分厚いマニュアルや契約書のPDFを開いた瞬間、目当ての章までスクロールでひたすら探した経験はないでしょうか。せっかくしおり(ブックマーク)が付いているのに、PDFを開くたびに左端のアイコンをクリックしてパネルを呼び出す。私も数百ページの仕様書を毎日めくっていた時期、この一手間が地味にストレスでした。
「最初からしおりを出しておいてくれれば、すぐ目次から飛べるのに」。そう思ったことのある人は多いはずです。実際、PDFを配った相手から「どこを見ればいいか分からない」と聞き返されると、こちらも案内し直す手間がかかります。
じつはこれ、PDF側に「開いたら最初からしおりパネルを出しておいて」と覚えさせる設定があります。一度やっておけば、そのファイルは次からずっと自動でしおり付きで開きます。自分のPCだけでなく、配布先の相手の画面でも同じように表示されるのがミソです。
この記事では、Adobe Acrobat(有料版)の「文書のプロパティ」からPDFのしおりを常に表示させる設定方法を、最新のAcrobat画面に沿って手順で解説します。あわせて、しおり自体の作り方と階層の付け方、Acrobat ReaderとAcrobatでできることの違い、他のPDFソフトで開いたときの見え方まで、実際に手を動かしてきた立場でまとめました。
「毎回パネルを開くのが面倒」「資料を渡した相手にも見やすく届けたい」という方は、まずこの設定だけ覚えて帰ってもらえれば十分元が取れます。読み終わるころには、よく使うPDFを2〜3分で『しおり常時表示』に変えられるようになっています。
AcrobatでPDFのしおりを常に表示させる設定手順
やることはシンプルで、PDF一つひとつに「開き方」の初期状態を記録させるだけです。設定はPDFファイル本体に埋め込まれるので、どのPCでそのPDFを開いても同じ見え方になります。
カギになるのは「文書のプロパティ」の中にある「開き方」タブです。ここの「表示」を切り替えるだけで、開いた瞬間にしおりパネルが出る状態に固定できます。
「開き方」タブでしおりパネルを固定する手順
Adobe公式ヘルプの案内に沿うと、手順は次のとおりです。
- Acrobatで対象のPDFファイルを開きます。
- Windowsはウィンドウ左上の「メニュー」(ハンバーガーメニュー)から、Macは画面上部の「ファイル」から「文書のプロパティ」を選びます。
- 文書プロパティの「開き方」タブを開きます。
- 「表示」のプルダウンで「しおりパネルとページ」を選びます。
- 「OK」を押してダイアログを閉じ、Ctrl+S(Macは⌘+S)でPDFを上書き保存します。
これで完了です。次回そのPDFを開くと、最初からしおりパネルが開いた状態で表示されます。クリック一つ分の手間とはいえ、毎日何度も開くファイルなら効果はばかになりません。
同じ「開き方」タブでは、ページレイアウト(単一ページ・見開きなど)や開いたときの表示倍率、最初に開くページ番号もまとめて指定できます。プレゼン資料や手順書なら「100%・1ページ目・しおりパネルとページ」あたりで揃えておくと、相手の環境でも狙った見え方で開いてもらえます。表紙から見せたい資料か、目次から入ってほしい資料かで使い分けると、ぐっと親切になります。
出典:PDF の開き方設定について(Acrobat)|Adobe
うまく反映されないときの確認ポイント
設定したのに次回も普通に開いてしまう、というときはたいてい保存忘れです。「OK」を押しただけでは設定はファイルに焼き付かず、必ず上書き保存(Ctrl+S)するまで反映されません。別名保存でも構いませんが、その場合は保存した方のファイルを配布・利用してください。
また、後述のとおり無料のAcrobat Readerでは「開き方」の編集自体ができません。プルダウンが触れない・グレーアウトしている場合は、使っているのがReaderでないか確認してみてください。クラウド上のPDFを直接いじっている場合も、いったんローカルに保存してから設定するほうが確実です。
関連記事:PDFをコピペできない・文字化けする時の対処法|文字重複や空白の解決方法
そもそも「しおり」の作り方と階層の付け方
表示設定の前に、そもそもしおりが入っていないと意味がありません。ここではしおり自体の作り方と、章・節のように整理する階層化を押さえておきます。
しおりは、PDFの好きな場所へジャンプできる目次のようなリンクで、Acrobatのしおりパネルから自由に追加できます。ナビゲーションパネルの一覧に並ぶテキストをクリックすると、それぞれ対応するページや表示位置へ一発で移動できる仕組みです。
新しいしおりを作る
基本の流れはこうです。ナビゲーションパネルでしおりパネルを開き、しおりを飛ばしたいページ・表示位置を画面に出した状態で「新規しおり」を作成します。見出しのテキストをドラッグして選択してから作ると、その文字列がそのまましおりの名前になるので入力の手間が省けます。名前は後からパネル上で書き換えられます。
長い資料なら、章タイトルや見出しの位置を順番に登録していくだけで、立派な目次代わりになります。元のWordやPowerPointから見出し付きでPDF化した場合は、しおりが自動で付いていることも多いので、まずはしおりパネルをのぞいて中身を確認してみるとよいでしょう。
しおりを階層(入れ子)にする
章の下に節、節の下に項目――という構造は、しおりを入れ子にすると一気に見やすくなります。子にしたいしおりのアイコンを、親にしたいしおりの下へドラッグするだけで親子関係(階層)を作れます。階層にしておくと、親しおりの三角マークで開閉でき、長い目次もスッキリたためます。
