私たちが日常で使っている日本語の中には、よく耳にするものの、実は誤った意味で使われている表現が多々あります。例えば、「敷居が高い」「失笑」「確信犯」などはその代表例ですね。
では、「断トツ」という言葉を皆さんはどのように使っていますか?たとえば「断トツの最下位」という表現を耳にしたとき、違和感を感じる方はいるでしょうか。
この表現、一見正しそうに見えますが、意味を考えると実はおかしな日本語なのです。
「断トツの首位」「断トツのビリ」は本当は間違い
「断トツ」は比較的新しい表現と言われていて、初期の使用例として知られているのは石原慎太郎氏の小説「死のヨットレース脱出記」(1963年発表)。同作内では「断然トップ」の略称として使われているそうです。
「断トツ」は「ダントツ」と書くことも多いのだが、この語の語源をご存じだろうか。お手元の国語辞典を引いていただくと、ほとんどが「断然トップ」の略と書かれていると思う。「トツ」は英語の「top」の略なのである。意味は2位以下を大きく引き離して先頭にあることをいう。
LINK:「断トツ」は1位ではないのか?
この説明を踏まえると、「断トツの首位です」という表現は意味的に重複しています。「断トツ」はすでに「大差をつけてトップ」という意味を持っているため、「大差をつけて1位の首位です」と同義になり、おかしな表現となってしまいます。
さらに「断トツのビリ」という表現も、「トップなのかビリなのか」混乱を招く言い回しです。本来「断トツ」は1位に使うべき表現で、最下位に使うのは不適切です。
なぜ「断トツ」の誤用が広がったのか?
近年、「断トツ」の「トップ」という意味が薄れ、「大差をつけて」「圧倒的な」といった意味合いが強調されるようになりました。これは、スポーツやメディアなどで広く使われるようになった結果です。
「断トツの最下位」という表現も、誤用でありながら耳に馴染んでしまい、多くの人がそのまま使うようになったのかもしれません。
言葉は時代とともに変化します。誤用が広まることで、新たな意味として定着してしまう例も数多くあります。「断トツ」も将来、誤用が主流となり、正しい意味として認識される日がくるかもしれません。
よく誤用される日本語の例
「断トツ」以外にも、よく誤用される日本語があります。以下に代表的な例を挙げてみます。
- 敷居が高い:本来は「不義理や不都合があって、相手の家や場所に行きにくい」という意味ですが、現代では「高級すぎて入りづらい」という意味で使われることが多いです。
- 失笑:本来の意味は「思わず笑ってしまうこと」ですが、誤って「笑いものにする」という意味で使われることが多いです。
- 確信犯:本来は「自分の信念に基づいて行った行動が法に触れる場合」を指しますが、一般的には「悪事と分かっていながら行う犯行」の意味で誤用されています。
こうした言葉の誤用は、現代のメディアや日常会話で多く見られるため、しばしば混乱を招きますが、言語は常に進化しており、使用頻度によってはその誤用が正しい表現として受け入れられることもあります。
まとめ:日本語の誤用に気をつけよう
「断トツ」など、よく耳にする日本語であっても、実は誤用されているケースが多々あります。
言葉の意味を正確に理解し、正しい使い方を意識することが大切です。ただし、言葉は時代と共に変化し、誤用が定着することも珍しくありません。
日常生活で使う際には、その背景や本来の意味を知っておくことで、より適切なコミュニケーションが取れるようになると思います。