リモコンの電池ぶたを開けたら、電池が白い粉をまとっていた。
私は去年、寝室のエアコンのリモコンでこれをやりました。ボタンを押しても反応しないので電池切れだと思い込み、ふたを開けたら中がガビガビ。粉が机にパラパラ落ちて、これは…と手が止まりました。
やりがちなのが、そのまま指でつまんで電池を抜くことです。あの白い粉と液は、アルカリ乾電池の中身がしみ出したもの。皮膚に付くと化学やけどを起こすおそれがあり、目に入れば失明のおそれがある、とメーカーがはっきり書いているレベルの代物です。
液漏れが起きるのは、たいていリモコン・掛け時計・体温計・ワイヤレスマウスあたり。どれも「電池を入れたら、次にふたを開けるのは何年も先」という機器です。電池工業会が公開しているトラブル事例にも、リモコンとからくり時計の液漏れがそのまま載っています。
とはいえ、機器が全部おしゃかになるわけではありません。正しい順番で拭き取れば、そのまま使えるようになるものはけっこうあります。逆に、手順を飛ばすと直るはずのものまで壊します。
ちなみに、粉が付いたまま新しい電池を入れ替えても、たいてい動きません。接点に結晶が挟まって電気が通らないからです。つまり、この作業は修理というより掃除で、掃除のほうが復活の本体になります。
この記事では、液漏れした電池を安全に取り出す手順、白い粉の落とし方、機器が復活するかどうかの見分け方、そして液漏れを繰り返さないための電池の扱い方を、メーカーと電池工業会の公式情報をもとにまとめます。
使う道具はゴム手袋とティッシュと綿棒だけ。特別なものは要りません。
白い粉の正体はアルカリ液が固まったもの
あの白い粉は、電池の中のアルカリ液が漏れ出し、空気中の二酸化炭素と反応して結晶になったものです。
アルカリ乾電池の電解液は、水酸化カリウムを主成分とする強アルカリ性の水溶液。粉に見えるので「乾いたからもう平気だろう」と思ってしまうのですが、性質そのものは変わっていません。
ややこしいのは、電池の種類で中身が違うことです。マンガン乾電池は塩化亜鉛を主成分とする弱酸性で、白い粉ではなく黒っぽい液がにじむことがあります。
エネループのような充電池(ニッケル水素電池)はしくみがまた別で、内部で発生したガスをガス排出弁から逃がすときに、電解液が一緒にもれ出ることがあります。
とはいえ、家庭で見かける液漏れの大半はアルカリ乾電池です。種類を見分けられなくても、扱いを「素手で触らない」に統一しておけば困りません。
素手で触らない。目に入ったら医師へ
粉が付いた電池を、つい素手でつまんでしまう。私も一度やって、あとで手のひらがヌルッとするのに気づいて慌てて洗いました。
アルカリ液が皮膚や衣服に付いた場合は、水道水などの多量のきれいな水で洗い流してください。放置すると化学やけどになるおそれがあります。
目に入った場合は、こすらずにすぐ多量のきれいな水で洗い、そのあと医師の治療を受けてください。失明のおそれがあると、メーカーも電池工業会も同じ書き方で警告しています。
用意するのはゴム手袋かポリ手袋。無ければレジ袋を手にかぶせるだけでも違います。粉は軽くて舞うので、作業中は顔を近づけすぎないほうがいいです。
小さい子どもやペットがいる家では、作業する場所も選んでください。床にこぼれた粉は見えにくく、あとから手や口に入ります。
参考:パナソニック公式FAQ
液漏れした電池を安全に取り出す手順
取り出しの手順は5つです。
- 机に新聞紙かキッチンペーパーを敷き、手袋をする
- 電池をティッシュでくるむようにつまみ、粉を飛ばさないように引き抜く
- 固まって抜けないときは、割り箸や竹串で少しずつ浮かせる
- 抜いた電池はティッシュで包み、ビニール袋に入れて口を縛る
- 手袋を外して、手を洗う
金属のドライバーでこじるのはやめてください。端子に当たればショートしますし、電池の外装を破ると中身が一気に出ます。
抜けない電池は、たいてい端子のバネに液が回って固着しています。力任せに引っぱると、バネごとちぎれる。ここは時間をかけたほうが結果的に早いです。
電池が2本以上入っていたら、漏れていないほうも一緒に処分します。新しい電池と古い電池を混ぜて使うと、古いほうから液もれが発生するおそれがあると電池工業会が注意しています。
機器に残った液と白い粉の落とし方
電池を抜いたあとの電池ボックスには、白い結晶がこびりついています。
メーカーが案内している落とし方は、水で濡らした綿棒やティッシュで拭き取る、というもの。マクセルもパナソニックも表現はほぼ同じです。
ネットでは「水洗いすれば落ちる」という手順もよく見かけます。結晶が水に溶けるのは事実です。ただ、公式の案内にあるのは濡らした綿棒で拭くところまでで、機器を丸洗いしろとは書かれていません。基板や液晶が入っているものを水に沈めれば、液漏れとは別の壊れ方をします。
酢やクエン酸で中和する方法も出回っていますが、これもメーカーの案内には出てきません。私は使わない派です。
拭き取りのコツは、綿棒をケチらないこと。1本で往復させると、溶けた結晶を塗り広げるだけになります。汚れが移ったら次の1本に替える。これだけで落ち方がまるで違います。
バネや接点にサビが浮いていたら、綿棒では取れません。目の細かい紙やすりや消しゴムの角で軽くこすると金属の地が出ますが、ここから先は公式の手順ではないので自己責任で。
仕上げは乾燥です。電池ぶたを開けたまま半日ほど置いて、水気が完全に飛んでから新しい電池を入れます。
参考:マクセル公式FAQ
直る機器と、あきらめる機器の見分け方
