衣替えのたびに、衣装ケースへ防虫剤をポンと放り込んでいませんか。
私も長いことそうでした。前のシーズンの防虫剤がまだ入っているのを見つけても、「効きが弱まっているかもしれないし、念のため新しいのも足しておこう」と、上から別の商品を重ねて入れていたんです。
ところがこれ、衣類にとってはかなり危ない行為でした。防虫剤は種類によって、一緒に使うと成分同士が影響し合って溶け、衣類にシミや変色を残すことがあります。虫から服を守るために入れたものが、虫より先に服をダメにしてしまうという、笑えないオチです。
やっかいなのは、パッケージの表側を見ただけでは種類が分からない商品が多いこと。「衣類用防虫剤」「無臭タイプ」としか書かれていないと、手持ちのものと組み合わせていいのかどうか判断できません。
実家のタンスを開けると独特のにおいがした、あの記憶。あれが何の成分だったのかを知っているだけで、買い足すときの判断が変わります。
そもそも防虫剤は、切れたかどうかが目に見えません。半年前に入れたものがまだ効いているのか、もう空っぽなのか。分からないから、つい上から足す。この「念のため」の一手間が、そのままシミの原因になります。
この記事では、衣類用防虫剤の4つの種類と、混ぜてはいけない組み合わせ、そしてパッケージのどこを見れば種類が分かるのかを、衣替え前にそのまま使えるかたちで整理します。
先に結論だけ書いておくと、無臭のピレスロイド系だけは他の種類と併用でき、においのある3種類は互いに混ぜられません。覚えることはこれだけです。
防虫剤は4種類しかない
店頭には数えきれないほどの商品が並んでいますが、衣類用防虫剤の中身は大きく4種類に分かれます。
- ピレスロイド系(エムペントリン、プロフルトリンなど)
- パラジクロルベンゼン
- ナフタリン
- しょうのう(樟脳)
この4つを区別する最大のポイントが、においです。
無臭のピレスロイド系
いま主流になっているのがピレスロイド系。無臭タイプとして売られているものの多くがこれで、しまっておいた服を出してすぐ着られるのが強みです。
効果の目安はおおむね1年。1年に1回の衣替えのサイクルとぴったり合うので、迷ったらこれを選んでおけば大きく外しません。
においで分かる残り3種類
パラジクロルベンゼン、ナフタリン、しょうのうの3つは、いずれもにおいのあるタイプです。
パラジクロルベンゼンは揮発が早く、効き目の目安は数か月ほど。ナフタリンはゆっくり長く効くので、和服やひな人形など長期保管向きです。しょうのうはクスノキ由来の天然成分で、和服や絹ものに古くから使われてきました。
「実家のタンスのにおい」の正体は、たいていこの3つのどれかです。
参考:エステー公式サイト
混ぜるとシミになる理由
においのある3種類は、種類の違うものを一緒に使うと、成分同士が影響し合って溶けることがあります。溶けた薬剤が衣類に付着すると、シミや変色として残ってしまう。これがメーカー各社もクリーニング業界の団体もそろって注意を呼びかけている理由です。
厄介なのは、これが「入れた瞬間に分かる」トラブルではないところ。半年後、衣替えでケースを開けたときにようやく気づくわけです。しかも付いてしまったシミは、家庭での洗濯で落とせるとはかぎりません。
お気に入りのニットで発覚したときのダメージを考えると、防虫剤を足す前の10秒の確認は、じゅうぶん元が取れます。
併用OK・NGの一覧
あらためて整理すると、ピレスロイド系だけは他の種類と一緒に使えて、においのある3種類は互いに混ぜられない、ルールはこれだけです。
組み合わせで整理すると、こうなります。
一緒に使ってよい組み合わせ
- ピレスロイド系 と パラジクロルベンゼン
- ピレスロイド系 と ナフタリン
- ピレスロイド系 と しょうのう
- 同じ種類同士(同じ商品を数を増やして使う)
一緒に使ってはいけない組み合わせ
- パラジクロルベンゼン と ナフタリン
- パラジクロルベンゼン と しょうのう
- ナフタリン と しょうのう
覚え方としては「無臭は仲良し、においもの同士はケンカする」。ざっくりですが、タンスの前で思い出すにはこれで十分です。
なお、除湿剤や乾燥剤と防虫剤を同じケースに入れるのは問題ありません。混ぜてはいけないのは、あくまで防虫成分同士の話です。
素材で使えない種類がある
併用と並んでもう一つ見落としやすいのが、衣類側との相性です。種類ごとに「これには使わないで」という素材が決まっています。
- パラジクロルベンゼン:塩化ビニール製品やスチロール製品には使えない
- ナフタリン:ラメ、金糸・銀糸、塩化ビニール製品には使えない
