BIGLOBEが全国の20代~50代の社会人男女を対象に「有給休暇に関する意識調査」の結果を発表しました。調査方法はインターネット調査で、年代・性別ごとの人数はそれぞれ125人ずつの合計1000人です。
日本は特に有給休暇が取りにくいと言われていますが、その理由がまぁ日本人らしいというかなんというか…
上位に並んだのは、制度の不備でも人手不足でもありませんでした。1位は「職場に休める空気がない」。2位は「自分が休むと同僚が多く働くことになる」。3位は「上司・同僚が有給休暇を取らない」。全部、人の顔色の話です。
権利として与えられているのに、周りを見て使えない。この調査が出た当時、私はここに引っかかりました。制度が足りないなら制度を直せばいい。でも空気が理由なら、直す相手がどこにもいません。
そして調査から数年後、法律のほうが動きます。2019年4月から年5日の取得が会社の義務になり、取得率も過去最高を更新し続けています。空気の話に、外から圧力がかかった形です。
この記事では、調査で挙がった3つの理由へのツッコミと、その後に変わった制度の中身を並べます。年5日の義務は誰が対象なのか、自分は何日もらえるのか、理由を聞かれたら答える必要があるのか。順番に見ていきます。自分が何日もらえて、会社に何が義務づけられているのかが分かれば、休みを申し出るときの後ろめたさは少し軽くなります。
あなたが有給休暇を取得できない(しない・しづらい)理由
1位:職場に休める空気がないから
はい出ました空気!
日本人が大好きな「空気を読む」ってやつですね。
いや、立派だと思いますよ。煽りではなく。
でも、休めない空気を作っているのは周りなのでしょうか?それとも自分なのでしょうか?「休めないから」と言って休まない人たちが集まって、そういう空気を作り出していることに気が付きましょう。
自分が休みを取って空気を変える方が、周りの人にとっても自分にとってもプラスになるのではないかと思わずにはいられません。
2位:自分が休むと同僚が多く働くことになるから
いやぁ、これも本当に素晴らしい。自分が休んだら周りが忙しくなるから休めない。
でも、世の中持ちつ持たれつでいいじゃないですか。自分が休んだ時は周りに助けてもらい、他の人が休んだら自分が助ける。お互い休みを取り合えば、何も悪いことはないはずです。
3位:上司・同僚が有給休暇を取らないから
これも1位の「職場に休める空気がないから」と同じ話。
周りが休みを取らないから自分も取らない…これじゃあ誰も永遠に休みを取れないです(笑)個人が率先して休みを取ることが、社ち…もとい社員の意識改革につながるのではないでしょうか。
まず大前提として有給休暇は社員の立派な権利であること。もちろん、繁忙期を避けるといった配慮は必要かと思いますが、通常営業時まで気にしていたらキリがありません。
その後、有給の取得は義務になりました
この記事を書いた時点では有給を取るかどうかは本人次第という空気が強かったのですが、その後、状況は変わりました。2019年4月に施行された働き方改革関連法によって、年10日以上の年次有給休暇が与えられる労働者について、そのうち年5日は使用者が時季を指定して取得させることが義務付けられたのです。つまり、会社側が「取らせなければならない」ルールになったわけですね。
ポイントは、義務を負うのが労働者ではなく会社だという点です。「休まない社員がいる」では通らず、会社の側が時季を指定してでも取らせる必要があります。
対象も広く取られています。正社員だけでなく、年10日以上の年休が付与されるならパート・アルバイト・有期雇用の人も入ります。管理監督者も対象です。「自分は管理職だから関係ない」は誤解ですね。
守らなかった場合の罰則もあります。年5日を取得させなかったときは30万円以下の罰金で、しかも対象となる労働者1人につき1罪として扱われます。10人放置していれば10件分。会社にとっては軽い話ではありません。
参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説(厚生労働省)
取得率は66.9%まで上がった
では、義務化で実際に休みは増えたのか。数字を見ると、はっきり増えています。
厚生労働省の就労条件総合調査によると、2024年の年次有給休暇の取得率は66.9%で過去最高。前年の65.3%から1.6ポイント上がりました。労働者1人あたりの平均取得日数は12.1日で、こちらは1984年以降で最多です。
平均付与日数は18.1日なので、もらっている18日のうち12日は使えている計算になります。義務化前の取得率が5割前後だったことを思えば、10年でずいぶん景色が変わりました。
政府はさらに上を見ていて、過労死防止対策大綱で2028年までに取得率70%以上を目標に掲げています。あと3ポイントほど。
