Firefoxのツールバーやタブの見た目が好みに合わず、ボタンの位置を動かしたい、もっとコンパクトにしたい——そう感じている方は少なくないと思います。かつて私もそうでした。Firefox 29で導入された「Australis」デザインに馴染めず、当時は「Classic Theme Restorer」というアドオンで旧UI風に作り変えていたものです。
ただ、結論から先にお伝えすると、この「Classic Theme Restorer」はFirefox 57(Quantum)以降では動かなくなり、開発も終了しています。今このアドオンを探してたどり着いた方のために、本記事では「なぜ使えなくなったのか」を整理したうえで、2026年現在のFirefoxで見た目やツールバーを自分好みに変える、実際に使える方法へ置き換えてご紹介します。
Web制作の仕事柄、ブラウザは1日に何時間も触る道具です。だからこそ、ほんの少しの操作感のズレが地味にストレスになる。その気持ちはよく分かるので、今のFirefoxでどこまで詰められるかを実際に試した内容でまとめました。
「Classic Theme Restorer」はなぜ使えなくなったのか
「Classic Theme Restorer」(以下CTR)は、Firefox 29で大きく変わったAustralis UIを以前のスタイルに戻すための定番アドオンでした。ボタンの位置を自由に動かしたり、タブの形をスクエアに戻したり、消えたアドオンバーを復活させたりと、見た目まわりを丸ごと作り変えられるのが魅力でした。
ところが、2017年11月にリリースされたFirefox 57(通称Quantum)で、こうした旧来型のアドオンを支えていた仕組み(XUL/XPCOMベースのレガシーアドオン)が完全に廃止されました。CTRはこの仕組みに深く依存していたため、Firefox 57以降では動かなくなります。
開発者のArisさん自身も、リポジトリで「Classic Theme RestorerがサポートするのはFirefox・Waterfox・Basiliskの45.x〜56.xのみ(Fx 57以降には非対応)」と明記しています。さらに公式アドオンサイト(AMO)でも2018年10月にレガシーアドオンが一斉に無効化され、現在はインストール自体ができません。プロジェクトのリポジトリも2021年にアーカイブされ、Firefox向けとしては完全に役目を終えています。
正直なところ、当時は「ユーザーの自由を奪うのか」と憤った私ですが、今振り返ると、レガシーアドオンの廃止はセキュリティと動作の安定性を大きく底上げした転換点でもありました。失ったものはありつつ、得たものも小さくなかった——というのが今の率直な感想です。
参考:Aris-t2/ClassicThemeRestorer(GitHub・開発者公式) / The death of Classic Theme Restorer for Firefox(gHacks)
当時のアドオン文化がQuantum後にどうなったかは、こちらの記事でもう少し詳しく書いています。
まずは標準機能でツールバーをカスタマイズする
CTRがなくても、実は今のFirefoxは標準機能だけでかなり自由にツールバーをいじれます。アドオンを入れる前に、まずはこの公式の「ツールバーをカスタマイズ」機能を試すのが遠回りに見えて一番確実です。
右上のメニューボタン(三本線)から「その他のツール」→「ツールバーをカスタマイズ」を開くと、ボタンをドラッグ&ドロップで自由に並べ替えられる編集モードに入ります。ここでできることは主に次のとおりです。
- 各ボタン(ホーム、ブックマーク、履歴など)をツールバー上の好きな位置へ移動する
- 使わないボタンをツールバーから外す/よく使う機能を追加する
- 画面下部の「ツールバーを追加」でブックマークツールバーの表示を切り替える
- 同じく画面下部の「設定密度」で、UI全体の余白の広さを選ぶ
かつてCTRで動かしていた「ブックマークボタンの位置」や「戻る/進むの並び」といったレイアウトの悩みは、この標準機能でほとんど解決できます。まずはここを触ってみて、足りない部分だけ次の方法で補う、という順番がおすすめです。
参考:Firefox advanced customization and configuration options(Mozilla Support)
「コンパクトモード」で表示をぎゅっと詰める
「タブやツールバーの余白が広すぎて、画面を縦に広く使いたい」——これもCTR利用者に多かった悩みです。今のFirefoxには、UI全体の高さを詰める「コンパクトモード(Compact)」が用意されています。
ただし、Firefox 89以降では「ツールバーをカスタマイズ」の設定密度メニューから「コンパクト」が標準で隠されています。表示させるには、いったんabout:configで有効化する必要があります。
手順は次のとおりです。アドレスバーにabout:configと入力して開き、警告が出たら続行を選びます。検索欄にbrowser.compactmode.showと入力し、値をtrueに切り替えます。
