格安SIMを申し込もうとして、免許証を撮影する画面が見当たらない。代わりに「ICチップを読み取ってください」と案内が出る。この春から、そんな場面が一気に増えました。
これまでオンラインの本人確認といえば、身分証をカメラで撮って、ついでに自分の顔も自撮りして送る方式が定番でしたよね。手間はそこそこかかるものの、家から一歩も出ずに終わるのがありがたい仕組みでした。
その方式が、携帯電話の契約では2026年4月1日に姿を消しています。代わりに求められるのが、マイナンバーカードや運転免許証のICチップをスマホでかざして読み取る方法です。銀行や証券などの本人確認も、2027年4月1日から同じ方向へ切り替わります。
そして、ここで多くの人が足を止められます。読み取りに使う暗証番号を、覚えていないからです。
運転免許証のICチップには、4桁の数字の暗証番号が2組設定されています。免許を取った日や更新した日に、窓口で自分が決めたはずのもの。私は完全に忘れていました…。マイナンバーカードのほうも、数字4桁の暗証番号と英数字の暗証番号が別々にあって、思い込みで入力を繰り返すとロックがかかります。
この記事では、オンラインの本人確認が写真送信からICチップ読み取りへ切り替わった経緯と、申し込み当日に詰まらないためにスマホと暗証番号を先に整えておく手順をまとめます。
ロックしてしまうと、平日の昼間に警察署や役所へ出向く必要が出てきます。数分で済む確認を、申し込みボタンを押す前にやっておく価値は十分あります。
写真を送る本人確認が終わる
なくなったのは、身分証の写真を送るタイプの本人確認です。
オンラインの申し込みでは長らく、顔写真付きの本人確認書類を撮影した画像と、その場で撮った自分の容貌の画像を送る方式が使われてきました。事業者の間では「ハ方式」と呼ばれていた方法です。
この方式には弱点がありました。事業者に届くのは、あくまで書類の見た目の画像だという点です。
精巧に偽造された身分証が出回るようになると、画像の照合だけでは見破れないケースが出てきます。実際、他人名義の携帯電話が特殊詐欺の道具に使われる被害が続いていました。
そこで国が選んだのが、書類の「見た目」ではなく「ICチップの中身」を確認させるという方向転換です。
ICチップに記録された情報は、券面をきれいに真似ただけでは再現できません。偽造対策としては、たしかに筋が通っています。
参考:総務省の解説ページ
切り替わる時期は2段階
変更は一斉ではなく、分野ごとに時期がずれています。携帯電話と金融機関で1年ずれているので、混同すると申込先の案内と話が合わなくなります。
携帯電話は2026年4月から
携帯電話の契約は、携帯電話不正利用防止法という法律のルールで動いています。その施行規則が改正され、2026年4月1日から新しい本人確認の方法に切り替わりました。
オンライン申し込みでは、身分証の画像と自撮り画像を送る方式と、本人確認書類の写しを郵送する方式が廃止されています。
置き換わったのは、ICチップの読み取りと容貌の撮影を組み合わせる方法や、ICチップの読み取りと転送不要郵便を組み合わせる方法です。どのルートを選んでも、ICチップを読む工程からは逃げられません。
参考:総務省の報道資料
金融機関は2027年4月から
銀行口座の開設や証券口座の申し込みなどは、犯罪収益移転防止法という別の法律の管轄です。こちらの改正は2027年4月1日施行で、携帯電話より1年遅れて動きます。
廃止されるのは、本人確認書類の外見画像と自撮り画像を照合する方式です。マイナンバーカードのICチップに入った電子証明書を使う方法などへ、原則が移ります。
裏を返すと、2026年のうちは「携帯電話はICチップ読み取り、金融はまだ画像でも受け付ける」という状態が混在します。申込先ごとに案内を読むのが確実です。
参考:警察庁の法令解説ページ
ICチップ読み取りの流れ
案内が出たら、まず暗証番号を入力します。続いてスマホの背面(iPhoneは本体上部)に身分証を密着させると、数秒で読み取りが終わります。あとは顔を撮影して完了、という流れです。
使える書類は事業者によって幅がありますが、マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、在留カードあたりが中心になります。
つまずくポイントは、操作そのものではありません。暗証番号を思い出せるかどうかで、成否がほぼ決まります。
もうひとつ、スマホケースを付けたままだと読み取れないことがあります。特に手帳型でカード入れが付いているタイプは相性が悪いので、始める前に外しておくと余計な失敗が減ります。
免許証の暗証番号は2組
運転免許証のICチップには、4桁の数字の暗証番号が2組設定されています。1組で足りると思い込んでいる人が多い部分です。
1組目は本籍と写真以外の券面情報、2組目は本籍と写真を読み出すために使います。本人確認で顔写真の照合まで行う場合は、両方を求められることがあります。
設定したのは、免許の取得時や更新時に窓口の機械を操作したあのタイミング。何年も前の記憶を掘り起こす作業になるので、心当たりのある番号は事前に書き出しておくのが安全です。
そして重要なのが、3回続けて間違えるとICチップが読めなくなるという点です。
