扇形に切ったスイカを皮ごと持って食べると、指先も口の周りもベタベタになります。フォークを使えば汚れませんが、今度は果肉が崩れて皿に赤い汁がたまる。子どもに渡せば、だいたい服に落とします。
この面倒をまとめて片づけるのがスティック状の切り方です。細長い棒に切り分けると、皮の側がそのまま持ち手です。片手でつまんで、口に運んで、白いところまで来たら捨てる。皿もフォークも要りません。屋外なら、切って持って行った容器をそのまま器として使えます。
この記事では、スイカをスティック状に切る手順を、包丁をどの向きに何回入れるかまで具体的に説明します。
やることは「半分に割って、格子状に包丁を入れる」だけです。文にすると2行で終わります。ところが実際に台所に立つと、どちらの面を下にするのか、刃をどこまで下ろすのかで手が止まります。手が止まるのは、たいてい置き方のところです。そこを先に潰しておきます。
あわせて、扇形に切ったほうがいい場面も書きます。スティック切りは万能ではありません。すいかは中心がいちばん甘いので、中心から放射状に切り分けたほうが甘い部分は均等に分かれます。格子状に切ると、そこは崩れます。人が集まる席で配るなら、昔ながらの扇形のほうが理にかなっています。
後半では、包丁に種を当てない切り方と、切ったあとの保存温度もまとめました。スイカは冷やしすぎると味が落ちる果物で、冷蔵室に丸ごと入れっぱなしにするのは適温を下回ります。
スティック状に切る手順は4つ
必要なのは、よく切れる包丁とまな板だけです。専用の道具は要りません。
ただし刃渡りだけは見ておきます。刃がスイカの高さの半分に届かないと、一度で下ろしきれず、途中で引き抜いて刺し直すことになる。そこで果肉が裂けます。大玉を扱うなら、刃渡りの長い牛刀やパン切り包丁のほうが素直に入ります。
1. 洗って、へたと反対側を薄く落とす
皮の表面を水で洗って、水気を拭きます。次に、へたと反対側のおしりを1cmほど薄く落とす。平らな面ができると、置いたときにスイカが転がりません。この一手間を省くと、次の工程で刃が滑ります。
2. 縦ではなく「輪切りの向き」で半分に割る
へたを上にして、赤道を切るように半分にします。縦半分ではありません。輪切りの向きに割ると、断面が大きな円になる。この円が、あとで格子を引くための面です。
3. 切り口を下にして、まな板に伏せる
ここがいちばん大事です。丸い皮の側が上、赤い断面が下になるように伏せます。伏せると座りが安定して、包丁を下ろすときにスイカが動きません。切り口を上に向けたままだと、刃を入れた瞬間に果肉が割れて転がります。
4. 2〜3cm幅で一方向に切り、90度回してもう一度
上から見て、2〜3cm幅の平行線を引くように包丁を下ろします。刃はまな板まで下ろしてかまいません。皮の手前で止める必要はなく、最後まで切り離したほうがきれいに分かれます。
切り終えたら、スイカを90度回して同じことをします。上から見ると碁盤の目。持ち上げれば1本ずつ棒状に外れます。
幅は2cmを下回ると細すぎて途中で折れます。逆に4cmを超えると一口が大きくなり、かじったときに汁が垂れます。手の小さい子どもに渡すなら2cm、大人が食べるなら3cmが扱いやすい厚みです。
この切り方は、アメリカのすいか生産者団体(National Watermelon Promotion Board)がスナック向けの切り方として紹介しているものです。日本では扇形が定番ですが、向こうでは棒状に切ってそのままつまむ形が一般的に扱われています。
皮を残すか、外すか
スティック切りには2通りあります。皮を残すほうが手軽で、皮を外すほうが食べやすい。
皮を残すと、白い部分がそのまま持ち手です。洗い物が出ず、食べ終わったら皮だけ捨てればいい。屋外やベランダで食べるならこちら。
皮を外すと、端まで食べられる1本になります。ヨーグルトやディップにつけるなら、こちらが向いています。弁当箱やタッパーに詰めるときも、皮がないぶん場所を取りません。
皮を外す場合は、手順2で半分にしたあとに先へ進みます。断面を下にして立て、皮のカーブに沿って包丁を上から下へ滑らせ、緑と白をまとめて削ぎ落とします。赤と白の境目を狙うと、食べられる部分をほとんど捨てずに済みます。削ぎ終わってから、手順4の格子を引きます。
削いだ白い部分は捨てなくても構いません。緑の外皮だけをむいて薄く切れば、浅漬けや炒め物に回せます。捨てるのは緑の外皮だけで済みます。
