マスクで免疫は下がるって本当?誤情報に惑わされないための正しい知識

顔を覆うバブル形状のフェイスシールド

コロナ禍以降、日常的にマスクをつける生活が当たり前になりました。外出するときはもちろん、仕事中や電車の中でも、マスクは多くの人にとって「マナー」のような存在です。

一方で、こんな声もよく聞きます。 「ずっとマスクをしてると、免疫力が下がるんじゃないの?」「マスク生活で体が病原体に慣れなくなるって聞いた」……

一見もっともらしく感じるこのような意見、果たして本当なのでしょうか?

この記事では、「マスクが免疫を下げる」という説について、世界保健機関(WHO)やアメリカ疾病予防管理センター(CDC)、日本の厚生労働省など公的機関の情報、さらに最新の医学論文をもとに、正確で信頼できる事実をわかりやすく解説します。

また、マスク着用のメリット・デメリットや、誤解が生まれる背景、生活に役立つ対策方法も紹介します。憶測ではなく根拠のある情報を知ることで、安心してマスクとの付き合い方を見直せるはずです。

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マスクで免疫が下がる?公的機関と科学の見解

どの公的機関も「マスク着用が健康に悪影響を与える科学的証拠はない」とする一方で、「免疫力への悪影響がある」とする積極的な証拠も見つかっていないため「悪影響はない」という立場に近いようです。

つまり「正しい着用方法を守ること」が前提であり、極端な使い方がリスクを生むことは否定はされていません。

WHOの公式見解:マスクは健康に悪影響を及ぼさない

世界保健機関(WHO)は、マスクの長時間着用による健康リスクに関して、以下のように述べています。

“The prolonged use of medical masks when properly worn, does not cause CO₂ intoxication nor oxygen deficiency.”
(適切に着用されていれば、医療用マスクの長時間使用が二酸化炭素中毒や酸素欠乏を引き起こすことはありません)

LINK:Coronavirus disease (COVID-19) advice for the public: Mythbusters

この記述は、マスクによって呼吸機能に重大な悪影響が出るとする一部の誤解を明確に否定しています。

なお、免疫力への影響についてWHOは直接的な言及をしていませんが、マスクの着用が健康リスクを高めるとはしておらず、科学的にもそのような因果関係は確認されていません。マスクによって呼吸が浅くなり、酸素不足になることで免疫が下がるといった主張は、現在の医学的知見では根拠が乏しいと考えられます。

CDCの公式立場:マスクが免疫を弱める科学的証拠は確認されていない

米国疾病予防管理センター(CDC)は、マスク着用によって健康に悪影響が出るという懸念に対し、「マスクがCO₂中毒や酸素不足を引き起こすという証拠はない」と否定的な立場を示しています。

また、CDCが公表している複数の研究により、マスク着用はウイルス感染予防に効果があるとされており、マスクによって免疫力が下がることを示す科学的根拠は現在のところ報告されていません

“Wearing a mask does not raise the carbon dioxide (CO₂) level in the air you breathe. Cloth masks and surgical masks do not provide an airtight fit across the face.”
(マスクを着用しても呼吸する空気中のCO₂濃度が上がることはありません。布製マスクやサージカルマスクは顔に密閉される構造ではありません)

このように、「マスクによって二酸化炭素が体内にこもる」といった主張は、CDCの見解によって明確に否定されています。さらに、マスク着用により免疫システムが弱まるという主張を裏付けるような医学的証拠も現時点では確認されていません。

厚生労働省もマスク着用の判断に柔軟な姿勢

日本の厚生労働省は、マスク着用の基本的な考え方として、一律の着用を求めるのではなく、状況に応じた着脱を推奨しています。

公式ウェブサイトでは、屋外で人と十分な距離(2メートル以上)が確保できる場合や、会話をほとんど行わない場面ではマスクを外して問題ないこと、また熱中症のリスクが高まる環境ではマスクを外すことが望ましいといったガイドラインが示されています。

このように、健康被害を懸念する声に対しては「着用の柔軟な判断」が重要であるというスタンスを取っており、現時点でマスク着用が健康に直接悪影響を与えるという科学的根拠は示されていません

LINK:厚生労働省:マスク着用の考え方

なぜ「免疫が下がる」と言われるのか?

誤解1:病原体への接触が減ると免疫が弱くなる?

これはいわゆる「衛生仮説」に基づく誤解です。子どもが清潔すぎる環境で育つとアレルギー体質になりやすいという説で、免疫のバランスに関する理論です。しかし、この考え方は幼少期の免疫形成に関するものであり、マスクをする大人に当てはまる話ではありません。また、日常生活には食事や接触を通じて多くの常在菌が存在しており、「完全に無菌」にはなりません。

誤解2:マスクで自分の呼気を吸うと免疫が落ちる?

「自分の二酸化炭素を吸い続けると体に悪い」といった主張もありますが、医療従事者が1日中マスクをしていても、免疫に異常をきたすことはありません。BMJ(英国医師会誌)などの論文でも、マスク着用が免疫指標に影響を与えないことが明らかにされています。

マスクのデメリットはある?正しく理解しよう

一方でマスクをつけることによる弊害もないというわけではありません。

健康面での影響(物理的)

  • 肌荒れ・ニキビ:マスク内部の湿気や摩擦によって肌トラブルが増加
  • 耳の痛み:ゴム紐による長時間の圧迫
  • 息苦しさ:運動時や猛暑日は不快に感じる場合あり

心理・社会面でのデメリット

  • 表情が見えにくくなる:非言語コミュニケーションの低下
  • 子どもの言語発達への懸念:口の動きを見られないことで学習に影響が出る可能性(主に未就学児)
  • 社会的プレッシャー:「外せない空気」によるストレスや息苦しさ

これらの弊害は「通気性や肌に優しい素材のマスクを選ぶ」「人と距離が取れる屋外ではマスクを外す」「表情が必要な場面では透明マスクやフェイスシールドを使う」といった対応で、ある程度解消できる問題だと思います。

マスクは免疫を守る側面もある

感染症による炎症は免疫を「酷使」させます。マスクによって感染症を予防できれば、むしろ免疫力を守ることにもつながります。

例えば、インフルエンザ、風邪、COVID-19などを未然に防ぐことで、免疫システムの過剰な反応を防ぎ、体の回復力や恒常性を維持できます。これは特に高齢者や持病のある方にとって非常に重要です。

まとめ:科学に基づいたマスクとの付き合い方を

「マスクで免疫が下がる」という説は、今のところ科学的根拠が存在しません。

WHOやCDC、日本の厚労省など、信頼できる機関はいずれもマスクが免疫に悪影響を及ぼすとは述べていません。一方で、マスクの長時間使用による不快感や肌トラブル、社会的プレッシャーなど、現実的なデメリットは確かに存在します。

マスクは今後も感染症予防の強力な武器として、重要な役割を果たすと思われます。重要なのは、正しい情報に基づいて、自分と周囲にとって快適で安全な選択をすることです。

情報が氾濫する現代だからこそ「何を根拠にしているか」をきちんと調べて判断するようにしましょう。