先ほどの「開き方」設定で保存しておけば、この展開・折りたたみの状態も含めて次回に引き継がれます。全部開いた状態で保存すれば次も全開、たたんで保存すればたたんだ状態で開く、という具合です。読み手にいきなり全項目を見せたいのか、大見出しだけ見せてから掘ってもらいたいのかで、保存時の開閉を整えておくと完成度が上がります。
Acrobat ReaderとAcrobat(有料版)の違いと他ソフトでの見え方
ここでつまずく人が多いのですが、しおり周りはお使いのソフトで「できること」がはっきり分かれます。
しおりの作成・編集や「開き方」の設定変更は、有料のAdobe Acrobatでのみ可能で、無料のAcrobat Readerではできません。Readerは閲覧用と割り切られていて、PDFのプロパティを書き換える機能を持っていないためです。
- Acrobat(有料版):しおりの追加・削除・並べ替え・階層化、「開き方」タブでの表示設定の保存まで一通りできます。
- Acrobat Reader(無料版):すでに入っているしおりの表示・クリックでのジャンプは可能。ただししおりの追加・編集や「開き方」設定の変更はできません。
うれしいのは、Acrobat(有料版)で「しおりパネルとページ」を保存したPDFは、相手がReaderで開いてもその設定が反映され、最初からしおりが表示される点です。設定する側さえ有料版なら、受け取る相手は無料のReaderのままで恩恵を受けられます。資料を配る側にとっては地味に効く配慮です。
一方、設定がされていないPDFをReaderで見る場合は、左側のしおりアイコンを毎回手動でクリックしてパネルを開くことになります。「相手の画面でも最初からしおりを出したい」なら、配布前にこちらで開き方を固定しておくのが確実です。たった一回の設定で、受け取った全員の手間を消せると考えると安いものです。
なお、Acrobat以外のPDFソフト(ブラウザのPDF表示や各種無料ビューアー)では、この「開き方」設定をどこまで尊重するかはソフト次第です。多くのビューアーはしおり(アウトライン)の表示自体には対応していますが、開いた瞬間に自動でパネルを開くかどうかは挙動が分かれます。確実に揃えたいときは、配布先にもAcrobat ReaderでのPDF閲覧をおすすめしておくと安心です。
出典:PDF の開き方設定について(Acrobat)|Adobe
関連記事:AcrobatでPDFのテキストを簡単に編集!基本手順と便利な操作方法
PDFのしおりが表示されない時の確認ポイント
ここまでの「開き方」設定の前段階として、しおりパネルそのものが出てこない・開いても空っぽ、というつまずきも多いです。私がしおりの出ないPDFに出会ったときに確認するのは、次の3点です。
- そもそもしおりが埋め込まれていないPDF:しおりパネルを開いても一覧に何も並ばないなら、そのPDF自体にしおりが入っていません。しおりはPDF作成時に元文書の目次などから自動生成されるのが基本で、そうした構造のない文書やPDF化の設定によっては、しおりなしのPDFになります。表示設定をいくら触っても出てこないので、この場合は前述の手順どおりAcrobat(有料版)でしおりを作成してください。
- しおりパネルが閉じているだけ:現行の新しいAcrobatでは、しおりアイコンは画面右側のナビゲーションバーに置かれています。従来のUIでは左端にあったので、画面が新しくなって「しおりが消えた」と感じたらまず右側を見てください。右側のパネルにしおりアイコンが見当たらない場合は、右パネルの上で右クリックすると表示するパネルを選び直せます。メニューの「表示」→「表示切り替え」→「サイドパネル」からも呼び出せます(バージョンにより名称や経路が異なる場合があります)。
- ブラウザ内蔵のビューアーで開いている:ChromeやEdgeでリンクをクリックしたときは、Acrobatではなくブラウザ内蔵のPDFビューアーで開かれるのが普通です。前述のとおり、Acrobat以外のビューアーでは「開き方」設定やしおりの扱いがソフトごとに分かれます。しおりが見当たらないときは、PDFをいったんダウンロードして、AcrobatかAcrobat Readerで開き直すのが確実です。
3点を順に確認しても表示されない場合は、この記事の最初に戻って「開き方」タブの設定と上書き保存ができているかを見直してみてください。しおりを表示させる仕組みは「PDFにしおりが入っている」「パネルを開ける状態にある」「しおり対応のソフトで開く」の3つがそろって初めて機能します。
まとめ
PDFのしおりを常に表示させる設定は、「文書のプロパティ」→「開き方」タブ→「表示」を「しおりパネルとページ」にして保存するだけ。たったこれだけで、そのPDFは次から自動でしおり付きで開くようになります。
ポイントは、設定がPDFファイル本体に埋め込まれること。だから自分のPCはもちろん、配布した相手が無料のAcrobat Readerで開いても、ちゃんとしおりパネルが立ち上がります。受け取る人が迷わず目的のページへ飛べるので、マニュアルや提案書を渡すときの満足度がぐっと上がります。閲覧者に「ここを見て」と毎回案内する手間も減るので、結局は自分の時間も節約できます。
しおり自体の作成や階層化はAcrobat(有料版)の役目で、Readerは表示・利用が中心という役割分担も押さえておくと、いざというとき迷いません。階層を入れ子で整理し、展開状態も込みで保存しておけば、何百ページのPDFでも目次感覚でサクサク移動できます。設定でつまずいたら、まず「上書き保存したか」「Readerで開いていないか」の2点を見直すのが近道です。
私自身、開き方をひと手間固定しておくだけで「あのページどこだっけ」のストレスがほぼ消えました。日常的に分厚いPDFを扱うなら、まず手元のよく使う一冊で「しおりパネルとページ」を設定してみてください。一度この快適さを味わうと、もう設定なしのPDFには戻れなくなりますよ。