グランドセイコー(GRAND SEIKO)SBGX055。これは結婚の際に、嫁さんから婚約のお返しとして贈ってもらった時計です。当時の私は「実用的で、長く使えて、毎日気兼ねなく着けられる一本がほしい」と考えていて、いくつもの候補を見比べた末にこのモデルへたどり着きました。
社会人にとって腕時計は、身だしなみの一部であり、ちょっとしたステータスでもあります。とはいえ私が重視したのは華やかさよりも、ストレスなく毎日使える実用性のほうでした。サイズ感、着け心地、精度、そして飽きのこないデザイン。この4つを軸に、候補を一本ずつ手に取って絞り込んでいきました。決め手になったのは派手なブランド力ではなく、腕に乗せたときのしっくり来る感覚だったと、今振り返っても思います。
時計は値段が上がるほど候補が増え、迷いも深くなります。だからこそ「自分が本当に求めている条件」をはっきりさせておくことが、後悔しない買い物につながると実感しました。ここでは、当時比較した時計とそれぞれを見送った理由、そして最終的にSBGX055を選んだ本音を、できるだけ正直に書いていきます。
この記事を読むと、グランドセイコー SBGX055を選ぶまでに私が比較した時計と決め手、そして9Fクオーツやザラツ研磨といったグランドセイコーの実力、さらにこのモデルの現在の入手状況がわかります。
高価な時計選びは、候補を絞る段階がいちばん悩ましく、いちばん楽しい時間でもあります。私の選び方が、これから一本目の良い時計を探す方のヒントになればうれしいです。
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まず決めた、時計選びの条件
高い買い物だからこそ、勢いで決めて後悔したくありませんでした。そこで最初に、自分が時計に求める条件をはっきり書き出すことから始めました。
- 実用的であること
- 長く使える飽きのこないデザイン
- 大きすぎない(直径40mm以下)
- 着用感が良い
- ベルトはブレス(金属製)
- 予算は20万円前後
- 日付表示あり
こうした条件に絞り込んだのには、はっきりした理由があります。それまで愛用していた「パネライ ルミノールマリーナ(PAM00111)」が、私には少し大きく、重く、そして日付表示がなかったからです。デザインそのものは今でも大好きなのですが、毎日仕事で使う一本としては、もう少し軽快で実用的なものがほしいと感じていました。
毎日着ける時計こそ、見た目のインパクトより「着けていて疲れないこと」が効いてきます。条件を紙に書き出してみると、自分が本当は何を求めているのかが見えてきました。
候補に挙がった3本と、見送った理由
条件が決まると、候補は自然と絞られてきます。最後まで迷った3本を、率直な感想とともに紹介します。
オメガ シーマスター アクアテラ クオーツ
最初に見に行ったのが「オメガ シーマスター アクアテラ」のクオーツモデルでした。機械式は数年ごとのオーバーホールに思いのほか費用がかかる(パネライの見積もりには正直のけぞりました)ので、まずは維持のしやすいクオーツから検討したわけです。
店頭で実物を手に取った感想は、「悪くない。でも、これだという決め手に欠ける」でした。不満があったわけではありません。ただ、高い買い物なら心から欲しいと思える一本にしたい。そう考えて、ここでは見送りました。
ロレックス エクスプローラー I
次に候補に挙げたのが「ロレックス エクスプローラー I」。新品だと予算を大きく超えるため、中古での購入を前提に検討しました。
昔はサブマリーナにずっと憧れていたのですが、ある時期を境にぱたりと興味が薄れ、シンプルで主張しすぎないエクスプローラーに惹かれるようになりました。年齢を重ねると、流行に左右されず長く使えるデザインを選びたくなるのかもしれません。
デザインも装着感も申し分なく、かなり迷いました。それでも引っかかったのが「中古」という点です。お祝いとして贈ってもらう時計が中古というのは、自分のなかでどうしても折り合いがつきませんでした。新品なら50万円超え。今回は縁がなかったと割り切って断念しました。
オメガ スピードマスター デイト クロノグラフ(3210.50)
最後の最後まで迷ったのが「オメガ スピードマスター デイト クロノグラフ(3210.50)」でした。これは本当にカッコよかった。このスペックのクロノグラフが並行輸入なら20万円前後で手に入るのは、コストパフォーマンスだけで見れば文句なしのベストバイだと思います。
それでも、やめました。理由は一つ、とにかく大きくて重いこと。フェイス直径は約40mm(リューズ除く)、厚さ約15mm、重量は約170gほど。以前持っていたタグ・ホイヤーのカレラも同じくらいの存在感があり、結局その重さで着けなくなった苦い経験があります。同じ轍は踏みたくありませんでした。
そして選んだグランドセイコー SBGX055
あれこれ悩み抜いた末、条件にいちばん素直に合っていたのが「グランドセイコー SBGX055」でした。
当初は価格を抑えて兄弟モデルの「SBGX061」にしようと考えていたのですが、実物を見比べると、SBGX055のシャープな顔つきがどうにも忘れられませんでした。予算は少し上がったものの、どうせ長く使うならと腹を決めて、こちらに決定しました。
