転売は悪なのか?市場原理と倫理観から考える「悪質転売」の問題点

闇マスクのバイヤー

転売とは、商品を安く仕入れ、それを高く販売する行為を指します。これはビジネスの基本的な原則の一つですが、近年、特に人気商品の買い占めや高額転売が問題視されています。

例えば、ゲーム機やコンサートチケット、さらには生活必需品に至るまで、転売によって本当に必要な人が適正価格で購入できなくなるケースが多発しています。

消費者としては「本当に欲しい商品が定価で買えないのはおかしい」と感じる一方で、市場原理の観点から見ると「需要が高まれば価格が上がるのは当然」という意見もあります。最近ですとNintendo Switch 2転売の件で、ホリエモン(堀江貴文氏)が「転売ヤーを否定すんな。感情論で邪魔すんな」と暴れていたのが記憶に新しいところです。

では、転売は単なる市場の調整機能として許容されるべきなのでしょうか?それとも消費者の足元を見た悪質な行為なのでしょうか?

本記事では、転売のメリットとデメリットを整理し、市場経済と倫理観の両面から考察しようと思います。

転売の仕組みと種類

感情論を抜きにすると、市場原理を考えると全ての転売を一括りに「悪」と決めつけることはできません。まずは、その種類と仕組みを整理します。

適正な転売と悪質な転売

転売には、大きく分けて「適正な転売」と「悪質な転売」があります。

  • 適正な転売:古本やアンティーク商品の売買、海外限定商品の輸入販売など、流通を補助する形の転売
  • 悪質な転売:人気商品やチケットの買い占め、BOT(自動購入ツール)を使った大量購入、高額転売による市場の歪み

適正な転売は、消費者に選択肢を増やし、市場の流動性を高める役割があります。一方で、悪質な転売は消費者に負担を強いるだけでなく、市場の健全性を損なう要因となります。

具体的な転売の種類

以下の表は、主な転売の種類とその特徴をまとめたものです。

転売の種類 市場への影響
適正な転売 中古本販売、ヴィンテージアイテムの流通 消費者にとって有益
高額転売 PS5、人気スニーカー、限定フィギュア 需要過多で価格が高騰
チケット転売 コンサート・スポーツ観戦のチケット 価格高騰・本来のファンが購入できない
生活必需品の転売 マスク・消毒液(コロナ禍) 倫理的な問題が大きい

転売が問題視される理由

1. 一般消費者が「本当に買いたいもの」を手に入れられない

転売によって、商品があっという間に市場から姿を消します。特に人気商品は、販売開始と同時にBOT(自動購入ツール)で大量購入されることも少なくありません。

例えば、ゲーム機や限定スニーカー、アーティストのライブチケットなど。どれも「欲しくても定価では買えない」が当たり前になっています。抽選販売が導入されても、当選確率は極めて低く、一般消費者の不満は蓄積する一方です。

「本当に必要な人に届かない」――これが最大の問題です。

2. 人為的な価格操作による市場のゆがみ

通常、市場価格は「需要」と「供給」のバランスで自然に決まります。しかし、転売屋が商品を買い占め、意図的に在庫を絞ることで、価格は本来の適正水準から大きく乖離します。

たとえば、本来5万円で買えるはずのゲーム機が、フリマアプリやオークションサイトでは10万円近い値段で出品されていることもあります。これは「市場の反映」ではなく、「市場の操作」です。

一部のプレイヤーの利益のために、全体の健全性が犠牲になる。それは明らかに健全な経済活動とは言えません。

3. 法整備の遅れと規制の限界

日本では2019年に「チケット不正転売禁止法」が施行され、チケットの転売に関しては一定の歯止めがかかりました。しかし、それ以外の商品に関しては、明確な規制がないのが実情です。

「営利目的かどうか」「公衆の安全や公平性を損なっているか」など、判断基準があいまいなため、法的対応が追いついていないのです。

また、インターネットを介した国際的な取引も多いため、仮に国内で規制を強化しても、海外サイト経由での転売は防ぎきれません。これは、グローバル化が進んだ現代特有の難しさとも言えます。

転売に対する対策と今後の展望

企業側の取り組み

メーカーや販売店も、転売対策を強化しています。

  • 購入時に本人確認を求める抽選販売制度の導入
  • 「お一人様1点限り」などの購入制限
  • 転売防止用にシリアルナンバーや電子認証を導入

たとえば、ナイキではアプリ上の抽選販売と本人認証の強化により、転売業者の排除を試みています。とはいえ、BOT対策や抜け道を完全に塞ぐのは困難で、企業側もイタチごっこを強いられているのが現状です。

消費者ができる3つのこと

私たち消費者にも、できることはあります。

  • 転売価格では買わない:需要を生まなければ転売は成り立ちません
  • 正規ルートでの購入を心がける:公式サイトや認定店舗を利用しましょう
  • 転売対策に積極的な企業を応援する:そうした企業が生き残る市場にする

「どうしても欲しいから高くても買う」という気持ちは理解できます。しかし、それが転売業者に利益を与え、次の買い占めを助長することになる。――このサイクルに、どこかでブレーキをかける必要があると思います。

私は昔、エルレガーデンというバンドのライブによく行っていたのですが、チケットの転売には本当に腹がたったのを覚えています。ライブチケットは正規で購入すると3,000円くらいだったのですが、ヤフオクで10倍もしくはそれ以上の金額で出品されているのを見ると、やりきれない気持ちになりました。

私は絶対に転売チケットを購入しませんでしたが、どうしても行きたい人は買ってしまうんですよね。実際、周りにも買っている人は少なからずいました。

ただ、純粋に好きなバンドのライブに行きたい学生から、法外な金額に釣り上げたチケットを大人が売るのは、決して正しい社会ではないと感じます。「感情論で転売を否定するな」と断じるのは簡単ですが、社会的な共感や倫理観も、持続可能な市場には不可欠な要素だと思います。

市場原理と倫理観から考える「悪質転売」の問題点まとめ

転売という行為は、市場経済の原則に基づいた行動であり、一概に悪と言い切れない面があるのは確かです。

しかし、買い占めや価格吊り上げなどの悪質な転売行為は、消費者に大きな負担をかけるだけでなく、市場の公正さを損なう要因となっています。全ての人が転売屋から購入をしなければ、転売する人間はいなくなると思いますが、個人の行動を規制することはできないので現実的に不可能です。

転売問題を解決するには、消費者・企業・法律の三者が協力し、公正な市場環境を維持することが重要だと思います。転売屋に頼らず、適正な価格で商品を購入できる仕組みをどう作るかが、今後の課題ではないでしょうか。

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