朝起きたら一面の銀世界。きれいだなと思う間もなく、「今日、車で出かけて大丈夫かな…」と不安になった経験はありませんか。私はスノーボードが趣味で、毎シーズン何度も雪山へ車を走らせます。記録的な大雪の日に石打丸山から帰る関越道が全線通行止めになり、湯沢から千葉まで20時間かけて帰ってきたこともありました。あのときは本当に肝を冷やしました…。
そうやって何度も雪道を走るうちに痛感したのは、雪道の事故はほとんどが「ちょっとした油断」から起きるということです。逆に言えば、基本さえ押さえておけば、リスクはぐっと減らせます。普段は問題なく運転できる人でも、雪が積もった瞬間に路面はまったくの別物になります。いつもの感覚のまま走ってしまうことが、スリップやスタックの一番の原因です。
この記事では、雪道・凍結路を安全に走るための運転のコツと、出かける前に整えておきたい冬の備えを、初心者の方にもわかるように基本からまとめます。
都内で何台ものスタック車や事故車を見るたびに、首都圏の雪への意識の低さを感じます。一方、雪国の新潟や群馬では、大雪でもトラブルを起こしている車をほとんど見かけません。その差は、特別な運転技術ではなく、正しい知識と事前の準備があるかどうかだと私は思っています。
難しい話はひとつもありません。装備の整え方から、発進・ブレーキ・カーブの操作、凍結しやすい場所の見極め、万が一立ち往生したときの対応まで、順番に確認していきましょう。読み終えるころには、雪の日に車を出すかどうかを自分で判断できるようになっているはずです。
大前提:雪の日はできるだけ運転しない
身も蓋もない話ですが、もっとも確実な雪道対策は「運転しないこと」です。
4WDだから大丈夫、スタッドレスを履いているから平気、という油断が一番危ない。四輪駆動でも滑るときは滑りますし、止まる性能が大きく上がるわけでもありません。自分の家の周りが平気でも、走る先がどんな路面かはわかりませんし、自分が慎重でも他車に巻き込まれる危険があります。
JAFも、雪道ではスピードを普段より抑え、不要不急の外出は控えるよう呼びかけています。ベテランほど「自分は大丈夫」と過信しがちですが、雪の日は予定をずらせないか、公共交通機関に切り替えられないかをまず考えるのが賢明です。
出かける前の準備:タイヤと装備を整える
どうしても運転が必要なときは、車を「冬仕様」にしてから出かけます。ここで手を抜くと、いくら運転がうまくても太刀打ちできません。
スタッドレスタイヤかタイヤチェーンを必ず装着する
少しの雪でもノーマルタイヤで走るのは、それだけで大きな危険です。JAFも「雪道をノーマルタイヤで走行することは極めて危険」とし、スタッドレスタイヤやチェーンの装着を求めています。
最近のスタッドレスは性能が高く、扱いやすさも含めて第一候補になります。チェーンは乾いた舗装路では走りにくい一方、深い雪やアイスバーンで威力を発揮し、大雪時にチェーン規制がかかる区間では必須になります。両方を状況で使い分けられるのが理想です。
チェーンを使うときの基本として、チェーンは「駆動輪」に装着します。前輪駆動(FF)なら前、後輪駆動(FR)なら後ろのタイヤです。装着方法はチェーンごとに異なるので、出発前に一度練習しておくと、いざ雪の路肩で慌てずに済みます。
駆動方式の特性も知っておく
雪道での走りやすさは、一般に4WD>FF>FRの順とされています。4WDは四輪が駆動するためスタックしにくく走行が安定しやすい、FFはエンジンのある前側に荷重がかかり前輪が駆動するため比較的安定しやすい、FRは駆動する後輪に荷重がかかりにくく空転しやすい、という傾向です。
ただしこれはあくまで傾向です。FFでも上り坂で前輪の荷重が抜けて空転することはありますし、繰り返しになりますが4WDも滑るときは滑ります。実際、私が大雪の日に見かけたスタック車の多くはFRでしたが、駆動方式に頼り切るのではなく、装備と運転でカバーするという意識が大切です。
あわせて、ウォッシャー液の凍結防止、燃料を多めに入れておく、解氷スプレーやスコップ、毛布などを積んでおくと、立ち往生したときに役立ちます。
雪道の運転で注意すべきこと
装備を整えたら、いよいよ運転です。基本は普段の安全運転と同じですが、雪道では「いつもの何倍も慎重に」がキーワードになります。
1.「急」のつく操作をしない
急発進・急加速・急ブレーキ・急ハンドルなど、「急」のつく操作は厳禁です。これは雪道運転で最も大事な原則で、JAFも国土交通省の資料も同じことを強調しています。
発進はアクセルをじんわり踏んでゆっくりと。カーブの手前では十分に減速し、曲がっている最中の急な操作を避けます。アクセルもブレーキもハンドルも、すべて「やさしく、ゆっくり」を意識するだけで、スリップのリスクは大きく下がります。