browser.compactmode.show → true
これで先ほどの「ツールバーをカスタマイズ」→「設定密度」に「コンパクト(サポート対象外)」が現れるので、それを選べばUIが一段詰まります。about:configに抵抗がなければ、browser.uidensityの値を1に直接設定しても同じ結果になります。
名前のとおり「サポート対象外」の扱いなので、将来のアップデートで仕様が変わる可能性はあります。とはいえ私の環境では長く問題なく使えていて、縦の表示領域を稼ぎたい人にはかなり効きます。
参考:Compact mode workaround in Firefox(Mozilla Support)
さらに踏み込むなら userChrome.css
標準機能やコンパクトモードでも届かない、細かな見た目の調整をしたい——そんなときの最終手段がuserChrome.cssです。これはFirefoxのUIにCSSを直接当てて見た目を書き換える方法で、かつてCTRが担っていた「自由なカスタマイズ」に最も近い存在といえます。
有効化の手順はこうです。まずabout:configでtoolkit.legacyUserProfileCustomizations.stylesheetsをtrueに設定します。次にabout:supportを開き、「プロファイルフォルダー」の「フォルダーを開く」をクリックします。そのフォルダーの中にchromeという名前のフォルダーを作り、さらにその中にuserChrome.cssというファイルを作成します。Firefoxを再起動すれば、書いたCSSが読み込まれます。
たとえばタブバーを一番上に持ってきたい、特定のボタンを隠したい、といった調整は次のように記述します(実際に当てる際は対象に合わせてセレクタの確認が必要です)。
/* userChrome.css の例:メニューバーを常に表示しない、など */
#PersonalToolbar {
/* ブックマークツールバーの余白を詰める例 */
--uc-bookmark-spacing: 4px;
}
ただし注意点が2つあります。1つは、CSSはあくまで「すでにあるUI要素」の見た目を変えるだけで、新しいボタンやツールバーをゼロから作り出すことはできないこと。CTRのように機能そのものを足すことはできません。もう1つは、MozillaがuserChrome.cssを公式にはサポートしていない点です。アップデートで急に効かなくなることもあるので、開発者向けの上級テクニックと割り切って使うのが安全です。
ゼロから書くのは大変なので、有志がまとめたコード集を出発点にするのが現実的です。Arisさん(CTRの開発者本人)が後継的に公開しているCustomCSSforFxなどは、CTRで実現していたカスタマイズの多くをCSSで再現する内容になっていて、当時の使い心地を取り戻したい人の参考になります。
参考:Contributors guide on Firefox advanced customization with CSS(Mozilla) / Aris-t2/CustomCSSforFx(GitHub)
テーマや拡張機能で手軽に雰囲気を変える
「CSSを書くほどではないけれど、色味や全体の雰囲気は変えたい」という場合は、公式アドオンサイトのテーマが手軽です。配色を変えるだけでも操作の印象はかなり変わります。現行のWebExtensions対応のテーマなら、Quantum以降のFirefoxでも安心して使えます。
機能面で物足りなさを感じるなら、今も現役で使える拡張機能を組み合わせるのが王道です。今のFirefoxで実際に使える定番アドオンは、別記事で改めて厳選しています。
まとめ:今のFirefoxは標準機能から段階的に攻める
「Classic Theme Restorer」はFirefox 57で動かなくなり、開発も終わったアドオンです。今から探してもインストールはできないので、別の手段に切り替えるのが正解です。
今のFirefoxで見た目やツールバーを自分好みにするなら、私のおすすめは次の順番で攻めることです。
- 「ツールバーをカスタマイズ」でボタン配置とブックマークツールバーを調整(まずここ)
- 表示を詰めたいなら
about:configのbrowser.compactmode.showでコンパクトモードを有効化 - 細部までこだわるなら
userChrome.css(公式非サポート・上級者向け) - 雰囲気だけ変えたいならテーマ、機能を足すなら現行の拡張機能
いきなりCSSに手を出さず、標準機能で済むところから段階的に攻めるのがコツです。一番のおすすめは、まず「ツールバーをカスタマイズ」とコンパクトモードを試すこと。これだけで、かつてCTRに求めていた快適さの大部分は取り戻せるはずです。なおabout:configやuserChrome.cssはあくまで自己責任の領域なので、変更前の状態をメモしてから触ると安心です。