フォルダを開いたら、見慣れない数文字がぶら下がったファイルが1つ。
「.heic」。開こうとしたらエラー。送り主に聞いても「iPhoneで撮っただけ」と返ってきて、余計にモヤっとする。私も一度これで、写真の受け渡しに小一時間つぶしたことがあります。
ファイル名のうしろにくっついている「.〜」の部分、いわゆる拡張子です。中身が何かを自分で名乗っている札みたいなもので、パソコンはこれを見て「じゃあこのアプリで開こう」と判断しています。逆に言えば、札を読めるようになると、開く前に中身の見当がつく。
ところが、いざ聞かれると答えられないものが山ほどあります。.jpgや.pdfは誰でもわかる。では.inddは? .flacは? .lnkは?
この記事は、ふだん見かける拡張子から「言われてみると正体を知らない」ものまで、答えと解説つきの3択クイズ20問にまとめたものです。
出題は5ジャンル。画像とデザイン、書類とオフィス、圧縮とディスク、音と動画、そして最後に「メールで届いたら開いてはいけない」危険な拡張子。全部で20問あります。
ルールは単純で、問題のすぐ下に答えが書いてあります。指で隠すなり、視線を止めるなり、そこはお任せします。
もうひとつ。Windowsは初期状態で拡張子を隠しているので、そもそも見えないまま使っている人がかなりいます。表示に切り替える手順も後半に置きました。
ちなみに身内に出してみたところ、「.7zが読めない」で全滅した人が出ましたw ふだん何を触っているかで、得意なジャンルがきれいに分かれるのも面白いところです。
画像とデザイン編
まずは軽めに。デザインの現場で毎日飛び交う5つです。
Q1 .ai
A:AIが生成した画像/B:Adobe Illustratorのファイル/C:音声認識のデータ
正解はB。Illustratorで作ったロゴやイラストの元データで、拡大しても線がガタつかないベクター形式です。印刷会社に入稿するとき「aiでください」と言われる、あれ。
生成AIが広まってから、メールに「AIのデータを送ります」と書くと相手が一瞬身構えるようになりました。紛らわしい時代になったものです…
Q2 .heic
A:iPhoneで撮った写真/B:ヘッドホンの設定/C:地図データ
正解はA。iPhoneのカメラ設定を「高効率」にしていると、この形式で保存されます。正体はiOS 11から使えるようになったHEIF(High Efficiency Image File Format)という入れ物で、同じ画質でもJPEGより容量が小さく済むのが売りです。
その代わり、古いWindowsや一部のWebサービスでは開けません。人に渡すときだけJPEGに切り替える、が今のところ無難な運用です。
参考:Apple公式サポート
Q3 .indd
A:索引データ/B:InDesignのレイアウトデータ/C:住所録
正解はB。雑誌やパンフレットの誌面を組むAdobe InDesignのファイルです。ページものはこれ、1枚もののチラシは.ai。現場ではだいたいこの二択で回っています。
Q4 .avif
A:動画/B:新しい画像形式/C:フォント
正解はB。AV1 Image File Formatの略で、動画コーデックのAV1を静止画に転用した形式です。JPEGよりかなり軽くなるので、サイトの表示速度を詰めたい人には効きます。
ただ、対応していない環境もまだ残っています。私のサイトでも、JPEGと併用しながら様子を見ているところです。
Q5 .svg
A:拡大しても劣化しない画像/B:表計算ファイル/C:ウイルス定義
正解はA。Scalable Vector Graphicsの頭文字で、中身は画像というより「図形の描き方を書いたテキスト」です。メモ帳で開くとタグがずらっと出てきて、初めて見た人はだいたい面食らいます。
だからロゴやアイコンに向いています。どれだけ拡大してもぼやけません。
参考:MDN Web Docs
書類とオフィス編
ここからは仕事で毎日触るゾーン。得点源です。
Q6 .docxの「x」は何の意味?
