なぜ信号は緑なのに「青信号」と呼ぶ?日本だけの不思議な呼び方を解説

どこまでも続く青信号の信号機が立ち並ぶ道路

「ねえ、なんで青信号なの?どう見ても緑じゃん」

子どもにそう聞かれて、言葉に詰まった経験はありませんか。私も以前、甥っ子に同じ質問をされて「えっと…昔からそう言うんだよ」と、われながら情けないごまかし方をしてしまいました。Web制作の仕事で25年も色と付き合ってきたくせに、これはちょっとカッコ悪い。

言われてみれば、本当に不思議です。信号機を見上げても、進めの色は明らかに緑寄り。なのに私たちは何の疑問もなく「青」と呼びます。赤は赤、黄は黄と素直に呼ぶのに、緑だけがなぜか「青」に格上げされている。

しかもこれ、ただの口グセではありません。実は日本の法律にも、はっきり「青色の灯火」と書かれているんです。気分や方言の話ではなく、国が公式に「青」と決めている。謎はますます深まりますよね。

この記事では、緑色に見える信号をなぜ日本人が「青信号」と呼ぶのかを、言葉の文化・法律・信号機そのものの歴史という3つの角度からたどっていきます。先に結論を言うと、答えのカギは「日本語の『青』がカバーする範囲が、ほかの国の言葉よりずっと広い」という点にあります。

読み終わるころには、いつもの通勤路の信号が少し違って見えるはず。さっそく見ていきましょう。

そもそも信号の色は「緑」なのか「青」なのか

まずは素朴な事実から確認します。

信号機の進めの色――横型ならいちばん右、縦型ならいちばん下に光るあの色。目を凝らして見れば、多くの人は「やっぱり緑だよな」と感じると思います。実際、信号機は長いあいだ緑系の色として作られてきました。

ところが呼び方は、北海道から沖縄までどこへ行っても「青信号」。「緑信号」と口にする人に、私はこれまでの人生でほとんど出会ったことがありません。

つまり「色は緑寄り、呼び名は青」という、見た目と言葉のねじれが全国規模で起きている。これが今回の謎の正体です。

なぜ緑を「青」と呼ぶ?カギは日本語の「青」の広さ

結論から言うと、日本語の「青」という言葉が、もともと指す範囲がとても広いからです。

大阪府警の公式サイトでも、緑なのに青と呼ぶ理由として、色の三原色(赤・青・黄)に対応させてわかりやすくしたこと、そして日本では古くから緑色のものを「青」と表現してきた習慣があることが挙げられています。

赤の反対側にある「進め」の色を、三原色の一つである「青」と呼んだほうが、誰にとっても直感的でわかりやすかったというわけですね。

「青リンゴ」「青菜」…身の回りは青だらけ

この「緑を青と呼ぶ」習慣、よく考えると私たちの暮らしのあちこちに残っています。

青リンゴ、青菜、青葉、青々とした芝生、青虫。どれも実際の色は緑ですよね。それでも私たちは違和感なく「青」と呼んでいます。

信号機だけが特別なのではなく、もともと日本語は緑と青の境目がゆるやかなんです。「青信号」はその文化の延長線上にある、ごく自然な呼び方だったわけです。

ちなみに英語では信号の進めは green(グリーン)。緑は緑、青は blue とはっきり分けます。日本のように堂々と「青」と呼ぶのは、世界的に見るとなかなか珍しい感覚なんですね。

法律にも「青色の灯火」と書いてある

面白いのは、この口グセが法律にまで昇格していることです。

もともと日本の法令では、進めの色は「緑色信号」と表記されていました。ところが「青信号」という呼び方が世間にすっかり定着したため、戦後の法改正で表記そのものが「青色」へと改められたと紹介されています(1947年とされています)。

現在も、法令では進めの色を「青色の灯火」と記しています。国民の言葉づかいが先にあって、後から法律のほうがそれに合わせた、という順番です。

ルールが現実を変えたのではなく、現実がルールを動かした。個人的には、この逆転がいちばんの「へぇ」ポイントでした。

参考: 大阪府警察の公式FAQ

信号機はいつ日本に来た?ちょっと寄り道

呼び名の話のついでに、信号機そのものの歴史も少しだけのぞいてみましょう。これがまた面白いんです。

そもそも世界で初めての灯火式信号は、1868年にイギリス・ロンドンに設置されたものだとされています。当時は電気ではなくガス灯式で、係員が手で切り替えていたというから驚きです。便利どころか、なかなか手のかかる装置だったんですね。