もちろん平均の話なので、職場によって差は大きいはずです。それでも「うちは取りにくい」と感じているなら、それは全体の傾向ではなく自分の職場の問題だと切り分けられます。データがあると、その線引きができます。
自分は何日もらえるのか
義務の話を知っても、自分の残日数を知らなければ動けません。付与日数は勤続年数で決まっていて、フルタイムなら次のとおりです。
- 入社から6か月:10日
- 1年6か月:11日
- 2年6か月:12日
- 3年6か月:14日
- 4年6か月:16日
- 5年6か月:18日
- 6年6か月以降:20日
条件は2つで、雇い入れの日から6か月間続けて働いていることと、全労働日の8割以上出勤していることです。週の所定労働日数が少ないパートタイムの場合は、日数に応じて比例付与されます。
覚えておきたいのが年休の時効は2年だということ。今年使いきれなかった分は翌年に繰り越せますが、その翌年には消えます。20日もらって5日しか使わなければ、残りは2年後に順番に消滅していく計算です。
「もったいないから使う」で十分な理由になります。権利として与えられたものが、黙っていると毎年消えていくわけですから。
理由を聞かれても答えなくていい
申請のときに気が重いのが「理由」です。休みの理由を書く欄があると、それらしい用事をひねり出したくなる。
ここははっきりしていて、年休をどう使うかは労働者の自由で、使用者の干渉を受けません。目的は労働基準法の関知しないところ、というのが確立した考え方です。旅行でも、家で寝ているだけでも扱いは同じ。
会社側にあるのは時季変更権だけです。労働基準法39条5項で「請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる」と定められています。
注意したいのは、これが日付をずらす権利であって、拒否する権利ではないことです。しかも「忙しいから」では足りません。年度末に請求が集中して全員には与えられない、といった限られた場面が想定されています。
「その日は困る」と言われたら、代わりにいつなら取れるのかを聞く。断られたのではなく、日程の相談だと考えると話が進みます。
半日・時間単位で取る方法もある
まとまった休みが取りにくいなら、刻んで使う手があります。
半日単位の年休は、労使の合意があれば運用できます。午前だけ休んで午後から出る、という形ですね。役所や病院の用事なら、これで足りることが多いです。
さらに労使協定を結んでいる会社なら、時間単位の年休を年5日ぶんまで取れます。2時間だけ抜けて子どもの行事に行く、といった使い方ができます。
ただし、時間単位で取った分は、年5日の取得義務のカウントには入りません。義務の対象になるのは日単位(半日は0.5日として扱える)です。時間単位ばかり使っていると、会社側の義務が果たされていない状態になります。
自分の会社で半日や時間単位が使えるかは、就業規則の年次有給休暇の項を見れば書いてあります。使えるのに知らないまま、というのが一番もったいない。
自分が休むことは周りのためでもある
ちなみに私は会社でも有給を多く取っている方だと思います。
毎年、必ず休みを取って海外旅行にも行っています…が、日本人の血がそうさせるのでしょうか、まとめてはせいぜい3日か4日くらいしか取っていません。海外で外国の方と話すと「ニホンジンヤスミスクナーイ(英語)」と言われます(笑)
私みたいなぺーぺーが有休を率先して取ったところで会社の空気は変わっていないかもしれませんが、それでも多少は周りの休みの取りやすさの緩和になっているのではと自分では思っています。
ただ、おそらく有休を取らない人もここで私が言っていることなんて本当はわかっていると思います。ただ、休みを取ることによって周りを気にするストレスや、仕事の調整等を考えると面倒くさくなって「大変だから取らなくていいや」となっているのではないでしょうか。休みを取るのにパワーを使うのはよくわかりますが、それもなんだか悲しい話ですね。
制度の側から見れば、いまは追い風です。年5日は会社が取らせる義務を負い、守らなければ罰金の対象になる。取得率も66.9%まで上がって、休むことは例外ではなくなりました。空気が変わらないと嘆く前に、法律のほうが先に変わっていたわけです。
調査結果では他にも「周囲の人が有給休暇を取るときに感じること」や「有給休暇に関して希望していること」、「有給休暇を取りやすくするための工夫をしているか」など、有給休暇に関する様々な結果が紹介されていますので、興味がある方はご覧ください。
有給を気持ちよく取るためのポイントを最後にひとつ挙げるなら、やはり「自分がまず取ってみること」です。誰かが動き出さないと空気は変わりません。制度が整った今は、以前より一歩を踏み出しやすくなっているはずです。
