誕生日が近づくと、「運転免許証更新のお知らせ」というハガキが届きます。
あの紙に印刷された「更新時講習区分」が優良か一般だったら、免許センターの講習室に座る時間は、もう省けます。2025年3月24日から、更新時の講習をスマホやパソコンで受けられる制度が全国で始まっているからです。名前は「オンライン更新時講習」。優良区分なら約30分、一般区分なら約60分の動画を、自宅の好きな時間に見て終わりにできます。
ただ、誰でも押せるボタンではありません。
マイナ免許証を持っていること、マイナポータルとの連携が済んでいること、更新期間中で、なおかつ窓口で更新申請書を受け取る前であること。この3つがそろったときだけ、オンライン講習が選べます。
3つ目がいちばん取りこぼしやすい条件です。免許センターに着いて受付を済ませ、申請書を手にした瞬間に、オンラインという選択肢は画面から消えます。「せっかく来たからオンラインで」は成立しません。
お金も動きます。会場での講習手数料は優良500円・一般800円ですが、オンラインはどちらも200円。更新手数料のほうも、マイナ免許証1枚だけにすれば2,100円で、従来の免許証だけを持つ場合の2,850円より750円安く済みます。
私は、免許センターの椅子で講習の開始時刻を待つくらいなら、前の晩に家で済ませておくほうが性に合っています。とはいえ、連携のために一度だけは窓口へ行く必要があります。完全に自宅で完結する制度ではない、というのが正直なところです。
受けられるのは「優良」か「一般」の人だけ
手元にハガキがあるなら、まず「更新時講習区分」の欄を見てください。優良・一般・違反・初回のどれかが印刷されています。
オンラインで受けられるのは、このうち優良と一般の2つです。違反運転者講習と初回更新者講習は制度の開始時点から対象外で、こちらは従来どおり会場へ行くことになります。動画を流して終わりにできる内容ではない、という線引きなのでしょう。
年齢の線もあります。警視庁は対象者を「70歳未満の方」と明記していて、70歳以上で高齢者講習を受ける方は、そもそも更新時講習の区分に入らないため対象から外れます。免許の効力が停止中の方も受けられません。
逆に言えば、優良か一般の区分で70歳未満なら、あとはマイナ免許証まわりの準備だけという話になります。
参考:警視庁
受けられなくなる境目は、窓口で申請書をもらった瞬間
この制度でいちばん事故が起きやすいのは、条件そのものより順番だと思います。
受講できるのは更新期間中、つまり誕生日の前後1か月のあいだです。そしてもう1つ、更新手続きの申請書を受け取る前でなければいけません。神奈川県警は「受講者が更新手続の申請書を受領した時点で、オンライン講習は受講できなくなります」と書いていて、千葉県警も「更新申請後は、オンライン講習を受講することができません」と同じことを案内しています。
正しい順番はこうなります。
- 更新のお知らせハガキが届く
- マイナポータル連携を済ませる
- 自宅でオンライン講習を受ける
- 運転免許センターか警察署の窓口へ行き、適性検査と写真撮影を受ける
2と3を飛ばして4へ行ってしまうと、その日はもう会場での対面講習しか選べません。免許センターの受付は「まず申請書を書いてください」から始まるので、着いてから思い出しても遅いわけです。
ハガキが届いた日に連携まで進めておくのが、結局いちばん確実だと思います。
参考:千葉県警察
連携のために一度だけ窓口へ行く
オンライン講習そのものは自宅で完結しますが、その手前にある「マイナポータル連携」は、最初の1回だけ窓口が必要です。
窓口でやることは、マイナ免許証に入っている署名用電子証明書を警察側へ提出する手続きです。運転免許センターか警察署に置かれた専用の機器で、署名用電子証明書の暗証番号を入力します。この暗証番号は市区町村で設定した6〜16桁の英数字で、カードを受け取ったときに書いた4桁とは別物です。ここを混同して止まる人は多いはずです。
マイナ免許証をこれから申請するなら、同じ窓口でまとめて済ませられます。すでにマイナ免許証を持っている方でも、署名用電子証明書を提出していなければ連携は始まりません。
