引き出しの奥から出てきた古いモバイルバッテリーが、心なしかパンパンに膨らんでいた……そんな経験はありませんか。
リチウムイオン電池は、劣化が進むと内部にガスがたまり、外装を押し上げて膨らむことがあります。見た目は静かでも、中身は可燃性ガスを抱えた状態。強い衝撃や圧力が加われば発火につながるおそれもある、れっきとした要注意品です。
厄介なのは、この膨らんだバッテリーの捨て場所が本当に見つからないことです。普通ごみには出せませんし、家電量販店などに置かれている小型充電式電池の回収ボックス(JBRC)も、実は膨張・破損したものは対象外。「じゃあどこに出せばいいの?」と途方に暮れて、結局引き出しに戻してしまう——これが一番危ないパターンです。
私も、防災用に置きっぱなしにしていた10年選手のバッテリーの膨らみに気づいて、処分先を片っ端から調べた一人です。調べてわかったのは、受け皿がここ1〜2年で着実に増えていること。2025年には環境省が全国の自治体へ回収体制づくりを促す通知を出し、2026年4月からはメーカーによる回収も法律で義務化されました。
この記事では、膨らんだモバイルバッテリーの危険性とやってはいけないNG行動、回収ボックスに出せないときの具体的な処分先、処分の日まで安全に保管する方法をまとめて解説します。
読み終わるころには、引き出しの中のアレの行き先が決まっているはずです。心当たりのある方は、この機会に片付けてしまいましょう。
モバイルバッテリーはなぜ膨らむ?そのまま使うのは危険
モバイルバッテリーに使われているリチウムイオン電池は、充電と放電を繰り返すうちに内部の電解液などが劣化・分解し、ガスが発生することがあります。このガスが外装を内側から押し広げるのが、あの「膨らみ」の正体です。
高温の場所に置きっぱなしにする、強い衝撃を与える、寿命を超えて使い続ける——こうした条件がそろうと、劣化は一気に進みます。真夏の車内への放置は、特に危険な組み合わせです。
膨らんだバッテリーの内部には可燃性ガスがたまっており、強い衝撃や圧力が加わると発火するおそれがあります。製品評価技術基盤機構(NITE)も、リチウムイオン電池搭載製品の事故について繰り返し注意喚起を出しています。
NITEのまとめでは、2020年から2024年の5年間に報告されたリチウムイオン電池搭載製品の事故は1,860件。そのうち約85%が火災に発展しています。しかも事故は気温の上昇とともに増え、6〜8月がピーク。まさに今の季節が一番危ない時期です!
絶対にやってはいけないNG行動
膨らみに気づいたら、まずやることは「使うのをやめる・充電しない」の2つ。そのうえで、次の行動は絶対に避けてください。
- 膨らんだまま使い続ける・充電する
- 押しつぶして元の形に戻そうとする
- カッターや画鋲で穴を開けてガスを抜く
- 直射日光の当たる窓際や車内など、高温になる場所に置く
中でも「穴を開けてガス抜き」は、ネットで時々見かけますが論外です。中の可燃性ガスに引火して、その場で発火する危険があります。
参考:NITEの注意喚起
大前提:モバイルバッテリーは「ごみの日」に出せない
膨らんでいてもいなくても、モバイルバッテリーを可燃ごみ・不燃ごみに混ぜて出すのはNGです。収集車の中で圧縮された拍子に発火し、車両やごみ処理施設の火災につながる事故が全国で相次いでいます。
事態を重く見た環境省は、2025年4月、全国の自治体に向けてリチウム蓄電池類の回収体制を整えるよう通知を出しました。「燃えるごみに紛れ込むバッテリー」は、それほど深刻な社会問題になっているということです。
膨らんでいなければ「回収ボックス」でOK
まだ膨らんでいない普通のモバイルバッテリーなら、話は簡単です。家電量販店やホームセンターなどの「JBRCリサイクル協力店」に設置された小型充電式電池の回収ボックスに入れれば、無料でリサイクルされます。
出すときは、端子(コネクタ部分)にビニールテープを貼って絶縁しておきましょう。ボックスの中で他の電池と接触してショートするのを防ぐ、大事な安全対策です。近くの協力店は、JBRC公式サイトの検索ページで調べられます。
膨らんでいると回収ボックスには出せない
ここが今回の記事の核心です。JBRCの回収対象は破損・膨張していない電池に限られており、膨らんだモバイルバッテリーは回収ボックスに入れられません。水に濡れたものも同じく対象外です。
