転入届を出して、マイナンバーカードの裏に新しい住所を書き足してもらえば、役所での手続きはひとまず終わりです。ところが数日後、スマホでマイナポータルを開こうとすると、マイナアプリに「マイナンバーカードは利用できません」と出る。スマホにマイナンバーカードを入れている人が、引っ越しのあとに出くわしやすい場面です。
住所が変わると、スマホに入れたマイナンバーカードはiPhoneでもAndroidでも止まるので、転入先の窓口で実物のカードの住所変更と署名用電子証明書の発行を済ませてから、マイナアプリの「利用を再開」で入れ直します。
署名用電子証明書には、住所が変わると失効する決まりがあり、スマホ側もそれに合わせて止まる仕組みです。窓口で片づくのは実物のカードの手続きまでで、スマホのほうは、あとから自分のマイナアプリで戻します。
戻すときに聞かれるのは、実物のカードの4桁の暗証番号と、英数字6〜16文字の署名用パスワードの2つ。私はこの2つをよく取り違えていて、マイナアプリで署名用パスワードを求められた画面で、4桁の数字を打ちかけたことが何度かあります…。引っ越しでは窓口で署名用電子証明書を発行し直すので、署名用パスワードもそこで新しく決めます。
Androidは2026年10月20日に「Androidのマイナンバーカード」へ切り替わり、再開の手順もこの新しい仕組みの画面で進みます。
住所が変わると止まるもの、止まらないもの
実物のカードには、電子証明書が2種類入っています。住所が変わったときの扱いは、この2つで分かれます。
- 署名用電子証明書(英数字6〜16文字のパスワード)=住所や氏名が変わると失効する
- 利用者証明用電子証明書(数字4桁の暗証番号)=住所が変わっても、有効期限までそのまま使える
署名用は、オンラインの申請に「本人が出した書類です」と電子署名をするためのものです。署名の中に住所や氏名が入っているので、住所が変わると古い証明書は使えなくなります。一方の利用者証明用は「本人がログインしている」ことを示すだけなので、引っ越しでは失効しません。マイナポータルへのログインのように利用者証明用で済む手続きなら、実物のカードで続けられます。
スマホのほうはもう少し厳しくて、iPhoneのマイナンバーカードは、氏名や住所を変えたときに丸ごと使えなくなります。デジタル庁のよくある質問でも、「iPhoneのマイナンバーカードは利用できません」と表示される理由の1つ目に、氏名や住所の変更が挙がっています。Androidも同じで、氏名や住所の変更、有効期限の満了、紛失・盗難の場合に利用できなくなることがある、と案内されています。
つまり、引っ越したあとは、ログインもマイナ保険証も、スマホだけでは済ませられない期間ができるということ。病院の受付でスマホをかざして初めて気づく、という形は避けたいので、窓口の手続きとスマホの入れ直しはセットで考えておきます。
引っ越す前に確かめておくこと
マイナポータルの引越しワンストップサービスを使うと、今の市区町村への転出届をオンラインで出せます。このとき、署名用電子証明書が有効なことと、2つの暗証番号の両方が必要です。
住所が変わったあとでは署名用が失効しているので、オンラインの転出届は、引っ越す前の今の住所にいるうちに出すしかありません。転入届のほうは、オンラインで転出届を出した場合でも、引っ越し先の窓口へ行って出す必要があります。
あわせて、窓口とスマホの両方で使う暗証番号を確かめておきます。
- 数字4桁の暗証番号=転入先の窓口で、カードを使い続ける手続き(継続利用)のときに入力する
- 英数字6〜16文字の署名用パスワード=オンラインの転出届と、スマホのマイナンバーカードを戻すときに使う
忘れていたら、住民票のある市区町村の窓口で設定し直せます。転入届を出したあとなら、それは転入先の窓口なので、継続利用と同じ日にまとめて頼めます。
もう1つ大事なのが期限。次のどれかに当てはまると、マイナンバーカードそのものが失効して、有料の再発行になることがあります。
- 新しい住所に住み始めてから14日以内に転入届を出さなかった
- 転出届で届け出た転出予定日から30日以内に転入届を出さなかった
