改札のゲートが閉まって、後ろの人がすっと一歩下がる。慌ててウォレットを開いたら、さっきまで一番上にあったSuicaがチャージ残高ごと一覧から消えていて、残っているのはクレジットカードが1枚だけ、ということがあります。
私も機種変更をした翌朝にこれをやりました。motorola edge 50 proからNothing Phone (3)に替えたとき、Googleアカウントを整理したつもりが、おサイフケータイ側のアカウントまで切り替わっていたらしく、Suicaだけがどこにもいない。券売機の前で5分ほど粘って、結局その日は切符を買って出社しました。自分の操作が原因だと気づいたのは、帰りの電車の中でした…
このとき残高は消えていません。モバイルSuicaには「預け入れ(サーバ退避)」というしくみがあり、端末から離れたSuicaはJR東日本のサーバで預かられます。端末側で受け取り直せば、残高も定期券もそのまま戻ってきます。
この記事では、ウォレットやおサイフケータイからSuicaが消えたときに、残高を残したまま端末へ戻す手順と、受け取り直しでは戻らないケースの見分け方をまとめます。
端末が手元にあって操作できるなら、下の受け取り直しで戻る見込みがあります。端末が壊れた、あるいは無くしたなら、受け取り直しでは戻らず「再発行登録」という別の手続きになります。改札に入ったあとで消えたときだけは自力でいじらず、駅係員に声をかけてください。
まず試すのはAndroidの受け取り直し
Androidで開くのは、モバイルSuicaアプリではなく「おサイフケータイ」アプリです。ここを取り違えると新規発行の画面に入ってしまい、受け取りの入口にたどり着けません。
手順はこの5つです。
- ホーム画面かアプリ一覧から「おサイフケータイ」を開く
- 「マイサービス」の画面を表示する
- 「交通系ICカードの受け取り」をタップする
- カードの種類で「モバイルSuica」を選ぶ
- 戻したいSuicaを選び、「受け取る」をタップする
条件が1つあります。預け入れたときと同じGoogleアカウントでログインしていることです。アカウントを変えてしまったなら、先に元のアカウントへ戻してから受け取りに進みます。
スマートウォッチを併用している人には、もう1つ注意があります。Wear OS端末に設定できるSuicaは1枚だけなので、スマホと時計の両方に同じSuicaを入れておくことはできません。時計側で受け取ってしまうと、今度はスマホの改札が通らなくなります。
iPhoneはウォレットの「+」から戻す
iPhoneは手順がもっと短く、モバイルSuicaアプリを開く必要すらありません。
- 「ウォレット」アプリを開く
- 画面右上の「+」をタップする
- 「以前ご利用のカード」をタップする
- 戻したいSuicaが表示されたら「続ける」をタップする
- 認証のあと、「カードを追加」の画面で「次へ」をタップする
Apple Watchに入れていたSuicaは、ペアリングしているiPhoneから操作します。「Watch」アプリを開き、「ウォレットとApple Pay」から「カードを追加」、そこで「以前ご利用のカード」を選びます。
ここで引っかかるのはApple IDです。預け入れられたSuicaは、別のApple IDでサインインした端末には再設定できません。「以前ご利用のカード」を開いても何も出てこないときは、カードを探す前にサインインしているApple IDを疑ってください。
Suicaが消える引き金はOSで違う
同じSuicaでも、預け入れが起きる操作はOSごとに違います。片方で読んだ話をもう片方に当てはめると、原因を取り違えます。
Androidで預け入れが起きる4つの操作
JR東日本が挙げているのは次の4つです。
- 端末の初期化
- バックアップしたデータを端末へ復元した
- おサイフケータイアプリのGoogleアカウントを変更した
- Google Payアプリでアカウントを変更した(おサイフケータイ側のアカウントも同時に変わります)
私がやったのは3つ目です。アカウントの整理は決済とは別の話だと思い込んでいたのが敗因でした。
参考:意図せずAndroid端末からモバイルSuicaが消えたときの案内
iPhoneはパスコードをオフにしただけで消える
iPhone側の引き金は次のとおりです。
- ウォレットアプリでSuicaを削除した
- 端末の設定を「パスコードをオフにする」へ変更した
- 端末に別のApple IDでサインインした
- 端末の初期化、またはバックアップからの復元
目を引くのは2つ目でしょう。画面ロックのパスコードを外しただけで、ウォレットのSuicaはサーバへ預け入れられます。顔認証がうまくいかない日に、いったんパスコードを切って様子を見る。それだけで一覧から消えます。
Androidで画面ロックを外したら
ではAndroidでも画面ロックを外すとSuicaが消えるのかというと、Googleの案内にそうは書かれていません。Googleウォレットで求められているのは「支払うためにデバイスで画面ロックを設定し、本人確認を行うこと」で、使える認証はPIN・パターン・パスワード・クラス3の生体認証によるロック解除です。
画面ロックが無いとSuicaが消えるのではなく、そもそも支払いが通らない。症状の見え方は似ていても、手を動かす先がまったく違います。
一覧からカードごと消えているなら受け取り直し、カードはあるのに改札やレジで反応しないなら画面ロックと認証の設定。この順で切り分けると早いです。
交通機関の支払いだけは例外が用意されています。クレジットカードやデビットカードで交通機関の支払いをするときに限り、ロックしたままの端末で本人確認をオフにできます。それ以外の支払いでは、引き続き画面ロックによる本人確認が必要です。
戻ってきても元どおりにならないもの
受け取り直しは万能ではありません。効いてくるのは、Suica ID番号が変わる場合があることです。
Suica ID番号は、そのSuicaを1枚ずつ見分けるための識別番号です。これを登録して使っている外部サービスは、番号が変わると紐づけが切れます。エクスプレス予約やスマートEX、新幹線eチケットのように、Suicaをそのまま新幹線の改札にかざす予約サービスが代表例です。
再設定のあとは、新しい番号で登録し直す必要があります。旅行の前日に気づくと、本当に焦ります!
