『トイ・ストーリー』を本物のおもちゃを使って全編まるごと実写で再現した動画があるのをご存じでしょうか。タイトルは「Live Action Toy Story(リブ・アクション・トイ・ストーリー)」。アメリカ・アリゾナ州の若者2人が、市販のおもちゃと実写の人間を組み合わせ、80分超のオリジナル版『トイ・ストーリー』をほぼワンカットずつ再現したファン制作の動画です。
2013年にYouTubeへ投稿されると瞬く間に拡散し、今では再生回数5,000万回を超える“伝説のファン動画”になっています。当サイトでも昔この動画を紹介したのですが、その後「YouTubeで見られなくなった」状態が長く続いていました。ところが調べ直してみると、現在はちゃんとYouTubeで観られる状態に戻っています。
そこでこの記事では、この動画が今どこで観られるのか、誰がどうやって作ったのか、どんな手間と時間がかかっているのか、そしてディズニー/ピクサー側の反応はどうだったのかを、裏取りできた範囲であらためて整理してみます。読み終わるころには、「ただのモノマネ動画」では片づけられない、その作り込みのすごさが伝わるはずです。
ちなみに私自身は『トイ・ストーリー』シリーズが昔から好きで、この動画を初めて観たときは「ここまでやるか」と笑ってしまった記憶があります。CGで描けば一瞬のところを、わざわざ本物のおもちゃを少しずつ動かして撮る。その遠回りっぷりこそが、この動画のいちばんの魅力だと思っています。観たことがない方は、ぜひこの機会に存在だけでも知っておいてください。
「Live Action Toy Story」は今もYouTubeで観られます
結論から言うと、「Live Action Toy Story」は現在もYouTubeで公開されており、無料で全編を視聴できます。制作者本人たちのチャンネル「JP and Beyond」で公開されている動画です。
過去に当サイトで紹介したときは、一時的にYouTube上で見られなくなっていたため、別サービス(Dailymotion)の不完全な動画にリンクを差し替えていました。ただ、そちらはあくまで非公式かつ全編ではなかったので、今となってはおすすめできません。
あらためて公式チャンネルの動画を確認したところ、80分超の本編がフルで残っていました。再生回数も着実に伸び続けていて、すっかり“ネットの定番動画”として定着した印象です。せっかく観るなら、作り手本人が公開している正規の動画を選ぶのが安心ですし、彼らの活動を応援することにもなります。
なお、過去にこの動画が一時的に見られなくなったのは、権利関係の事情によるものとみられます。現在は本人チャンネルで公開が続いていますが、配信状況は将来また変わる可能性もある点だけ頭の片隅に置いておくとよいでしょう。
出典・参考リンク:Live Action Toy Story(YouTube・JP and Beyond)
作ったのはアリゾナの若者2人。きっかけは「1シーンだけ」のはずだった
この動画を作ったのは、アメリカ・アリゾナ州に住むジョナソン・ポーリー(Jonason Pauley)さんとジェシー・ペロッタ(Jesse Perrotta)さんという2人の友人です。制作を本格的に始めたのは2010年の夏。当時はまだ10代で、特別な機材も予算もない、ごく普通の映画好きだったそうです。
もともとは「『トイ・ストーリー』の1シーンだけを実写でやってみよう」という軽い思いつきがスタートでした。それがいつの間にか「どうせなら全部やろう」とエスカレートし、結果的に本編まるごとを再現する一大プロジェクトになってしまった、という経緯です。動機を聞かれたポーリーさんが「なぜって? やらない理由がないでしょ(=自分で観たかったし、映画制作の経験を積みたかった)」と答えていたのが、いかにもこの企画らしいなと思います。
使った道具はごく普通の家庭用カムコーダーと、編集ソフトのAdobe Premiere Pro。出演している人間キャストや手伝いは、友人や近所の人たち。資金も友人や家族から少しずつ借りてまかなったそうで、全体の費用は1,000ドル程度だったと伝えられています。プロの撮影スタジオも、潤沢な予算も、一切ない。文字どおりの手作り企画です。
こうして並べてみると、特別な才能や環境よりも「最後までやり切るかどうか」がいちばん効いている企画だと感じます。10代のうちにこれだけのものを完成させた事実だけでも、十分すごい話です。
出典・参考リンク:Pixar Post(制作者本人へのインタビュー)
