病院の受付でマイナンバーカードを機械に置いたあと、画面に選択肢が出てきて手が止まったことはありませんか。
私も最初はそうでした。顔認証と暗証番号のどちらを押せばいいのか、そのあとに出てくる「同意しますか」は何に同意させられているのか。後ろに人が並んでいると、とりあえず全部「はい」を押して逃げたくなります。
ややこしいのは、マイナンバーカードを持っているだけでは保険証として使えない点です。手前に「利用登録」というもう一段の手続きがあって、しかもその入口が3つある。ルートによって手元に必要なものが違うので、出先で思い立ってもうまくいかないことがあります。
さらに2026年8月には、登録に使うマイナポータルアプリの名前が「マイナアプリ」に変わりました。検索して出てきた解説とアイコンや画面名が食い違う、というのもここ最近よくある話です。
この記事では、マイナ保険証の利用登録を3つのルートに分けて必要なものを整理し、受診当日に顔認証付きカードリーダーで何を選ぶのか、暗証番号を使わずに済ませる方法までをまとめます。
扱うのは手続きの話だけです。どの病院に行くべきか、どんな治療を受けるべきかといった話には一切触れません。制度側の情報は、厚生労働省とデジタル庁・マイナポータルの公式ページで確認したものだけを載せています。
それと、意外な話が1つ。暗証番号がロックされてしまった状態でも、受付そのものは通せます。知らないと窓口で青くなるところなので、後半で詳しく書きます。
マイナ保険証は登録が必要
まず前提から。マイナンバーカードは、持っているだけでは保険証になりません。
カードのICチップに保険証の情報が焼き込まれているわけではないんです。カード自体は「本人であること」を証明する道具で、保険の資格情報はオンライン資格確認という別の仕組みの側に置かれています。受付でカードを読ませると、その2つがひもづけられて資格が確認される、という流れですね。
そのひもづけを最初に一度だけ作る作業が「健康保険証利用の申込み」、いわゆる利用登録です。
厚生労働省は手順を3段階で説明しています。カードを申請して作る、健康保険証利用を申請・登録する、医療機関や薬局でカードを使って受付をする。真ん中の2番目が抜けたままだと、受付の機械に置いても資格が出てきません。
登録は一度やれば有効で、毎年更新するようなものではありません。転職して保険者が変わっても、利用登録そのものをやり直す必要はありません。
逆に、登録をやめたくなったときは少し面倒です。マイナポータルの側から解除することはできず、加入している保険者(健康保険組合や協会けんぽ、国民健康保険ならお住まいの自治体)への問い合わせになります。入るのはスマホで数分、出るのは問い合わせから…という非対称さは、正直ちょっとモヤッとしますね。
登録できる3つのルート
利用登録の入口は3つあります。マイナアプリ(旧マイナポータルアプリ)、セブン銀行のATM、そして医療機関・薬局の窓口にある顔認証付きカードリーダーです。
どれを選んでも結果は同じ。違うのは「手元に何が必要か」だけです。
マイナアプリから登録する
自宅で終わらせたいならこれが最短ルートです。
用意するのはマイナンバーカードの実物と、利用者証明用電子証明書のパスワード(数字4桁)。アプリでログインしたあと、ホームの「証明書」エリアにある「健康保険証」のページから登録します。
注意したいのはアプリの名前です。2026年8月、マイナポータルアプリはデジタル認証アプリの仕組みを取り込んで「マイナアプリ」になりました。既存のアプリがそのまま更新される形なので入れ直しは不要ですが、ネット上の古い解説とは画面の呼び方が合わないことがあります。
もう一点。この場面で必要なのはカードの実物です。スマホに搭載した電子証明書だけでは、カードの読み取りを求められる操作は通りません。
セブン銀行ATMで登録する
スマホの操作が苦手な家族に頼まれたときは、私はこちらを勧めています。
必要なのはマイナンバーカードと、利用者証明用パスワード(4桁)。健康保険証そのものは要りません。セブン銀行の案内にも「ATMの操作に健康保険証は不要です」と明記されています。
受付は原則24時間。ただしシステムメンテナンスの都合で、午前3時から6時のあいだの取引は午前6時以降の完了予定になります。深夜に駆け込む理由はそうないと思いますが、頭の片隅に置いておくと安心です。
ATM側でマイナンバー(12桁の番号)自体を取り扱うことはない、とも書かれています。人前で番号を入力させられるのでは、という心配は要りません。
参考:セブン銀行の案内
医療機関の窓口で登録する
3つめは、受診したその場で済ませてしまう方法です。
医療機関や薬局の受付にある顔認証付きカードリーダーにカードを置き、画面の案内どおりに進めるだけ。登録と受付を同じ流れでこなせるので、「登録をまだやっていなかった」と気づいた当日でも間に合います。