A:eXtra/B:XML/C:eXport
正解はB。Office 2007から入った形式で、中身はXMLというテキストの塊をzipで固めたものです。Microsoftの説明では、末尾の「x」はマクロを含まないXMLファイル、「m」はマクロを含むXMLファイルという区別になっています。
試しに.docxを.zipに書き換えて展開すると、中からXMLや画像がぞろぞろ出てきます。壊すと戻せないので、やるならコピーでどうぞ。
Q7 .xlsm
A:マクロが入ったExcel/B:Excelのバックアップ/C:差し込み印刷用
正解はA。Q6の「m」がまさにこれです。取引先から届いた.xlsmを、中身を確かめずに「コンテンツの有効化」で開くのは危ない。マクロは普通のプログラムと同じことができます。
Q8 .csv
A:カンマで区切ったテキスト/B:Excel専用の圧縮形式/C:暗号化された連絡先
正解はA。Comma-Separated Valuesの略で、値をカンマで区切っただけの素朴なテキストです。Excelで開けるのでExcelのファイルだと思われがちですが、実体はメモ帳でも読めます。
だからこそシステム間の橋渡しに強い。そして、文字コードの行き違いで盛大に文字化けするのもこの子の定番です。
Q9 .epub
A:電子書籍/B:公開鍵/C:郵便番号データ
正解はA。electronic publicationから来た名前で、中身はHTMLやCSSをzipでまとめたもの。つまり電子書籍の正体は、ほぼWebページの詰め合わせです。
文字サイズを変えると行が組み直されるのは、PDFと違ってWebと同じ仕組みで表示しているからなんですね。
圧縮とディスク編
このジャンルは名前の由来が面白いものぞろいで、書いていて一番楽しかったところです!
Q10 .rarの名前の由来は?
A:Rapid Archive/B:開発者の名字/C:Random Access Read
正解はB。ロシアの開発者Eugene Roshalさんが作ったので、Roshal ARchiveでRAR。Windows向けのWinRARも同じ人の手によるものです。
自分の名字をそのまま形式名にして、それが世界中で30年以上使われている。なかなかできることじゃありません。
Q11 .7z
A:7つに分割したファイル/B:7-Zipの圧縮形式/C:7日で消えるファイル
正解はB。無料の圧縮ソフト7-Zipが使う独自形式で、LZMAという方式を採用しているぶん、zipよりよく縮みます。
ただし相手の環境に7-Zipが入っていないと開けません。社外に送るならzip、手元で容量を稼ぎたいときは.7z。私はそう使い分けています。
Q12 .iso
A:カメラの感度設定/B:ディスクの丸ごとコピー/C:国際規格の証明書
正解はB。CDやDVDの中身を、構造ごと1ファイルに写し取ったイメージファイルです。名前はCD-ROMの規格ISO 9660から来ています。
Windows 10や11なら、右クリックの「マウント」で仮想ドライブとして開けます。わざわざディスクに焼く必要はありません。
Q13 .dmg
A:Macのインストール用ファイル/B:ダメージ計算のデータ/C:ドイツ語辞書
正解はA。Apple Disk Image、つまりMac版アプリの配布に使われるディスクイメージです。ダブルクリックすると仮想のディスクがマウントされ、アプリのアイコンをフォルダにドラッグする、あの流れ。
音と動画編
3問だけ。ここは詳しい人とそうでない人で、はっきり差が出ます。
Q14 .flac
A:フラッシュ動画/B:音質を落とさない音声/C:楽譜データ
正解はB。Free Lossless Audio Codecの略で、mp3のように圧縮はするものの、音の情報は一切捨てません。そのぶんファイルは大きくなります。
CDから取り込んだ音源を保存用に残すなら、こちらが定番です。
参考:FLAC公式サイト
Q15 .m4a
A:音声だけのMPEG-4/B:メールの添付形式/C:4分割した動画
正解はA。MPEG-4の入れ物に音声だけを入れたもので、iTunesやiPhoneのボイスメモでおなじみ。中身はAACで入っていることが多いです。
Q16 .mkv
A:動画の入れ物/B:マーケティング資料/C:字幕ファイル
正解はA。Matroskaというコンテナ形式で、1つのファイルに映像と複数の音声、複数の字幕をまとめて詰め込めるのが特徴です。
音声を日本語と英語で切り替えられる動画ファイル。あれの中身は、だいたいこれです。
開くと危ない拡張子編
最後の4問は、遊びというより実用です。