2.スピードを落として車間距離を多めにとる
凍結路ではタイヤと路面の摩擦が小さく、止まるまでの距離が驚くほど伸びます。だからこそ速度は普段よりしっかり落とし、車間距離はいつもの2倍以上を目安に多めにとります。
雪道では追突事故が頻発します。前の車が急に止まっても対応できるよう、「開け過ぎかな」と思うくらいで開けておくのがちょうどいい。自分が慎重でも、後ろや前の車がどう動くかはわかりません。車間は自分を守る保険だと考えましょう。
3.ブレーキはやさしく、エンジンブレーキを活用する
フットブレーキを強く踏むとタイヤがロックして滑りやすくなります。フットブレーキはゆっくりやさしく踏み、減速はエンジンブレーキを併用するのが基本です。
下り坂では特にエンジンブレーキが頼りになります。オートマ車ならシフトをセカンド(2)やローに落とす、マニュアル車ならギヤを1〜2速落とすことで、フットブレーキに頼りすぎずスピードをコントロールできます。エンジンブレーキで十分に速度を落としてから、フットブレーキをそっと使うと安全に止まれます。
なお、走行中にニュートラル(N)に入れるのは避けてください。エンジンブレーキが効かず、駆動力も失われ、緊急時に対応しづらくなります。カーブの手前では、直線のうちに減速とシフトダウンを終えておくのが原則です。
関連記事:車で下り坂を運転する時、エンブレとニュートラルのどっちが燃費いい?
4.凍結しやすい場所とブラックアイスバーンに注意
同じ道でも、特に滑りやすい「危険ポイント」があります。風が通り抜ける橋の上や陸橋、トンネルの出入口付近、そして日陰やビルの影は、路面が凍りやすい要注意ゾーンです。
こわいのがブラックアイスバーン。一見すると濡れたアスファルトのように黒く見えるのに、表面が薄く凍っている状態で、見た目では判別しにくく事故につながりやすい。「濡れているだけに見える路面」ほど、速度を落として慎重に通過しましょう。
5.わだちの使い方と過信の禁物
雪道では、前の車が通ってできた「わだち」に沿って走ると安定しやすくなります。ただしわだち部分がアイスバーン化して逆に滑ることもあるので、状態が悪ければあえて外して走る判断も必要です。
そしてもう一つ。ABSも4WDも、あくまで運転を助ける装置であって、滑らない・止まれるを保証するものではありません。装備を過信せず、最後は自分の慎重な操作で安全をつくるという姿勢を忘れないでください。
もし立ち往生してしまったら
大雪では、渋滞や事故で車が長時間動けなくなる「立ち往生」が起こることがあります。このとき特に気をつけたいのが一酸化炭素中毒です。
マフラー(排気口)が雪でふさがれた状態でエンジンをかけ続けると、排気ガスが車内に逆流して命に関わります。JAFも、暖をとるためにエンジンをかけるなら、こまめに車の周り、特に排気口まわりの雪を取り除くよう注意を促しています。
毛布や防寒具で暖をとり、なるべくエンジンを切って過ごすのが安全です。どうしても寒いときも、定期的に外へ出てマフラー付近を除雪してから使うようにしましょう。万一に備えて、毛布・スコップ・飲み物・モバイルバッテリーなどを冬は積んでおくと安心です。
雪道を安全に運転する方法のまとめ
あらためて、いちばん大事なことを繰り返します。雪の日はできる限り運転しない。これが最強の安全対策です。
私は雪のある地域で暮らしたこともあり、雪山を走る機会も多いので、その怖さを身をもって知っています。スタックや追突はもちろん、崖から転落している車を見たこともあります。自分は大丈夫でも、雪道では周りに巻き込まれる危険が一気に高まります。
それでも運転が必要なときは、まずスタッドレスタイヤやチェーンで車を冬仕様にすること。そのうえで「急」のつく操作をやめ、速度を落として車間を多めにとる。下り坂はエンジンブレーキを使い、橋の上やトンネルの出口、日陰の凍結に気をつける。万が一立ち往生したら、マフラー周りの除雪を忘れずに行い、一酸化炭素中毒を防ぐ。どれも特別な技術はいらず、知っているかどうかだけの差です。
もうひとつ大切なのは、装備を過信しないこと。4WDもスタッドレスもABSも、あくまで運転を助けてくれる存在で、「滑らない」「必ず止まれる」を約束してくれるわけではありません。最後に安全をつくるのは、一つひとつの操作をていねいに、慎重に行う自分自身です。
逆に言えば、装備と心構えさえ整えれば、雪道は必要以上に怖がる相手ではありません。私自身、最初は雪道が苦手でしたが、基本を守って走るうちに少しずつ落ち着いて運転できるようになりました。この冬は無理をせず、安全第一で出かけてください!