窓口での提出が終わったら、次は自分のスマホです。マイナポータルにログインして、メニューの「運転免許」から連携の手続きを行います。連携は初回だけで、次の更新のときにやり直す必要はありません。
そして待ち時間がひとつ。千葉県警は、連携してからオンライン講習を受けられるようになるまで「1時間程度」かかると案内しています。窓口を出た足で画面を開いても、まだ出てこないことがあります。
スマホで受ける手順
用意するもの
持ち物は5つです。
- マイナ免許証(マイナンバーカード本体)
- 内蔵カメラがあり、マイナンバーカードを読み取れるスマートフォン
- 利用者証明用電子証明書の暗証番号(数字4桁)
- 更新のお知らせハガキ(講習区分の確認用)
- 安定した通信環境。各県警ともWi-Fiを推奨しています
警察庁の資料では、必要な機器を「スマートフォン又はパソコン(内蔵カメラ、マイナンバーカードの読取機能が必要)」としています。パソコンで受ける場合、内蔵カメラがなければWebカメラを足し、さらにICカードリーダーも要ります。そこまで機材をそろえる手間を考えると、NFC対応のスマホ1台で受けるほうが早いと思います。
読み取りに使うのはマイナアプリ(以前のマイナポータルアプリ)です。自分の機種が対応しているかどうかは、マイナポータルのサイトに対応機種一覧があります。
マイナポータルでの操作
実際の流れは次のとおりです。画面の名前を文字で追えるように並べます。
- スマホでマイナポータルにログインする(数字4桁の暗証番号を入力し、カードを読み取る)
- メニューの「運転免許」を開く
- 「オンライン講習を受講する」を選ぶ
- 利用規約に同意して、講習動画の再生を始める
- 優良なら約30分、一般なら約60分の動画を最後まで視聴する
- 受講完了の通知がマイナポータルの「お知らせ」に届く
1番でつまずく人がいちばん多いのではないかと思います。スマホの背面のどこにNFCのアンテナがあるかは機種によってばらばらで、当てる位置が数センチずれただけで反応しません。カバーを付けたままだと読めないこともあります。
動画を見ている間、カメラが顔を撮る
受講中、インカメラが勝手に動きます。
本人が受けているかどうかを確かめるため、視聴中にランダムなタイミングで顔が自動撮影される仕組みです。神奈川県警の説明によると、撮られた画像は免許証の写真と照合され、確認が取れなかった場合だけ保存されて、窓口で職員が改めて確認することになります。顔の撮影に同意できない方は、そもそも受講できません。
マスク、サングラス、帽子は外しておきます。ここを面倒がって本人と判別できないと、免許センターで対面講習を受け直すよう求められることがあります。30分をやり直すのは、さすがに痛い。
ありがたいのは、動画を途中で止められることです。神奈川県警は、中断しても視聴済みのチャプターは再視聴やスキップができると案内しています。一般区分の60分を一気に見る必要はないので、平日の夜に分けて進めるのが現実的でしょう。
参考:神奈川県警察
受講後に窓口へ向かうまでの待ち時間が、県によって違う
講習が終わっても、免許の更新はまだ終わっていません。視力検査などの適性検査と写真撮影は、これまでどおり運転免許センターか警察署の窓口で行います。
そして、ここが各県警の案内でいちばんそろっていない部分でした。受講した記録がシステムに反映されるまでにタイムラグがあり、反映される前に受付へ行くと「受けていない」扱いになってしまいます。その待ち時間の数字が、県によってはっきり違うのです。
- 神奈川県警:受講結果のデータが反映されるまでに最大15分程度
- 千葉県警:受講済みの情報が反映されるまで約20分
- 埼玉県警:受講終了から1時間以上たたないと自動受付機に反映されない
同じ全国制度で15分と1時間では、当日の動き方がまったく別物になります。受付の仕組み(窓口なのか自動受付機なのか)の違いが効いているのかもしれませんが、断定はできません。受講した当日に免許センターへ行くつもりなら、自分の都道府県警のページで反映時間を確認しておいたほうが安全です。
私なら、前日か前々日に講習を済ませておきます。数十分の差で出直しになるのは、いちばんもったいない負け方だと思うので。
参考:埼玉県警察
手数料は最大で1,050円変わる