メールの添付で届いたときに手が止まるかどうか。ここだけは取りこぼしたくないところ。
Q17 .lnk
A:リンク切れの記録/B:ショートカット/C:ネットワーク設定
正解はB。デスクトップに並んでいるアイコンの正体です。表示されるアイコンの絵は本物そっくりに差し替えられるうえ、中身には別のコマンドを仕込めます。
写真に見えるのに実体はショートカット、というファイルが送られてきたら、開かずに削除で正解です。
Q18 .scr
A:スクリーンショット/B:スクリーンセーバー/C:画面録画
正解はB。名前はのどかですが、中身は.exeと同じ実行ファイルです。「スクリーンショットをお送りします」と言って添付する手口が、昔からずっと使われています。
Q19 .reg
A:登録用の申込書/B:Windowsのレジストリを書き換えるファイル/C:地域設定
正解はB。ダブルクリックひとつでWindowsの設定の根っこを書き換えます。ネットで拾った.regを勢いで実行してWindowsが起動しなくなった、という話は今でも定期的に流れてきます。
Q20 .js
A:JavaScript/B:日本語辞書/C:JPEGの縮小版
正解はA。Webページを動かすおなじみの言語ですが、Windowsではファイルを直接ダブルクリックしても動いてしまいます。ブラウザの中だけの話ではないわけです。
ここで挙げた4つは、すべてOutlookが既定でブロックする添付ファイルの一覧に載っています。ブロックされているということは、それだけ悪用されてきたということ。
正解数でわかる腕前
採点の目安です。
- 0〜5問 拡張子はパソコン任せ。ここから覚えれば十分
- 6〜11問 仕事で困らない標準ライン
- 12〜16問 同僚に聞かれる側の人
- 17〜20問 もはや職業
あくまで目安なので、外れても気にする必要はありません。むしろジャンルごとに見たほうが面白くて、デザイン編が全滅で圧縮編が満点ならエンジニア寄り、逆なら制作寄り。これがけっこう当たります。
身内で試したときは、危険な拡張子編だけ全員そろって正解率が低いという結果でした。一番実害に近いジャンルなのに、です。
拡張子を表示する設定
ここまで読んで「そもそも自分のパソコン、拡張子が見えていない」と気づいた人へ。
Windowsは初期設定で拡張子を隠しています。エクスプローラーを開き、Windows 11なら「表示」から「表示」→「ファイル名拡張子」にチェック。Windows 10なら「表示」タブの中に同じチェックボックスがあります。Macの場合はFinderの設定を開き、「詳細」タブで「すべてのファイル名拡張子を表示」をオンにします。
見えるようにしておくと、「請求書.pdf.exe」のような二重拡張子の偽装に気づけます。隠したままだと末尾の.exeがきれいに消えて、画面上は「請求書.pdf」に見えてしまう。拡張子の表示をオンにするのは、いま思いつくかぎり一番安上がりなセキュリティ対策です。
ついでにもうひとつ。拡張子を書き換えても、ファイルの中身は変換されません。.pngを.jpgに直したところで、中身はpngのままです。
まとめ
20問、何問取れたでしょうか。
拡張子は、ファイルが自分で名乗っている札です。.aiならIllustrator、.heicならiPhoneの写真、.flacなら音を削っていない音源。読めるようになると、開く前に「これは何で開くやつか」「そもそも開いていいのか」の見当がつきます。
今回いちばん拾ってほしいのは、後半の4問です。.lnk、.scr、.reg、.js。どれも見た目は無害で、名前だけならむしろ地味。それがOutlookの既定ブロック一覧に並んでいるのは、地味だからこそ引っかかる人が多いからです。
私自身、昔ちょうど.scrの添付が届いたことがあります。件名はごく普通の見積もり依頼でした。あのとき拡張子を表示していなかったら、たぶん開いていたと思います。
逆に前半のジャンルは、知らなくても実害はありません。ただ、.docxの「x」がXMLだと知ったあとで中身をzipとして展開してみると、ふだん使っているソフトの裏側が急に立体的に見えてきます。こういう小ネタが積み重なると、パソコンは少しずつ扱いやすくなる。
ファイル名の最後にくっついた数文字を読めるかどうかは、ちょっとした雑学であると同時に、危ないファイルを開かずに済ませるための一番手前の防具でもあります。
まずは拡張子の表示をオンにするところから。見えていないものは、覚えようがありませんから。
クイズの答えを丸暗記する必要はありません。「見慣れない札が付いていたら、開く前に一度調べる」。その癖さえ残れば、この記事の役目はほぼ果たせたようなものです。