知らずにボックスへ入れてしまうと、回収や運搬の途中で発火する危険があります。「入れてしまえば分からない」は、お店の人や運搬業者さんを危険にさらす行為なので、ここはルールを守りたいところです。
膨らんだモバイルバッテリーの処分先はここ
①自治体の回収・相談窓口(まずはここ)
第一候補は、住んでいる市区町村です。環境省の通知を受けて、モバイルバッテリーを含むリチウム蓄電池類を自治体で回収する動きが全国に広がっています。
ただし、膨らんだ電池まで受け付けるかどうかは自治体によって対応が分かれます。横浜市のように膨張した充電式電池の処分方法を専用ページで案内している自治体もあれば、個別相談としているところもあります。
手順としては、「自治体名+モバイルバッテリー 捨て方」で検索して分別ページを確認し、膨張品の記載がなければごみ担当課に電話で聞くのが確実です。私の場合、電話は5分ほどで終わりました。窓口さえ分かれば、あとは指示どおりに出すだけです。
参考:環境省の特設ページ
②メーカーや購入店に相談する
製品のメーカーが回収や交換を案内している場合もあります。特にリコール対象品ならメーカーが回収するので、型番でリコール情報を確認する価値はあります。
注意したいのは、自己判断で宅配便に乗せて送らないこと。膨張したリチウムイオン電池は輸送中の発火リスクがあり、郵送や宅配の取り扱いが制限されています。送る場合は、必ずメーカーの指示に従ってください。
③2026年4月から「メーカー回収」が義務になった
追い風になる制度改正もありました。2026年4月に改正資源有効利用促進法が施行され、モバイルバッテリー・携帯電話・加熱式たばこが「指定再資源化製品」に追加。一定規模以上のメーカーや輸入販売事業者に、使用済み製品の回収・リサイクルが義務付けられました。
背景にあるのは、やはり全国で相次ぐ発火事故です。今後はメーカーや販売店の回収窓口が増えていく見込みで、「買った店・作った会社に返す」という選択肢はこれからもっと現実的になります。
処分の日まで安全に保管するチェックリスト
自治体やメーカーに引き渡すまで、数日〜数週間は家で保管することになる場合もあります。その間の置き方でリスクは大きく変わるので、以下をそのままチェックリストとして使ってください。
- 使わない・充電しない(ケーブルからも外す)
- 端子部分にビニールテープを貼って絶縁する
- 押しつぶさない・穴を開けない・分解しない
- 金属製の缶やふた付きの不燃容器に入れる(お菓子の空き缶で十分)
- 直射日光の当たる窓際・車内など、高温になる場所を避ける
- 紙や布団など燃えやすいものから離して置く
万が一、煙が出たり発火したりした場合は、大量の水をかけて消火し、できれば水没させた状態にして119番通報を。これはNITEが公開している対処法です。
そして、次のバッテリーを膨らませないためには日頃の使い方も大切です。高温を避ける・衝撃を与えないといった基本は、スマホ本体のバッテリーと共通です。
関連記事:スマホのバッテリーを長持ちさせる5つのコツ!今日からできる簡単習慣
まとめ
膨らんだモバイルバッテリーの捨て方について、膨らむ原因から処分先、保管のチェックリストまで解説してきました。
「家に一つはある」と言えるほど普及した製品なのに、出口の情報はまだまだ知られていません。おさらいすると、ポイントは次のとおりです。
- 膨らみの正体は内部の可燃性ガス。押す・刺す・充電するは厳禁
- 膨らんでいなければ、家電量販店などのJBRC回収ボックスへ
- 膨らんでいたら回収ボックスはNG。まずは自治体のごみ担当窓口に相談
- メーカーや購入店の回収、リコール情報の確認も選択肢
- 処分の日までは端子を絶縁し、金属缶に入れて高温を避けて保管
膨らんだモバイルバッテリーは「押さない・刺さない・ためこまない」。回収ボックスに出せなくても、自治体への相談を起点にすれば行き先は必ず見つかります。
一番よくないのは、「捨て方が分からないから」と引き出しやカバンに戻して忘れてしまうことです。NITEの統計が示すとおり、事故のピークは6〜8月。気温が上がるこれからの時期は、放置のリスクも一段上がります。
防災グッズと一緒に古いバッテリーをしまい込んでいる方は、点検のついでに膨らみのチェックもセットにするのがおすすめです。電話一本で段取りが決まり、拍子抜けするほどあっさり終わります。ついでに、まだ膨らんでいない使い古しのバッテリーも一緒に回収ボックスへ持ち込めば、家の中の火種をまとめて減らせて一石二鳥です。制度も回収網も、いまが一番整ってきたタイミングです!