2019年7月30日、アイルランドの調査会社Research And Marketから2024年のIoT市場予測レポート「IoT Connectivity Market by Component, Organisation Size, Application Areas, Region – Global Forecast to 2024」が発表され、世界から注目を集めています。
このレポートの中では今後IoT市場は2019年の380億ドル(約3,990億円)から2024年には890億ドル(約9,345億円)となる予測で、わずか5年の間で2倍以上も市場拡大が見込まれていることになります。
この急激な変化の背景にはインターネット、サービスプラットフォーム、ワイヤレス通信、ビッグデータ活用の世界的な普及が挙げられます。
IoT「幻滅期」が意味する本当の意味とは?
日本において、IoTは他のテクノロジーのなかでどのような立ち位置にあるのでしょうか。
ガートナージャパン株式会社(以下、ガートナー)のハイプ・サイクルをご存知の方は多いかと思います。
2018年に公開された「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル」を見てみると、IoT(レポート内では「モノのインターネット」)は「適度な期待」のピーク期を超え、今後5-10年で最後の成熟段階である「生産性の安定期」に至ると予測されています。Research And Marketの調査と合わせて考えると、2024年以降も市場の成熟には期待ができそうです。
ハイプ・サイクル上で「適度な期待」を超えたということは、流行りで飛びついた企業が市場から姿を消していき、より本格的にIoTを取り入れようという実質的な市場浸透がはじまるということを意味します。
なかでも、サービスデザイン、デバイス開発、ユーザーエクスペリエンスの考慮に長期間をを要する「ヘルスケアIoT」分野では、近年実用的なIoT事例が増えており、まさに今後の市場浸透を支える活用であるといえるでしょう。
ヘルスケアIoT事例にみる未来の「進化」に期待!
負荷なく生活に取り入れたい作業、長期間のモニタリングが必要な作業とIoTの相性は抜群です。なかでも患者の服薬状況管理や血糖値測定など管理に手間がかかるが、事が起きてからでは処置が難しいケースにIoTによるシステムが活躍します。
近年ハードウェアや電子部品の小型化、省電力化はIoTヘルスケアを支えるテクノロジーのひとつであり、アナログ信号をデジタル信号に変えるA/Dコンバータなどはその好例です。このようなテクノロジーを搭載して、センサー付きのベッドによる患者の異常や徘徊を察知、スマートハウスによる高齢者見守り、さらには自宅で血糖値計測をして遠隔治療を進める例など画期的な活用例が増えています。
またHIROTSUバイオサイエンス(東京・港区)と日立製作所が「線虫」を使って尿のにおいからがん患者の早期発見をしたことが広く知られていますが、今後IT活用が難しいとされている「嗅覚」の分野でも、より実用的なIoT事例が生まれることが期待されてます。
現在は各企業が独立して開発を進めているヘルスケアIoTですが、サービス・デバイスが企業の枠組みを超えてつながり、相互にデータの共有と活用ができるようになれば、より一貫性のあるヘルスケアIoTが実現できるようになることでしょう。そうなれば、包括的なIoTによる健康管理マネジメントの価値がさらにあがります。
今後のIoT市場において、“Connected IoT / Service platform”が重要になるとResearch And Marketが述べている意味はこのような洞察が背景にあるのでしょう。
高齢化社会、そしてICT化という二つの局面を迎える日本社会。
私たちの健康サポートに向けたIoTの「真価」を問うデジタルイノベーションの「進化」には心から期待したいものですね。