SBGX055はグランドセイコーのなかでも標準的なサイズで、ケース径は約37mm、厚さは約10.5mm。手首の細い私にもぴったり収まり、シャツの袖口にもすっと入ります。100m防水でガラスはサファイア、ベルトはステンレスのブレス。これだけ実用的なスペックを備えながら、決して厚ぼったく見えないのが見事だと感じます。
パッと見は、時計に詳しくない人なら普通のセイコーと区別がつかないかもしれません。でも、私にとってはそこがむしろ気に入っている点です。声高に主張しないのに、わかる人にはわかる。腕に乗せた瞬間の収まりの良さ、なめらかに動く太めの針、年差±10秒という精度。そして、何年経っても飽きが来なさそうなシンプルな黒文字盤。地味なようでいて、毎日着けるほどに良さがしみてきます。今ではお守りのような存在で、ほぼ毎日着用しています。
SBGX055の心臓部「9Fクオーツ」とザラツ研磨
せっかくなので、SBGX055の実力を支えている技術にも少し触れておきます。時計選びの参考として、知っておくと判断材料が増えるはずです。
SBGX055が積んでいるのは、グランドセイコー独自のクオーツムーブメント「9Fキャリバー(9F62)」です。9Fは一般的なクオーツとは設計思想がまるで違い、ムーブメント全体を密閉構造のなかに収めることで、ホコリや湿気の侵入を防ぎ、長く高精度を保てるように作られています。年差±10秒という数字は、月差で語られることの多い普通のクオーツとは桁が違う精度です。
もう一つ、グランドセイコーを語るうえで欠かせないのが「ザラツ研磨」と呼ばれる仕上げです。歪みのない平面と、シャープに立ったエッジを両立させる職人の手仕事で、ドイツ語の研磨機の名前が日本でなまって「ザラツ」と呼ばれるようになったといわれています。鏡のように映り込むケースの面と、ピンと張った稜線。SBGX055の「普通に見えて普通じゃない」雰囲気は、この仕上げに支えられています。
ちなみにグランドセイコーは2017年にセイコーから独立した一つのブランドとして展開されるようになり、文字盤の表記も「SEIKO」から「GS(Grand Seiko)」へと改められました。私が手に入れた頃はまだ移行前のモデルにあたりますが、こうした背景を知っておくと、中古市場で年代を見分けるときにも役立ちます。
クオーツだから精度は折り紙つき、機械式のような定期的なオーバーホールの負担も小さい。実用性で時計を選ぶなら、9Fクオーツは有力な候補になります。
参考:Grand Seiko公式|The 9F and 9S calibres
SBGX055は今も買える?現在の入手状況
最後に、これから探す方のために現状を補足しておきます。残念ながらSBGX055はすでに生産終了となっており、現在は新品での入手が難しいモデルです。中古市場や中古を扱う時計店では今でも見かけますが、新品同様の在庫は年々少なくなっています。
同じ顔つきの兄弟モデルだったSBGX061も含め、シンプルな9Fクオーツのラインは世代交代が進んでいます。「このデザインが気に入った」という方は、状態の良い個体を扱う信頼できる中古店をこまめにチェックするのが現実的でしょう。グランドセイコーは正規のサービス体制が整っているので、中古でも一度オーバーホールに出せば長く付き合えます。
もし新品の9Fクオーツを検討するなら、現行のヘリテージコレクションに後継的な位置づけのモデルが用意されています。シャープなケースと年差±10秒の精度というSBGX055の魅力は、しっかり受け継がれています。
まとめ
条件を書き出し、何本も見比べて、最後に選んだのがグランドセイコー SBGX055でした。オメガもロレックスも、それぞれに大きな魅力がありました。それでも私の暮らし方と手首に素直に合っていたのは、派手さのないこの一本だったのです。毎日着けるほどに良さがわかる、というのは大げさでも何でもなく、買って何年経った今もそう感じています。サイズ・着け心地・精度・飽きのこなさという実用性のバランスで選ぶなら、9Fクオーツを積んだSBGX055は今でも十分におすすめできる時計です。
振り返ると、私が時計選びで遠回りしながら学んだのは、スペックやブランドの格よりも先に「自分の生活に合うサイズと重さか」を確かめるべきだ、ということでした。どれだけカッコよくても、大きすぎて着けなくなれば意味がありません。この視点は、これから一本目を選ぶ方にもそのまま当てはまると思います。
SBGX055自体はすでに生産終了で、これから狙うなら中古、もしくは現行の後継モデルが選択肢になります。それでも、グランドセイコーが大切にしてきたザラツ研磨の美しさや9Fクオーツの精度は、現行のラインにもきちんと息づいています。一本目の良い時計をじっくり選びたい方は、ぜひ実物を手に取って、その控えめな存在感を確かめてみてください。きっと、写真だけでは伝わらない作り込みの良さに気づくはずです。
そして最後にもう一度。決して安くない時計を、頑張って選んで贈ってくれた嫁さんに、心から感謝しています。ありがとう。