金額を並べておきます。2025年3月24日の改定後の数字です。
更新手数料は、更新したあとにどのカードを持つかで3通りに分かれます。
- 従来の運転免許証のみ:2,850円
- マイナ免許証のみ(1枚持ち):2,100円
- 免許証とマイナ免許証の2枚持ち:2,950円
これに講習手数料が乗ります。会場での対面講習は優良500円・一般800円、違反と初回は1,400円。オンライン講習は優良・一般ともに200円です。
優良区分でいちばん安い組み合わせは「マイナ免許証のみ+オンライン講習」で、2,100円+200円の2,300円。いちばん高いのは「従来の免許証のみ+対面講習」の2,850円+500円で3,350円になり、差は1,050円です。
ただし、1,050円のために1枚持ちへ振り切るかどうかは別の話だと思っています。マイナ免許証だけにすると、カードを失くしたときに免許証も同時に手元から消えることになります。再発行が終わるまでは運転を控えるしかありません。私は2枚持ちのほうが落ち着きます。2枚持ちでもオンライン講習は問題なく受けられますし、差額は200円です。
参考:栃木県警察
「受講対象外です」と出たときに確認する5つ
連携も済ませた、区分も優良、なのにボタンが押せない…。そういうときに見る順番を並べます。
- 講習区分が違反か初回になっていないか。ハガキの「更新時講習区分」を見る
- 更新期間に入っているか。受けられるのは誕生日の前後1か月のあいだだけ
- すでに窓口で更新申請書を受け取っていないか。受け取った時点で対象から外れる
- マイナポータル連携が完了しているか。窓口での署名用電子証明書の提出と、マイナポータル側の連携の両方が必要
- 連携してから1時間たっているか
ここまで見て原因がなければ、エラーの側を疑うことになります。マイナポータルのよくある質問には「エラーと対応」というカテゴリがあり、連携時と受講時のエラーが分けてまとめられています。
それでも解決しないときの問い合わせ先は、住所地を管轄する運転免許センターか警察署です。デジタル庁ではなく警察側、というのは覚えておいて損がありません。
なお、自分がオンライン講習の対象になったタイミングで、マイナポータルの「お知らせ」に通知が届く仕組みもあります。連携さえ済ませておけば、更新期間に入ったことを向こうから教えてくれるわけです。
まとめ
オンライン更新時講習は、条件さえそろえば免許センターでの滞在時間をまるごと短くできる制度です。優良区分なら約30分、一般区分なら約60分の動画を自宅で終わらせておけば、窓口で受けるのは適性検査と写真撮影だけになり、講習室に入る必要がなくなります。
ただ、条件は少なくありません。講習区分が優良か一般であること。70歳未満であること。マイナ免許証を持っていて、署名用電子証明書を警察に提出し、マイナポータルで連携まで終えていること。そのうえで更新期間中に、窓口で申請書を受け取る前に受講すること。
この最後の順番だけは、あとから取り返しがつきません。免許センターの受付で申請書を手にした時点で、オンライン講習は選べなくなります。当日の朝に思い立っても、連携には窓口での手続きが要るので間に合わないでしょう。ハガキが届いた週のうちに連携まで進めてしまうのが、この制度をいちばん取りこぼさないやり方だと思います。
金額は、優良区分でマイナ免許証1枚にすれば2,300円。従来の免許証で対面講習を受けると3,350円なので、差は1,050円になります。2枚持ちを選んでも3,150円なので、オンラインにするだけで200円は確実に浮く計算です。
それと、受講してから免許センターへ向かうまでの待ち時間。神奈川県警は最大15分程度、千葉県警は約20分、埼玉県警は1時間以上と、案内している数字が県でばらついていました。同じ全国制度でこれだけ幅があるのは意外で、当日に動くつもりなら自分の都道府県警のページを開いておく価値があります。
私がいちばん大きいと思うのは、動画を途中で止めて再開できる点です。一般区分の60分を、平日の夜に2回か3回に分けて消化する。会場に座ってしまったらできない使い方です! 免許センターの椅子で開始時刻を待った記憶がある方なら、この差は伝わるのではないでしょうか。