別々に作ったPDFを、相手から「1つにまとめて送ってください」と返されることがあります。
検索すれば、ブラウザにドラッグするだけで結合してくれるサービスがいくらでも出てきます。速いし、無料だし、ログインも要らない。
ただ、まとめたいのが見積書や契約書、社員の名簿だと話が変わります。知らない会社のサーバーに書類を置くことになるので、外部サービスへのアップロードを社内規程で禁止している職場も珍しくありません。情報システム部門に確認を取っているうちに、その日のうちの提出に間に合わなくなることもあります。
結論から書きます。Macは標準の「プレビュー」だけで結合でき、Windowsは標準機能では結合できないので無料ソフトを1本入れるのが早く、Acrobatの結合は月額を払っているプランの機能です。どれも処理は手元のパソコンの中で終わるので、ファイルは外に出ません。
Windowsに最初から入っている「Microsoft Print to PDF」では、すでにあるPDFどうしを1本にはできません。1ファイルずつ同じ名前で保存しても、上書きされて最後の1つしか残りません。
急いでいるときほど、オンラインのツールは魅力的に見えます。私も締め切りが迫っていると「今回だけなら」と思いかけるので、人のことは言えません。それでも、一度上げた書類は自分の手を離れてしまうので、ここだけは線を引いておきたいと思っています。
Windowsは標準機能では結合できません
Windows 10と11に入っている「Microsoft Print to PDF」は、印刷できるものをPDFとして保存する仮想プリンターです。Wordの文書でも、Webページでも、印刷ダイアログでこれを選べばPDFになります。
ただし、これは1つの印刷ジョブを1つのPDFにする機能。すでにあるPDFの後ろにページを足していく、という使い方はできません。
ではEdgeはどうか。PDFを開いて注釈や手書きを入れるボタンはあっても、結合のメニューは用意されていないんですね。
つまりWindowsでは、ソフトを足すか、Acrobatを使うかの二択です。
そしてソフトを足すなら、無料で、処理がパソコンの中で完結するものを選べばいい。オンラインのツールを避けたかった理由が、そのまま満たせます。
CubePDF Page:結合と分割だけの軽いソフト
国産のフリーソフトで、名前のとおりPDFのページを扱うことに絞ってあります。公式サイトの説明は「PDF ファイルの結合・分割に特化した軽量なフリーソフト」。
個人でも法人でも永久無料で、対応OSはMicrosoftのサポート期間中のWindows(x86/x64/arm64)。動作には.NET Framework 3.5以降が必要で、4.7以降が強く推奨されています。
そして公式サイトには「ネットワーク接続を必要せず」と書かれています。今回の目的には、ここがいちばん効きます。
操作は、ウィンドウにPDFをドラッグして並べ、[上へ][下へ]のボタンで順番を直してから結合を押すだけ。BMPやPNG、JPEGといった画像をそのままページとして混ぜられるので、「資料のPDFの後ろに現場で撮った写真も足しておいて」という相談にも1本で応えられます。
PDFsam Basic:ページ範囲やしおりまで指定できる
2006年から続いているオープンソースのソフトで、ライセンスはAGPL。WindowsとmacOS、Linuxで動きます。
公式サイトにはこう書いてあります。「Everything runs locally so your files are never uploaded and no internet connection is needed.」(すべてローカルで実行されるため、ファイルがアップロードされることはなく、インターネット接続も不要です)
ファイルを外に出したくないという今回の条件に、公式が正面から答えている一文です。
結合では、ファイルごとにページ範囲を指定できます。5ページ目から12ページ目だけを使う、といった指定ですね。元のPDFに付いていたしおりを残すか捨てるか、結合したPDFの先頭に目次を付けるかも選べます。
ページ範囲やしおりの指定が要らず、ファイルを並べて1本にするだけなら、CubePDF Pageのほうが迷わないと思います。
結合したあと、しおりはどう見えるか
複数のPDFを1本にすると、当然ながらページ数はそのぶん増えます。50ページを超えてくると、受け取った側はスクロールで目的の章を探すしかありません。
PDFsam Basicで目次やしおりを残しておけば、相手は左側のパネルから飛べます。ただし、しおりはPDF側の設定で最初から開くようにしておかないと、たたまれたまま気づかれないことがあります。せっかく整理したのに使われないのは、もったいない。
Macは標準の「プレビュー」だけで終わります
Macを使っているなら、何も入れずに済みます。
手順はAppleのユーザガイドに載っています。結合したいPDFをプレビューで開き、メニューの「表示」>「サムネール」でサイドバーにページを表示する。もう一方のPDFも同じようにサムネールを出しておいて、追加したいページをサイドバーからサイドバーへドラッグする。これだけです。
PDFを丸ごと足したいときは、FinderからPDFのアイコンを、開いている書類のサイドバーにドラッグします。ページの並べ替えもサムネールのドラッグで、連続していないページを選ぶときはCommandキーを押しながらクリックします。
気をつけたいのは保存で、プレビューで加えた変更は自動的に保存されます。元のPDFをそのまま残しておきたいなら、作業を始める前に「ファイル」>「複製」でコピーを作ってから触ってください。元データを上書きしてから気づくと、手の打ちようがありません。
PDFになる前の書類なら、Finderだけでまとまります