本物のおもちゃ+コマ撮りで再現。約2年がかりの執念
この動画のすごいところは、ウッディやバズといったキャラクターを実際の市販おもちゃを使い、コマ撮り(ストップモーション)やワイヤー・糸で動かして再現している点です。CGでそれっぽく描いたのではなく、現実のおもちゃを少しずつ動かして撮っているわけです。
制作の進め方も地道でした。ポーリーさんが全シーンとロケ地を書き出し、ペロッタさんが元の映画を1ショットずつ見ながら、小道具やキャラクターの位置を細かくメモ。撮影中はiPadで本編を再生し、シーンごとに一時停止しては同じ画づくりを再現していったといいます。これを延々と繰り返し、完成までにおよそ2年。編集も撮影と並行して進めていたそうです。
音声には元の映画のオリジナル音源をそのまま使っているため、トム・ハンクスやティム・アレンといったお馴染みの声に、自分たちで作った映像がぴたりとはまります。海外メディアには「観ているうちに、これが本物じゃないことを忘れてしまう」と評されたほどで、カーチェイスのシーンなどは特に完成度が高いと話題になりました。
この“身近にあるもので名作映画をまるごと作り直す”やり方は、海外では映画『僕らのミライへ逆回転』で広まった「sweded(スウェード)」と呼ばれるファン文化の流れにあるものです。手づくり感を逆手に取った愛のあるリメイク、と言えばイメージしやすいでしょうか。
出典・参考リンク:It’s Nice That(Live Action Toy Story 紹介記事)
公開直後に大バズり。ピクサー側の反応は?
2013年1月12日にYouTubeへ投稿されると、反響はすさまじいものでした。公開から24時間で25万回以上、2日で170万回、3日目には300万回を突破。2週間後には800万回を超え、YouTubeのトップページにも掲載されました。Yahoo!やハフィントンポスト、ABCニュースといった大手メディアにも次々と取り上げられています。
気になるのは「権利元のディズニー/ピクサーは怒らなかったのか?」という点ですよね。これについては、原作『トイ・ストーリー』の編集を手がけ、『トイ・ストーリー3』の監督も務めたリー・アンクリッチ氏が、この動画を「とても熱心な(VERY dedicated)」グループの作品だとSNSで言及したことが伝わっています(投稿自体は後に削除)。少なくとも、頭ごなしに潰されるどころか、作り手側からも一目置かれる存在になったわけです。
その後もこの動画は削除されることなく公開が続き、長い年月をかけて再生回数を伸ばし続けています。最近の情報では累計5,000万回以上に達しているとされ、ファン制作動画としては破格の数字です。なお、ここでお伝えしている数字は時期によって変動しますので、最新の状況は実際の動画ページでご確認ください。
出典・参考リンク:Live Action Toy Story – Wikipedia
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まとめ:手作りの執念が詰まった“もう一つのトイ・ストーリー”
あらためて整理すると、「Live Action Toy Story」は、アリゾナの若者2人が本物のおもちゃとコマ撮りで約2年がかりにオリジナル版『トイ・ストーリー』を全編再現した、現在もYouTubeで観られるファン制作動画です。
「1シーンだけ」のはずが本編まるごとに膨らみ、ほぼ無予算・手作りでここまでやり切った執念には、ただただ脱帽してしまいます。元の映画の音源とぴたりと合う映像を眺めていると、子どものころにおもちゃで自分だけの物語を作って遊んだ感覚を思い出すような、不思議な温かさもあります。プロが作った完璧なアニメとは別の方向の“良さ”が、たしかにここにはあります。
権利元から削除されるどころか、原作スタッフからも一目置かれ、10年以上たった今も公開が続いている。ファン制作の動画としては、ちょっと例を見ない幸福な歩み方だと思います。好きなものを、損得抜きでとことん形にする。その熱量がたくさんの人に届いた好例として、個人的にも応援したくなる一本です。
『トイ・ストーリー』が好きな方はもちろん、ものづくりやストップモーションに興味がある方にもおすすめできます。1時間以上と少し長めですが、元の映画と見比べながら、どこをどう再現しているのか探す楽しみ方もできますし、お子さんと一緒に「これ全部おもちゃで撮ってるんだよ」と話しながら観るのも面白いはずです。気が向いたらぜひ本編をのぞいてみてください。