- しょうのう:金糸・銀糸や金箔に直接触れさせない
- ピレスロイド系:毛皮、金糸・銀糸、プラスチックボタンにも使える
成人式の振袖やフォーマルドレスなど、ラメや金糸が入った服をしまうときは特に注意したいところ。「長期保管だからナフタリンで」と考えがちですが、金糸の入った着物ならしょうのう、金糸に触れさせない置き方が前提になります。
そして、素材を選ばず使いやすいという点でも、やはりピレスロイド系は扱いがラクです。私はもう、家じゅうの衣装ケースをこれで統一してしまいました。管理する種類が1つになると、買い足しのときに悩まなくて済みます。
入れる場所と量のコツ
種類の話が片付いたら、次は入れ方です。置く場所を間違えると、正しい種類を選んでも上の服には成分が届きません。
衣類の一番上に置く
防虫成分は空気より重いため、上から下へ広がっていきます。だから防虫剤は、たたんだ衣類の一番上に置くのが正解。
ケースの底に敷いたり、服と服のあいだに挟んだりすると、上の服には成分が届きません。私は以前これを知らず、律儀に真ん中へ埋め込んでいました…。
詰め込みは8分目まで
ぎゅうぎゅうに詰めたケースでは、成分が回る隙間がなくなります。収納は8分目までにとどめるのが目安です。
量も「多いほど安心」ではありません。使用量はケースやクローゼットの容量に応じて商品ごとに決められているので、パッケージの表示どおりに入れるのが結局いちばん効きます。
しまう前に必ず洗う
虫は皮脂や食べこぼしなどの汚れに寄ってきます。汚れたままの服をしまうと、防虫剤をどれだけ足しても分が悪い。
洗ってから、しっかり乾かしてしまう。基本ですが、ここが抜けていると防虫剤の効果は半減します。
種類を変えるときの注意
「これまでナフタリンだったけど、無臭のピレスロイド系に替えたい」。これはよくある話です。
その場合、まずやるべきは古い防虫剤を完全に取り除くこと。使いかけを隅に残したまま新しいものを入れると、それはもう併用です。小さくなって存在を忘れられた固まりが、ケースの奥から出てくることは珍しくありません。
においのあるタイプから切り替えるときは、成分が空間に残っているので、ケースや引き出しを空にして風を通してから新しい防虫剤を入れると安心です。衣類にしみついたにおいも、風にあてているうちに薄れていきます。
ケースを空にする衣替えのタイミングこそ、種類を切り替える絶好のチャンス。中身が入ったままの入れ替えは、取り残しが起きやすい作業です。
においで気分が悪いとき
防虫剤の使用量が多すぎたり、換気の悪い場所で使ったりすると、においで頭痛や吐き気などの体調不良につながることがあります。国民生活センターにも、こうした相談が寄せられています。
特に、クローゼットや押し入れなど狭くて閉じた空間に、規定量を超えて入れてしまったケースは要注意です。
衣替えの作業中は窓を開けて風を通す、使用量は表示を守る、しまった衣類はときどき空気を入れ替える。この3つを押さえておけば、まず心配はいりません。
においが気になる衣類は、着る前に風通しのよい日陰でしばらく干しておくとかなり和らぎます。
参考:国民生活センター
まとめ
防虫剤の併用ルールについて見てきました。
押さえるべきは、衣類用防虫剤が4種類しかないこと。そして、においのないピレスロイド系だけは何とでも組み合わせられて、においのあるパラジクロルベンゼン・ナフタリン・しょうのうの3つは、互いに混ぜるとシミや変色の原因になるということ。
つまり「においのする防虫剤同士を同じケースに入れない」、これさえ守れば、防虫剤で服を傷めることはまずありません。
買い足すときは、パッケージ裏の成分表示をひと目だけ確認してください。無臭タイプと書いてあればピレスロイド系である場合がほとんどで、そのまま足しても問題なし。においのするタイプなら、いま入っているものと同じ種類かどうかを見る。判断はこの2ステップで終わります。
個人的なおすすめは、思いきって家じゅうをピレスロイド系に統一してしまうことです。効果の目安が約1年なので衣替えのサイクルと相性がよく、素材の制限も少なく、何より「これ、混ぜて大丈夫だったっけ」と悩む時間がゼロになります。ストックをまとめ買いできるのも地味にありがたいところ。
あとは、しまう前に洗う、8分目まで、衣類の一番上に置く。この3つを足せば、来シーズンにケースを開けたときの「やられた…」がぐっと減ります。
衣替えでケースを空にする今こそ、防虫剤の棚卸しにちょうどいいタイミングです。家じゅうの引き出しに使いかけが何種類たまっているか、一度数えてみると、たぶん自分でも驚きますよ。