画像やスキャンしたファイルなど、まだPDFになっていない書類を1本にしたい場合は、プレビューを開く必要すらありません。
Finderでファイルを選び、Controlキーを押しながらクリックして「クイックアクション」>「PDFを作成」。これで1つのPDFができあがります。
並び順は選んだ順になるので、先にクリックしたファイルが前に来ます。Finderウインドウのプレビューパネルにある「PDFを作成」ボタンからでも同じことができます。パネルが見当たらないときは「表示」>「プレビューを表示」で出してください。
Acrobatの結合は有料プランの機能です
「Adobeの純正なら確実だろう」と考えて、無料のAcrobat Readerを入れる人は多いと思います。ただ、Readerは表示と注釈、フォームへの入力と署名が中心で、結合はそこに含まれていません。
Adobeの料金ページを見ると、「複数形式のファイルを1つのPDFに結合」はAcrobat StandardとAcrobat Proの機能として並んでいます。Readerの欄にこの項目はありません。
価格は2026年10月時点で次のとおりです(いずれも税込)。
- Acrobat Standard:年間プランの月々払いで1,980円/月、年間プランの一括払いで23,760円/年、月々プランで3,300円/月
- Acrobat Pro:年間プランの月々払いで2,530円/月、年間プランの一括払いで30,360円/年、月々プランで3,850円/月
すでに契約しているなら、ツールから「ファイルを結合」を選び、ファイルを追加して、サムネールをドラッグで並べ替えて結合を押すだけです。フォルダーごと放り込めるので、ファイル数が多いときはこれがいちばん速い。
結合のためだけに年間23,760円を払うかというと、私は払いません。月に数回まとめる程度なら、無料ソフトで困らないからです。Acrobatを契約する理由になるのは、編集やOCR、墨消しといった結合以外の機能だと思います。
オンラインの結合ツールは、ファイルを預けている
では、ブラウザで使う結合ツールの何が問題なのか。処理をしているのが自分のパソコンではなく、相手のサーバーだという一点です。
これは怪しいサイトに限った話ではありません。Adobe公式のオンライン結合ツールのページにも、「ファイルは、アドビのサーバーによって安全に処理され、ログインして保存しない限り削除されます」と書かれています。安全に処理する、保存しなければ削除する、と約束してはいますが、裏を返せば一度は送っているということです。
最近は「ブラウザの中だけで処理するので送信しません」とうたうツールも増えました。技術的には実現できますが、本当にそうなっているかは通信を見ないと分かりません。
社外秘、個人情報、マイナンバーが載った書類は、迷った時点で手元の処理に寄せたほうが早いと思っています。判断に使う時間のほうが、ソフトを入れる時間より長くなりますから。
うまくいかない方法と、画像だけは例外
遠回りした話も書いておきます。
1つ目は、WordにPDFを読み込んでPDFとして出し直す方法です。Microsoftの公式ページには、WordでPDFを開くとWord文書に変換され、見た目が元のPDFと同じにならないことがある、と書かれています。図やグラフが多いページはまるごと画像として扱われ、文字が編集できなくなることもあるそうです。レイアウトが崩れたものを「まとめました」と送るわけにはいきません。
2つ目は、1ファイルずつMicrosoft Print to PDFで印刷して、同じファイル名で保存していく方法です。既存のPDFに追記されるわけではないので、上書きされて最後の1つだけが残ります。
ただしまとめたいのが画像ファイルなら、Windows標準の機能だけで1つのPDFにできます。エクスプローラーで画像をまとめて選び、右クリックの「印刷」を選ぶと「図の印刷」ダイアログが開くので、プリンターに「Microsoft Print to PDF」を指定する。これで複数ページのPDFが1つできあがります。
ここで私がやらかしたのは並び順でした。出力したPDFを開いたらページの順番がばらばらで、ファイル名の頭に01、02と番号を振り直してから印刷し直すはめになりました。結局いちばん時間を食ったのがこの工程です。
まとめ
Macなら追加のソフトはいりません。プレビューでサムネールをドラッグするか、Finderで「クイックアクション」>「PDFを作成」。それで終わりです。
Windowsは標準機能では結合できないので、CubePDF PageかPDFsam Basicのどちらかを入れることになります。どちらも無料で、公式サイトにネットワーク接続が不要だと明記されています。結合と分割だけで足りるならCubePDF Page、ページ範囲の指定やしおりの扱いまで触りたいならPDFsam Basic、という分け方で選べばいいと思います。
Acrobatの結合はStandard以上の機能で、年間プランの月々払いで1,980円/月から。結合だけのために契約する金額ではありません。
オンラインのツールが危ないという話ではなく、書類の中身で使い分ける話です。公開予定の資料やブログ用の画像なら、私もブラウザのツールを使います。相手の名前と住所が載っているなら、手元で済ませます。
Adobeが自社のページに「アドビのサーバーによって安全に処理され」と書いているのは、そこを隠していないという意味で信用できる表示でした。同じことを書いていないサービスに、同じ基準で書類を渡すことはできません。
結合したPDFは、送る前に開いて全ページ確認してください。順番が入れ替わっていたり、同じページが2回入っていたりするのは、たいてい送ったあとに気づきます。私は番号を振り直して印刷からやり直しました。