※これは東京五輪の開催前、2021年5月に書いた記事です。この後、東京2020オリンピックは2021年7月23日から8月8日にかけて開催され、多くの会場が無観客となりました。以下は開催前の時点での私の受け止めを、当時の記録としてほぼそのまま残しています。
新型コロナウイルス感染拡大を受けた緊急事態宣言下でも東京五輪は開催できるとの趣旨を述べた国際オリンピック委員会(IOC)幹部の発言が、波紋を広げています。
国内では慎重・否定的な意見が多い東京2020オリンピックの開催をめぐって、この発言はさらに議論を呼びそうです。あなたは東京オリンピックは開催すべきだと思いますか。
東京オリンピックは開催すべきなのか
全国の世論調査は
世論調査では「中止すべき」という意見が最多で、「再延期」と合わせると6割を超えています。
毎日新聞と社会調査研究センターは22日、全国世論調査を実施した。
東京オリンピック・パラリンピックについては、「中止すべきだ」が40%で最も多く、前回(29%)から11ポイント増加した。「再び延期すべきだ」は23%(前回19%)で、「中止」と「再延期」を合わせて6割を超えた。海外からの観客を入れずに開催する現在の方針について、「妥当だ」は20%(同34%)で、「国内の観客も入れずに無観客で開催すべきだ」は13%(同14%)、「わからない」は3%(同4%)だった。
慎重な意見が多くを占めるのは自然なことだと感じます。海外から人を招いて大会を開く以上、感染状況をめぐる不安が拭えないうちは前向きに受け止めにくい、というのが多くの人の実感なのでしょう。私自身もチケットを購入してオリンピックを楽しみにしていた一人ですが、少なくとも今の状況では、安心して開催できるとは言いきれないと感じています。
そんな中での、IOC幹部の発言でした。
緊急事態宣言下でも五輪開催との発言
国際オリンピック委員会のジョン・コーツ調整委員長は、次のように発言したと報じられています。
国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長は21日、たとえ東京で新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が発令されていても、7月23日に始まる予定の東京オリンピックは実施すると発言した。日本では現在、東京をふくめ9都道府県で緊急事態宣言が出ており、23日からは沖縄にも適用される。
LINK:IOC、緊急事態宣言下でも東京五輪は開催
さらに24日には、アメリカ国務省が日本に関する渡航情報を4段階で最も厳しい「渡航中止の勧告」に引き上げたと報じられました。選手団の派遣には影響しないとの説明もありましたが、国内がそうした状況にある中で開催することへの戸惑いは、正直なところ拭えません。
仮に緊急事態宣言下でオリンピックを開催すれば、政府への不満はさらに高まるのではないか、と私は感じています。
この時期の政府のコロナ対応には、一貫性が見えにくいと感じる場面が少なくありませんでした。密を避けるよう、外出を控えるよう呼びかける一方で、多くの人が毎日混み合った電車で通勤している。電車の本数を減らせば、かえって車内は密になる。テレワークも要請にとどまり、後押しする具体策までは踏み込めていない。全体として、多くを国民へのお願いに頼りながら凌いでいるように見えた、というのが当時の私の印象です。
そんな中で宣言下でのオリンピック開催が決まれば、休業や時短を求められてきた飲食店や百貨店が要請に納得しづらくなるのも無理はない、と思います。政府もその難しさは承知しているはずで、今回のIOCの発言からは、日本側の立場や事情との間に温度差があるようにも感じられました。

コロナ禍でオリンピックを開催する方法を探ること自体は、悪いことではないと思います。むしろ真剣に模索されるべきでしょう。ただ、開催するのであれば一貫した説明で、多くの人の理解を得ていく手順が欠かせないはずです。オリンピックは誰のための大会なのか、何のための大会なのか。そこを見つめ直したうえで結論が出されることを願います。
菅首相は「夏の東京オリンピック・パラリンピックは、人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として…」と語っていました。ただ、この状況で開催したからといって、それがそのまま「打ち勝った証」になるとは、私にはどうしても思えません。無理に前へ進むよりも、いったん立ち止まって態勢を整えてから臨む道もあったのではないか。そんな思いが、今も残っています。