そして、この窓口ルートが3つの中でいちばん軽い。暗証番号を入れる方法だけでなく、機器による顔認証や窓口職員の目視による顔確認でも申込みができるとされています。
暗証番号なしのカードは窓口だけ
暗証番号の管理が不安な人向けに、そもそも暗証番号を設定しない「顔認証マイナンバーカード」という選択肢が用意されています。利用者証明用電子証明書を使うときの本人確認を、顔認証か目視に限定したカードです。
このカードを使っている場合、登録ルートは実質1つに絞られます。パスワードが使えないため、マイナポータルとセブン銀行のATMでは健康保険証利用の登録ができません。医療機関の顔認証付きカードリーダー、または市区町村の窓口での申込みになります。
暗証番号なしのカードを選ぶと、登録は医療機関か役所の窓口で行うしかない、と覚えておいてください。
受診当日に押す選択
登録が済んでいれば、当日やることは驚くほど少ないです。カードを置く、本人確認をする、同意を選ぶ。これで終わりです。
とはいえ、この「本人確認」と「同意」の2か所で画面に選択肢が出るので、初見だと迷います。何を選んでいるのかを先に知っておけば、後ろの列を気にせず進められます。
顔認証か暗証番号かを選ぶ
顔認証付きカードリーダーの場合、本人確認の方法は2つです。
- 顔認証:カードのICチップ内の顔写真データと、窓口で撮影した顔を比べる
- 暗証番号:4桁の数字(利用者証明用)を自分で入力する
私はいつも暗証番号を選んでいます。マスクをしたままだと顔認証が通らないことがあって、外して撮り直すのが地味に面倒だからです。逆に番号を思い出せないなら顔認証のほうが早い。どちらを選んでも構いません。
顔認証で気になるのが撮影された画像の扱いですが、厚生労働省は撮影画像のデータは即時削除され、顔画像のデータが保存されることはないと説明しています。
なお、顔認証機能のない汎用カードリーダーが置かれている場合は、4桁の暗証番号を入力するか、窓口職員の目視確認で本人確認をする形になります。
子どものカードを親が代わりに出すケースもあります。代理人がカードをリーダーに置いて暗証番号を入力することで本人確認ができる、とされています。
情報提供に同意するか選ぶ
本人確認が終わると、次に「同意しますか」という画面が出ます。
これは受診してよいかを聞かれているわけではありません。過去の診療や薬剤の情報、特定健診等の情報を、その医療機関の医師や薬剤師が見てよいかを確認しているものです。同意するかどうかは任意で、断っても受付そのものは通ります。
同意しておくと手間が減る場面もあります。マイナ保険証で受付をすると、限度額適用認定証や特定疾病療養受療証などの持参が不要になるとされています。あらかじめ紙をもらっておく手続きを省ける、という話ですね。
どこまで同意するかは自分で決めることです。画面の内容を見て判断してください。この記事では制度の説明にとどめておきます。
参考:厚生労働省の解説ページ
暗証番号を使わない受付
4桁の暗証番号は、3回続けて間違えるとロックされます。役所の窓口かコンビニのキオスク端末で再設定するまで使えません。
では、ロックされた状態で病院に行ったらどうなるか。受付できずに引き返すしかない…と思いますよね。
そうではないんです。厚生労働省は、暗証番号がロックされた場合でも、顔認証付きカードリーダーでの顔認証、または窓口職員による目視確認で本人確認が可能だと案内しています。顔認証に失敗したときは4桁の暗証番号へ、暗証番号が使えないときは顔認証か目視へ。ちゃんと逃げ道が用意されています。
ですから「番号が分からないからマイナ保険証は無理だ」と諦める必要はありません。受付でその旨を伝えれば済みます。
ただし、これは受診の受付に限った話です。マイナポータルへのログインやコンビニでの証明書交付には暗証番号が必要なので、ロックの解除自体はどこかで済ませておきましょう。
証明書が切れた後の3か月
もう一つ、あまり知られていない扱いがあります。
カードに入っている利用者証明用電子証明書には有効期限があり、期限が来る3か月前から市区町村の窓口で更新手続きができます。案内が届いたのに後回しにして、うっかり失効させてしまう人はそれなりにいます。
失効したら保険証としても即アウト…ではありません。厚生労働省は、失効した場合でも3か月間は健康保険証として利用できるとしています。この期間は保険資格の情報だけが共有される扱いです。
とはいえ3か月は猶予にすぎません。更新の案内が郵送で届いたら、その週のうちに予定を入れてしまうのがいちばん確実です。
資格確認書との関係
マイナ保険証の話をすると必ず出てくるのが「資格確認書」です。
これは、有効なマイナンバーカードを持っていない人や、健康保険証利用の登録をしていない人に交付される書類です。当分の間は申請不要・無償で交付され、窓口に出せば従来と同じように保険診療を受けられます。