掃除が終わったら、新品の電池を入れて動くかどうかを確かめます。
私のエアコンのリモコンは、これであっさり復活しました! 液漏れが電池ボックスの中だけで止まっていたパターンです。
動かないときに疑うのは、液がボックスの奥から基板側へ回り込んだケースです。リモコンなら電池ボックスの裏に配線が通っているので、そこがやられていると外からは手が出せません。端子そのものが溶けて欠けている場合も、家庭での復旧は難しいと考えたほうがいいです。
買い替えの判断は機器の値段しだい。テレビやエアコンなら、メーカー純正の交換リモコンが数千円で手に入りますし、汎用リモコンならもっと安く済みます。掛け時計のように本体が安いものは、直す手間と釣り合わないこともあります。
例外は、体温計や血圧計のように数値を出す機器です。動いたように見えても、表示される値がずれていないかは外から分かりません。液漏れを起こしたものは買い替えるか、メーカーに相談してください。
取り出した電池の捨て方
液漏れした電池を、そのままゴミ箱へ放り込むのはやめてください。
ティッシュで包んでビニール袋に入れ、お住まいの市町村の指示に従って捨てる。各社の案内はここで共通しています。
やっかいなのは、乾電池の分別が自治体でまるごと違うことです。不燃ごみの日に出せるところ、有害ごみとして別回収のところ、公民館やスーパーの回収ボックスへ持ち込むところ。同じ県内でも隣の市と違います。
「電池 捨て方」に市区町村名を足して検索すれば、たいてい自治体のページが上に出てきます。液漏れした電池を回収ボックスに入れていいかどうかは扱いが分かれるので、迷ったら袋に入れた状態で問い合わせるのが確実です。
なぜ漏れるのか。原因は放置と混用
電池工業会は、液漏れの多くを「電池の取替え時期の遅れから過放電(使い過ぎ)状態に至ったために内部の電解液が漏れるもの」と説明しています。
使い切った電池を、そのまま入れっぱなしにしたことが引き金になるわけです。
ほかに挙げられている原因も、心当たりのあるものばかりでした。
- 機器のスイッチを切り忘れ、残量がなくなった後も電流が流れ続けた
- プラスとマイナスを逆に入れ、ほかの電池から充電されてしまった
- 新しい電池と古い電池を混ぜて使った
- 銘柄や種類、サイズの違う電池を混ぜて使った
- スイッチのない機器に、長期間入れっぱなしにした
公開されているトラブル事例には、リモコンとからくり時計の液漏れが機器名つきで載っています。からくり時計のほうは、時計が壊れただけでなく壁にシミまで残りました。
逆装填の例はもっと重くて、農業用の散布器で1本だけ向きを間違えたために液漏れし、皮膚に重度の化学やけどを負っています。「1本だけ逆」は、家庭のリモコンでも普通に起きるミスです。
液漏れを繰り返さないための習慣
やることは、抜くことと、揃えること。
- 使い切った電池は、その日のうちに機器から取り出す
- しばらく使わない機器からは、あらかじめ電池を抜いておく
- 交換するときは、入っている電池を全部まとめて新品にする
- 同じメーカー・同じ種類で揃え、マンガンとアルカリを混ぜない
意外と見られていないのが、使用推奨期限です。
電池の側面かパッケージに「09-2026」のように、月2桁とハイフンと西暦4桁で印字されています。これは「その期限内に使い始めれば規定の性能が出る」という意味で、使い切るまでの期限ではありません。
目安はアルカリ乾電池で5年から10年、マンガン乾電池はもっと短めです。ちなみにこの期限の性能基準は2022年版のJISから記載が削除され、いまは各社が独自に定めた基準と試験方法で表示しています。防災用に電池を備蓄している人は、年に一度は期限を見ておくといいです。
充電池も漏れます。フル充電のものと使いかけを混ぜると、使いかけのほうが過放電になってガスが発生し、そのガスを逃がすときに電解液が一緒に出てくる。「充電池だから安心」ではなく、混ぜないルールは乾電池と同じです。
まとめ
電池の液漏れは、ふたを開けた直後の1手で結果が変わります。
指でつまむか、手袋をしてティッシュでくるむか。この差だけで、化学やけどを負うかどうかが分かれます。白い粉は乾いて無害になったのではなく、アルカリ液が空気と反応して固まっただけです。
掃除は、水で濡らした綿棒で拭き取って、半日乾かす。丸洗いも、酢での中和も、メーカーの案内には出てきません。液漏れが電池ボックスの中で止まっていれば、新品を入れるだけで動き出す機器はかなりあります。
ただし体温計や血圧計のように数値を出す機器は別枠です。動いて見えても値が信用できないので、買い替えかメーカー相談に回してください。
抜いた電池は、ティッシュで包んでビニール袋に入れてから捨てます。乾電池の分別は自治体でまるごと違うので、「電池 捨て方」に市区町村名を足して検索するのが早いです。液漏れした電池を店頭の回収ボックスに入れていいかどうかも、地域によって扱いが分かれます。
液漏れの多くは過放電、つまり使い切った電池を入れっぱなしにしたことが引き金なので、掃除の腕より先に効くのは「使い終わったら抜く」という一手です。
交換するときは、残っている電池も一緒に新品にします。新旧や銘柄を混ぜると古いほうから漏れることがあり、向きを1本間違えれば、ほかの電池から充電されて漏れます。側面の「09-2026」は、使い切る期限ではなく使い始めの期限です。
私はあの一件のあと、家じゅうの機器を開けて回りました。使っていない置き時計、去年のクリスマスに光っていたLEDキャンドル、押し入れの防災ラジオ。どれも電池が入ったままでした。