再設定が終わるまでにできることも限られます。チャージ、電子マネーとしての支払い、定期券の購入、ポイントまわりのサービス。これらはすべて再設定の完了待ちです。
私は定期券も入れていたので、その朝は定期区間の運賃まで自分で払うことになりました。定期券を入れている人は通勤そのものが止まるので、朝に気づいたらまず切符を買ってしまって、再設定は会社に着いてから落ち着いてやるほうが安全だと思います。
改札の中で消えた、スマホごと無くした
ここだけは自力で粘らないでください。
JR東日本のFAQには、夜間メンテナンスの時間帯や改札内でSuicaを預け入れた場合、再設定ができなくなる可能性があると書かれています。入場の記録が残ったままカードが端末から離れるので、受け取り直しても状態が噛み合わなくなるわけです。改札の中で消えたと気づいたら、その場で駅係員に事情を話したほうが早く片づきます。
スマホごと無くした場合は、優先順位が入れ替わります。第三者に使われる可能性があるので、再設定より先に利用を止めるほうが先です。モバイルSuica会員メニューのサイトにパソコンから入れば、自分で利用停止の登録ができます。
端末そのものの捜索と遠隔操作は、Suicaの手続きとは別に走らせることになります。
端末が壊れたときの「再発行登録」
電源すら入らない、あるいは手元に戻ってこない。この場合は受け取り直しの画面そのものに行けないので、「再発行登録」という手続きを使います。
流れは2段階です。まずパソコンからモバイルSuica会員メニューのサイトに入って「再発行登録」を選びます。電話で受け付けるモバイルSuicaサポートセンターでも手続きできます。そのうえで新しい端末にモバイルSuicaアプリを入れ、「再発行登録をした方」から案内どおりに進めます。
制限が3つあります。
- 再発行登録はいったん行うと取り消せない
- 違うOSへの再発行はできない(AndroidからiPhoneなどは、いったん退会する流れになる)
- Suicaグリーン券は再発行されない
無記名のSuicaは、そもそもこの手続きに乗れません。持ち主を特定できないので、残高の補償も再発行も対象外になります。ウォレットに入れただけの無記名Suicaを使っているなら、記名式に切り替えておくと、端末を失くしたときに打てる手が1つ残ります。
同じことを繰り返さないための準備
機種変更の前にやっておくと効くことが2つあります。
1つ目は、いま使っているGoogleアカウントかApple IDを控えておくことです。受け取り直しはこのアカウントが鍵になるので、新しい端末で別のアカウントに入ってしまうと、Suicaは預けられたまま出てきません。私の失敗はまさにここでした。
2つ目は、旧端末が動くうちに、自分の意思で一度預け入れて受け取ってみることです。消えてから慌てて探すのと、自分で預けたものを取りに行くのとでは、同じ操作でも落ち着きがまるで違います。手順を1回なぞっておけば、次に不意打ちで消えても画面の場所を覚えています。
ついでに言うと、この「アカウントが変わると使えなくなる」という感覚は、スマホに入れている身分証でも同じように効いてきます。
まとめ
ウォレットの一覧からSuicaが消えても、カードはJR東日本のサーバに預けられているだけです。残高も定期券も、端末で受け取り直せば戻ります。
Androidは「おサイフケータイ」の「交通系ICカードの受け取り」から、iPhoneは「ウォレット」の「+」にある「以前ご利用のカード」から。入口さえ分かっていれば、どちらも5つの手順で終わります。
引き金はOSで違います。Androidは初期化とアカウントの変更、iPhoneはそこにパスコードをオフにする操作が加わります。消えたのではなく預けられただけなので、受け取り直しの入口を知っているかどうかで、改札前の5分が変わります。
戻ってきても、Suica ID番号が変わるとエクスプレス予約などの連携は登録し直しになります。ここだけは受け取り直しでは片づかないので、出張や旅行の予定が近い人は先に確認しておくと落ち着きます。
端末そのものが壊れた、もしくは無くした場合は、受け取り直しではなく再発行登録です。取り消せない手続きで、違うOSへは引き継げず、グリーン券は戻りません。紛失なら、利用を止めるほうが順番として先になります。
私はあの朝、券売機の前でモバイルSuicaアプリを開いては閉じるのを3回繰り返しました。正解は隣にあったおサイフケータイアプリです。「交通系ICカードの受け取り」という項目が、ずっとそこに並んでいました。間の抜けた話ですが、入口を知らないというのはそういうことなのだと思います。