「あと1回だけ試そう」が命取りになります。2回外した時点で、手を止めてください。
参考:兵庫県警察の案内
マイナカードの暗証番号
マイナンバーカードは、暗証番号が用途別に分かれているのがややこしいところです。
- 署名用電子証明書の暗証番号:英数字6〜16桁
- 利用者証明用電子証明書の暗証番号:数字4桁
- 券面事項入力補助用の暗証番号:数字4桁
- 住民基本台帳用の暗証番号:数字4桁
数字4桁の3つは同じ番号にそろえて設定している人が多いはずですが、署名用だけは英数字で別物です。ここを混同したまま入力を繰り返すのが、ロックの典型パターンになります。
ロックまでの回数も違います。数字4桁の暗証番号は3回連続、英数字の署名用は5回連続で間違えるとロックされます。
どの暗証番号を求められるかはサービス側の設計次第なので、画面に出ている名称をそのまま読むのが確実です。「4桁の数字」なのか「英数字6桁以上」なのかで、思い出すべき番号が変わります。
ロックされたときの解除先
ロックしてしまった場合、解除先は書類によって違います。
運転免許証の場合
免許証のICチップがロックされたときは、運転免許試験場や運転免許更新センター、警察署で解除できます。本人が免許証を持参する必要があり、代理人ではできません。
受付は平日の日中に限られるため、勤めに出ている人にはなかなか重い手続きです。乗り換えの締め切り直前にこれをやる羽目になると、かなり厳しい。
参考:警視庁の案内
マイナンバーカードの場合
マイナンバーカードは、市区町村の窓口だけでなく、コンビニなどのキオスク端末でも暗証番号の初期化・再設定ができます。スマホのアプリでカードを読み取り、顔認証で本人確認を行う仕組みです。
ただし条件があります。対象は署名用電子証明書と利用者証明用電子証明書の暗証番号で、しかもどちらか一方を把握している場合に限られます。
両方わからないときや、券面事項入力補助用・住民基本台帳用の暗証番号を直したいときは、市区町村の窓口へ行くことになります。窓口が開いている日を調べるところからのスタートです。
スマホがNFCに対応するか
もうひとつの関門が、手元のスマホです。ICチップを読むには、NFCという近距離無線通信の機能が要ります。
iPhoneは比較的新しい機種であれば、まず問題ありません。悩ましいのはAndroidで、NFCを積んでいない機種もあれば、積んでいても公的個人認証の動作確認が取れていない機種もあります。
自分の機種が使えるかどうかは、公的個人認証サービスが公開している対応スマートフォンの一覧で確認できます。型番で探す形になるので、設定画面から正確な機種名を控えてから開くとスムーズです。
読み取り位置が機種ごとに違うのも見落としがちなポイントです。iPhoneは本体の上部、Androidは背面の中央付近やカメラ寄りなど、機種によってばらつきます。反応しないときは、位置を少しずつずらしながら数秒ずつ試すのがコツです。
手続き前の3つの確認
申し込み当日に慌てないための準備は、3つに絞れます。
- 使う予定の身分証の暗証番号を思い出し、確実な形で手元に控える
- 自分のスマホがICチップ読み取りに対応しているか、対応機種の一覧で確かめる
- 読み取りを試すときはスマホケースを外し、2回外したら中断する
いちばん効くのは3つ目です。ロックしてから解除に動くと、携帯の乗り換えキャンペーンの期限や、口座開設の締め切りに間に合わなくなります。
心当たりの番号が複数あるなら、試す前に紙へ書き出して、確度の高い順に並べておく。それだけで無駄打ちが減ります。
まとめ
オンラインの本人確認は、身分証を撮って送る時代から、ICチップを読み取る時代へ移りました。
携帯電話の契約は2026年4月1日から新しいルールに切り替わり、銀行や証券などの金融分野は2027年4月1日に続きます。偽造された身分証を画像の照合では見抜けなかった、という事情が背景にあります。
読者の側でやることは、実のところ書類の準備ではありません。暗証番号の記憶を掘り起こすことです。
スマホ側の条件もひとつだけあります。ICチップを読むにはNFCが必要で、Androidは機種によって対応が分かれます。公的個人認証サービスの対応機種一覧で型番を照らし合わせておけば、当日にそこで止まることはありません。
運転免許証は4桁の数字が2組で、3回間違えるとICチップが読めなくなります。マイナンバーカードは数字4桁が3回、英数字の署名用が5回でロック。解除は、免許証なら警察署や運転免許試験場、マイナンバーカードなら市区町村の窓口かコンビニのキオスク端末で行います。
ICチップ読み取り方式でつまずく原因のほとんどはスマホの性能ではなく、暗証番号の記憶とロックまでの回数を知らないことなので、申し込む前に番号を確かめておくだけで大半は防げます。
私自身、免許証の暗証番号は完全に飛んでいて、古い手帳を引っ張り出してようやく見つけました。あのとき勢いで3回入力していたら、平日に警察署へ出向く一日が確定していたわけです…。
これから携帯の乗り換えや口座開設を考えているなら、申し込みボタンを押す前に暗証番号だけ確認しておく。数分の作業で、後日の面倒がまるごと消えます。