混同されやすいのが「資格情報のお知らせ」。こちらはマイナ保険証を持っている人に対して、自分の被保険者資格を簡単に把握できるように交付される補助的な書類で、役割がまったく違います。
つまり、マイナ保険証を使う人にとって資格確認書は「持っていない人向けの代替手段」という位置づけです。両方を毎回持ち歩く必要はありません。
ただし、配慮が必要な方については申請によって交付される仕組みもあります。自分がどの扱いになるかは、加入している保険者に確認するのが確実です。ここは保険者ごとに運用が分かれるところなので、ネットの情報だけで決めないほうがいいですね。
スマホだけで受診できるか
では、スマホに搭載したマイナンバーカードだけで受診できるのでしょうか。
答えは「できる。ただし対応している医療機関だけ」です。2025年9月19日から、準備の整った医療機関・薬局で順次利用できるようになりました。全国一斉ではなく、機器がそろった施設から順番に、という進み方です。
先に必要な準備
スマホをマイナ保険証として使うには、事前の設定が必要です。厚生労働省が挙げている必要物はこちら。
- 実物のマイナンバーカード
- 最新のマイナポータルアプリ(現在のマイナアプリ)
- 署名用パスワード(英数字6〜16文字)
- 券面入力用暗証番号(数字4桁)※iPhoneのみ
そのうえで「マイナンバーカードをスマートフォンに追加する」設定と、スマートフォンのマイナンバーカードの利用登録を済ませておきます。
ここでも実物のカードが登場するのがミソです。スマホに入れたからカードは引き出しの奥へ、とはいきません。
iPhoneとAndroidで違う手順
当日の操作は、途中で機種によって分かれます。
共通するのは最初の2ステップです。顔認証付きカードリーダーで「スマートフォンを利用」を選び、続いて端末の種類(iPhoneかAndroid)を選びます。
次が分岐点。iPhoneはApple Walletを立ち上げてマイナンバーカードを表示し、Face IDもしくはTouch IDで認証します。Androidは顔認証付きカードリーダーの画面で、4桁の暗証番号(スマホ用利用者証明用電子証明書)を入力します。
そのあとはまた共通です。スマホ用の汎用カードリーダーに端末を1〜2秒ほどかざし、最後に顔認証付きカードリーダーで医療情報提供の同意を入力して完了します。
iPhoneは端末側で生体認証、Androidはリーダー側で番号入力。ここを知らずに「Androidなのに指紋認証を求められない」と戸惑う人がいるので、先に押さえておくと落ち着いて操作できます。
対応施設を先に調べる
これがけっこう大事です。
スマホ対応は医療機関側が任意で導入するものなので、いつも行く病院が対応しているとは限りません。厚生労働省のサイトには、地域や施設の条件を設定して、スマートフォンのマイナ保険証として利用できる病院・診療所・歯科診療所・薬局を検索できるページがあります。受付にステッカーが貼られている施設もあります。
私のおすすめは、当面のあいだは実物のカードも財布に入れておくことです。スマホだけで出かけて対応していなかったときの立ち往生が、いちばん面倒ですから。
参考:厚生労働省の案内ページ
まとめ
マイナ保険証は、登録さえ済んでいれば受付は数十秒で終わります。
要点を並べておきます。カードを持っているだけでは保険証にならないので、まず利用登録をする。入口はマイナアプリ、セブン銀行ATM、医療機関の顔認証付きカードリーダーの3つで、必要なものはルートごとに違います。
アプリとATMは4桁のパスワードが要りますが、医療機関の窓口なら顔認証や目視での申込みもできます。暗証番号を設定していない顔認証マイナンバーカードの場合は、窓口ルートしか使えません。
当日に画面で選ぶのは2か所だけ。顔認証か暗証番号かという本人確認の方法と、過去の診療・薬剤情報などを見てよいかという同意です。同意は任意で、断っても受付は通ります。
そして、暗証番号がロックされていても顔認証か目視で受付できる。電子証明書が失効しても3か月は保険証として使える。この2つを知っているだけで、窓口での不安はだいぶ減るはずです。
マイナ保険証でつまずく場所は「登録がまだ」と「暗証番号が分からない」の2つに集約されていて、どちらにも医療機関の窓口で顔認証か目視という逃げ道が用意されています。
私が一番すすめたいのは、次に病院や薬局へ行くときにカードを持っていって、その場で登録まで済ませてしまうことです。私も自宅でアプリと格闘して手が止まり、結局は窓口で片づけました。受付の人が横で見てくれるので、こちらのほうが早いです!
制度側の仕様は今も動いています。アプリの名前が変わったのはつい先月ですし、スマホ対応の施設も増えている途中です。2026年9月の時点ではこの記事のとおりですが、しばらく間があいたら、厚生労働省とマイナポータルの公式ページで最新の状態を確かめてから動くのが確実です。