扇形とスティック、どちらを選ぶか
味の分け方で決まります。
独立行政法人農畜産業振興機構の解説によると、すいかは中心部分がいちばん甘く、中心から放射状になるように切り分けると、その一番甘い部分を均等に分けられます。三角形の扇形に切るのは、見た目の問題ではなく、甘さを公平に配るための形でした。
スティック切りは、この公平さを捨てる代わりに食べやすさを取る切り方です。格子状に切ると、中心に近い棒は甘く、皮に近い棒は淡くなります。真ん中の数本を取った人が得をする。
だから使い分けは単純です。
- 来客や親戚の集まりなど、人に配る場面 → 扇形
- 家族で好きなだけつまむ、子どものおやつ、屋外 → スティック
判断の材料は、配る相手がいるかどうかだけです。甘さのばらつきは、食べ比べる相手がいなければ表に出ません。
包丁に種を当てない切り方
断面に種の切り口が並ぶと、見た目が悪いうえに食べるとき舌に当たります。これは切る位置で減らせます。
同じく農畜産業振興機構の解説によると、すいかの種は表面のしま模様に沿って並んでいて、しま目としま目の間の緑の部分には入っていません。つまりしま目としま目の中間に包丁を入れると、刃が種の列を避けて通ります。
効くのは最初に半分へ割るときです。手順2で赤道を切るとき、黒いしま模様そのものを狙わず、しまとしまの間を通します。断面に種の切り口がほとんど出ず、赤い面がきれいに残ります。
そのあとの格子は幅で決めるので、しま目は関係ありません。最初の一太刀だけ意識すれば十分です。
切ったあとの保存と、食べ頃の温度
スイカは冷やせば冷やすほどおいしくなる果物ではありません。
農畜産業振興機構によると、保存の適温は8〜10℃で、これより低い温度では果肉が低温障害を受けて味も悪くなります。家庭用の冷蔵庫の冷蔵室はおおむね3〜6℃なので、丸ごと入れっぱなしにするのは冷やしすぎです。
食べる側の温度も別にあります。JA全農長野県本部は、すいかの食べ頃を15度くらいとしたうえで、冷蔵庫から出してすぐは冷え過ぎなので少しおいてから食べるとよい、と説明しています。切ってすぐ出すのではなく、皿に並べて数分置くほうが甘く感じます。
切ったスイカは断面から乾きます。食べきれないぶんはラップで断面を覆って冷蔵し、早めに食べきる。スティック状にしたものは、重ねずに保存容器へ並べるほうが形が崩れません。
もうひとつ、農林水産省の記事に載っている食べ方があります。すいかは果肉の9割が水分で、糖分やカリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラルを含みます。少量の塩をかけて食べると甘味を強く感じるだけでなく、スポーツドリンクと同じような効果が期待でき、熱中症の予防になるとされています。夏の屋外でスティックを配るなら、塩を少し振っておく手があります。
参考:JA全農長野「【すいか】食べ頃の温度は何度ですか?」/農林水産省「すいか」
まとめ
スティック状の切り方は、覚えることが2つしかありません。輪切りの向きに半分へ割ること、そして切り口を下に伏せてから格子に切ることです。この2つを外すと、スイカが転がるか、果肉が割れます。
幅は2〜3cmが扱いやすい厚みです。2cmを切ると折れやすく、4cmを超えると一口が大きくなって汁が垂れます。子どもに渡すなら細め、大人だけなら太めで差し支えありません。皮は残せば持ち手、外せば端まで食べられる1本。屋外なら残す、容器に詰めるなら外す、と場面で決めれば迷いません。
そのうえで、扇形をやめる必要はありません。すいかは中心がいちばん甘いので、人に配る席では中心から放射状に切ったほうが甘さが公平に分かれます。スティック切りが向いているのは、配る相手を気にせず自分たちでつまむ場面です。
最初の一太刀は、しま目としま目の間を通します。種がしま模様に沿って並んでいるので、その間を抜ければ断面に種の切り口が出ません。
保存では冷やしすぎに気をつけます。適温は8〜10℃で、それより低いと低温障害で味が落ちます。冷蔵室に丸ごと入れっぱなしにせず、切ったぶんをラップで覆って冷やし、食べる前に少し置いて15度前後に戻す。最後に塩をひとつまみ振れば、甘味が立ち、水分とミネラルの補給も兼ねられます。
切り方を選ぶ基準は、味ではなく場面です。配る相手がいるなら扇形。自分たちでつまむならスティックで、棒にして容器へ並べておけば、皿もフォークも出さずに一本取れます。ただし甘さの均等は手放します。