ぐためにできること
ゲームを完全にやめる必要はありません。大切なのは「自分でコントロールできているか」です。生活とのバランスを保つためには、ちょっとした工夫が効きます。
- プレイする時間をあらかじめ決めておく
- 寝る前のゲームはできるだけ控える
- ゲーム以外の趣味や運動を意識して取り入れる
- 通知や課金の誘導に振り回されない
特にスマホゲームは「いつでもどこでもできる」ことが魅力ですが、その手軽さがそのまま依存につながる要因にもなります。少し距離を取るだけでも、睡眠や集中力といった生活の質がずいぶん変わることがあります。
そして、もし自分や家族の状態が心配になったときは、一人で抱え込まないことが何より大切です。相談できる公的な窓口として、次のようなところがあります。
- お住まいの都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターや保健所(依存に関する相談窓口)
- 各地の依存症相談拠点(厚生労働省の依存症対策として整備が進められています)
- ネット・ゲーム依存を扱う専門の医療機関。国立病院機構 久里浜医療センターは依存症対策全国センターに指定され、ネット依存の専門診療にも取り組んでいます
受診や相談へのハードルは高く感じるかもしれませんが、早めに専門家の視点に触れるだけでも、対処の見通しは立てやすくなります。
「スマホゲーム依存の実態と見極め方」まとめ
ゲーム障害は、ゲームを楽しむことそのものを否定するものではありません。問題とされるのは、あくまで「生活に支障が出るほどコントロールできなくなっている状態」です。
WHOの国際疾病分類にゲーム障害が収載され、その分類が2022年1月に発効したことで、これは個人の自己管理だけの話ではなく、社会的・医療的に向き合うべきテーマとして正式に位置づけられました。
日本でも依存の可能性が指摘される人は少なくなく、決して他人事ではありません。とはいえ、ゲームをしている人の多くは適切な範囲で楽しんでいます。大事なのは、あくまで自分の状態を落ち着いて振り返ってみることです。
- 生活に支障は出ていないか
- 時間を自分でコントロールできているか
- ゲーム以外の活動も大切にできているか
こうした視点を持つだけでも、リスクはずいぶん下げられます。もし当てはまる項目が多く、生活のほうが崩れ始めていると感じたら、自己判断だけで抱え込まず、精神保健福祉センターや専門医療機関といった相談先を頼ってみてください。
ゲームは本来、楽しむためのものです。無理に我慢する必要はありませんが、いつの間にか生活の中心になっていないか、たまに立ち止まって眺めてみる。それだけでも、ゲームとの距離感はずいぶん整えやすくなると思います。