参考: 福岡県警察の資料(PDF)

日本第1号は東京・日比谷

日本初の自動式信号機がお目見えしたのは、1930年3月23日のこと。東京・日比谷の交差点に、アメリカから輸入された赤・黄・緑の3色式が設置されました。

つまり日本の信号機は、最初からアメリカ生まれ。輸入されたときは「緑」だった色を、日本人が自分たちの言葉の感覚で「青」と呼び替えていった――そう考えると、なかなか味わい深い話だと思いませんか。

外国から来たものを、いつのまにか自分たちの文化になじませてしまう。日本人らしいといえば、らしいエピソードです。

参考: 日本初の信号機に関する解説記事

そもそも、なぜ赤・黄・緑の3色なの?

ここで素朴な疑問がもう一つ。そもそも、なぜ信号は赤・黄・緑なのでしょう。

JAF(日本自動車連盟)によると、信号の色はCIE(国際照明委員会)によって規定されており、交通信号機には赤・黄・緑の3色が割り当てられています。世界共通のルールがちゃんと土台にあるわけです。

赤が「止まれ」なのは、波長が長く遠くまで届きやすいうえ、人間が本能的に危険を感じやすい色だから、という説明をよく見かけます。たしかに、危険信号や非常ボタンが赤いのも納得ですよね。

黄色は赤と緑の中間に位置し、雨や霧で視界が悪いときでも比較的判別しやすいことから、注意を促す色として採用されたと考えられています。

つまり3色は、見た目の気分で選ばれたのではなく、「遠くからでも、悪天候でも、確実に見分けられること」を突き詰めた結果なんですね。色を扱う仕事をしている身としては、ここはぐっとくるポイントです。

参考: JAFのクルマ何でも質問箱

実は信号の「緑」も、だんだん青に近づいている

もう一つ、見逃せない事実があります。

「青と呼ぶのは言葉のあやで、本物はずっと緑のまま」――そう思っていませんか。私もそう思い込んでいました。ところが、信号機そのものの色も少しずつ改良が進められてきたのです。

大阪府警の説明によれば、法令で「青色」と呼ぶようになったのに合わせて、信号機の色も改良が重ねられ、青色寄りの灯火になってきたとされています。

近年はLED化も一気に進みました。最近の信号が以前よりくっきり鮮やかに見えるのは、このLED化のおかげです。色も、純粋な緑というより少し青みを帯びた緑に寄ってきました。

呼び名に実物が歩み寄ってきている、というわけです。言葉が先で、モノが後から追いかける。なんだか律儀で、ちょっと微笑ましい話だと思いませんか。

関連記事:なぜ照明を暗くする?どうして往復で時間が違う?飛行機に関するJALの豆知識

まとめ

緑色に見える信号を、なぜ日本人が「青信号」と呼ぶのか。その理由をたどってきました。

ポイントを振り返ると、こうなります。日本語の「青」はもともと緑までカバーする幅広い言葉で、青リンゴや青菜のように緑を青と呼ぶ習慣が昔からあった。だから進めの色も自然と「青」と呼ばれ、その呼び名が定着した結果、法律の表記まで「青色の灯火」に変わっていった。

つまり「青信号」は間違いでも勘違いでもなく、日本語と日本文化が育てた、れっきとした正式名称なのです。

さらに信号機自体もLED化とともに改良が進み、実物の色も少しずつ青寄りに近づいてきました。言葉とモノが、長い時間をかけて歩み寄ってきたわけです。

こういう話を一つ知っておくと、毎日の信号待ちがちょっと楽しくなります。今度子どもに「なんで青なの?」と聞かれたら、私はもう堂々と答えられます。あなたもぜひ、家族や友人に披露してみてください。「実は法律にも青って書いてあるんだよ」と話したら、一目置かれる…かもしれません。