- 転入届を出したあと90日以内に、カードの住所変更(継続利用)をしなかった
スマホの入れ直しには期限がありませんが、順番は実物のカードの手続きが先。カードが失効すると、スマホに戻す元がなくなってしまいます。
参考:引っ越しの際はマイナンバーカードも変更手続きを(神奈川県)
転入先の窓口でやる3つの手続き
窓口でやることは3つで、順番が決まっています。同じ市区町村の中での引っ越しなら、転入届が転居届に替わるだけで、流れは同じです。
- 転入届(同じ市区町村の中なら転居届)を出す
- マイナンバーカードの継続利用の手続きをする。カードの追記欄に新しい住所が書き足され、数字4桁の暗証番号を入力する(顔認証マイナンバーカードは入力不要)
- 署名用電子証明書を発行し直す。新しい署名用パスワード(英数字6〜16文字)を決める
署名用電子証明書は、継続利用の手続きが済んだあとでないと発行できません。2と3は同じ日に続けてできるので、転入届のときに「署名用電子証明書もお願いします」と伝えておくのが確実です。

家族が代わりに転入届を出す場合は、同じ世帯の人なら、本人が暗証番号を書いた委任状を封をして渡すことで継続利用までできることがあります。同じ世帯でない代理人だと、その場では継続利用ができず、あとで届く照会書を使う流れになる自治体もあります。署名用電子証明書の発行は原則として本人の手続きなので、本人が行ける日に合わせるのが無難でしょう。
3で決めた署名用パスワードは、このあとスマホを戻すときにすぐ使います。窓口で決めたら、その場で控えておいてください。
スマホのマイナンバーカードを入れ直す手順
実物のカードの住所変更と署名用電子証明書の発行が済んだら、スマホに戻します。使うのはマイナアプリと実物のカードで、窓口へもう一度行く必要はありません。
用意するものはどちらも同じです。
- マイナアプリ(2026年8月25日にマイナポータルアプリから名前が変わったもの)
- 実物のマイナンバーカード
- 券面事項入力補助用暗証番号(数字4桁)
- 署名用パスワード(英数字6〜16文字。窓口で決め直したもの)
iPhoneの場合
- マイナアプリを開き、ホームの「マイナンバーカードは利用できません」の案内から[利用を再開]をタップする
- 本人確認のため、画面の指示に従って顔の動きを撮影する
- 実物のカードの券面事項入力補助用暗証番号(数字4桁)を入力する
- 実物のカードの署名用パスワード(英数字6〜16文字)を入力する
- iPhoneの背面上部を実物のカードにぴったり合わせて、[読み取り開始]をタップする
- 「完了」と出たらカードを外し、利用できるようになるまで待つ
利用できるようになると、ウォレットアプリから通知が届き、マイナアプリのカード画面に「利用可能」と表示されます。朝8時から19時30分のあいだに手続きすればおおむね数分後、19時30分を過ぎたら翌朝8時以降です。通知が来てから実際に使えるまで、さらに5分ほどかかります。
参考:iPhoneのマイナンバーカードの利用を再開する方法(デジタル庁)
Androidの場合
Androidは手順が長めで、途中で新しい暗証番号を2つ決めます。用意するものに、Googleウォレットとおサイフケータイのアプリも加わります。
- マイナアプリを開き、画面下の[カード]→[Androidのマイナンバーカード]→[利用を再開]をタップする
- [はじめる]をタップし、用意するものと手順を確認して、利用規約に同意する
- 顔の動きの撮影を求められたら撮影する
- 実物のカードの券面事項入力補助用暗証番号(数字4桁)を入力する(求められない場合もある)
- 実物のカードの署名用パスワードを入力し、スマホの上部をカードに合わせて読み取る
- Androidのマイナンバーカード用の利用者証明用暗証番号(数字4桁)を新しく決める
- Androidのマイナンバーカード用の署名用パスワード(英数字6〜16文字)を新しく決める
- マイナアプリから準備完了の通知が届いたら、残りの手順に進む(もう一度カードの読み取りを求められることがある)
- 顔や指紋など、端末のロックを暗証番号の代わりに使う設定をする
6と7で決めるのは、スマホの中のマイナンバーカード専用の暗証番号です。実物のカードの暗証番号とは別ものです。
待ち時間はiPhoneと同じで、朝8時から19時30分なら数分後、それ以降なら翌朝8時以降。マイナアプリの[カード]の画面で「追加済」と出れば完了で、そこから5分ほどで使えるようになります。
新しいスマホにマイナンバーカードを入れるときも、カードと暗証番号の組み合わせはほぼ同じです。
Androidは10月20日から「Androidのマイナンバーカード」に
2023年5月から続いてきた「スマホ用電子証明書搭載サービス」は、2026年10月20日に「Androidのマイナンバーカード」へ刷新されました。上の手順も、新しい仕組みの画面で案内されているものです。
新しくなって増えたのは、Googleウォレットにマイナンバーカードを入れて表示できることと、対応機種なら氏名や住所などの情報をそのまま手続きに連携したり、対面での本人確認に使えたりすることの2つです。端末によっては一部の機能しか使えない「機能限定」になり、マイナアプリの[カード]やGoogleウォレットのカードの左上に「機能限定」と表示されます。
これまでのスマホ用電子証明書をまだアップデートしていなくても、今まで使えた場所ではそのまま使えます。アップデートしても、前に決めた2種類のパスワードは変わりません。引っ越しで止まったスマホを戻す手順も、デジタル庁の案内では新しい「Androidのマイナンバーカード」の画面で進みます。
参考:スマホ用電子証明書をAndroidのマイナンバーカードにアップデートする方法(デジタル庁)
うまく戻らないときに見るところ
[利用を再開]が出ない、または途中で失敗するときは、まず実物のカードの手続きが終わっているかを確かめます。継続利用だけ済ませて、署名用電子証明書を発行し直していないと、スマホは戻せません。マイナアプリで署名用パスワードを入れても進まないなら、このケースを疑います。
暗証番号とパスワードの両方を忘れたときは、住民票のある市区町村の窓口でリセットします。引っ越したあとなら、転入先の窓口です。
夜に手続きして、翌朝になっても使えないなら、マイナアプリのホームに「残りの追加手順を完了してください」と出ていないかを見てください。Androidは、通知のあとにもう一度本人確認を求められることがあります。
電子証明書の有効期限がちょうど切れる時期に引っ越した場合は、住所変更とは別に、期限の更新も同じ窓口で済ませる必要があります。
手続きの途中で分からなくなったら、マイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)で聞けます。スマホやカードをなくしたときの一時利用停止も、ここが24時間365日受け付けています。
まとめ
引っ越しで住所が変わると、署名用電子証明書が失効し、iPhoneでもAndroidでもスマホのマイナンバーカードは使えなくなります。利用者証明用は有効期限まで残るので、ログインのような手続きなら実物のカードで続けられますが、スマホだけで済ませることはできません。
戻す順番は、転入届、カードの継続利用、署名用電子証明書の発行、そしてマイナアプリの[利用を再開]です。窓口で済むのは3つ目までで、4つ目はあとから自分のスマホでやります。
オンラインの転出届は署名用が有効なうちにしか出せないので、引っ越す前に済ませておきます。転入届は住み始めてから14日以内、継続利用は転入届から90日以内。これを過ぎると、カードそのものが失効して有料の再発行になることがあります。
スマホを戻すときに要るのは、実物のカードの4桁の暗証番号と、窓口で決め直した署名用パスワードの2つ。Androidならさらに、スマホ用の暗証番号を新しく2つ決めます。朝8時から19時30分のあいだなら、数分で使えます。
止まったままにしておくと、次にマイナ保険証でスマホをかざした日に、病院の受付で初めて気づくことになります。だから私は、窓口で署名用電子証明書を発行し直したら、帰りの電車でそのままスマホも戻してしまうのがいいと思っています。署名用パスワードを決めた直後なら、さっき控えた紙を見ながら打つだけです!