帰省から戻ってきて玄関のポストを開けた瞬間、「うわ」と声が出たことはありませんか。
チラシと請求書と封筒がぎゅうぎゅうに詰まって、無理やり押し込まれたハガキは折れ曲がり、はみ出した封筒は雨で波打っている。ついでに不在票が3枚。しかもそのうち1枚は保管期限が切れていて、荷物はすでに発送元へ返送済み…。
実家に4〜5日帰るだけでも、これは普通に起こります。
私も以前、1週間ほど家を空けて戻ったら、ポストからチラシが半分こぼれ落ちていました。これでは「今この家は留守です」と近所中に掲示しているのと同じで、さすがに反省しました。
ところが郵便物のほうは、出発前に窓口で紙を1枚出しておくだけで止められます。日本郵便の「不在届」という仕組みで、料金は0円。届け出た期間に届いた郵便物を郵便局が預かってくれて、帰ってきたころにまとめて配達してくれます。
一方で、宅配便は同じ手が使えません。こちらは「止める」のではなく「受け取り方をずらす」のが正解で、放っておくと7日で発送元へ返送されます。
この記事では、長期不在のあいだに郵便物と宅配便がどうなるのか、日本郵便の「不在届」で何がどこまで止まるのか、そして宅配便だけは止められない理由と代わりの手を、出発前チェック表つきで整理します。
お盆や年末年始、長期出張の前に効いてくる話です。知らないと確実に損をする側の仕組みなので、10分だけお付き合いください。
数日空けるだけでも、ポストは意外と危ない
長期不在でポストが埋まる問題は、単に「片づけが面倒」で終わりません。
警視庁は侵入窃盗の防犯対策として、新聞が郵便受けに溜まっていると泥棒に留守を悟られてしまうため、長期間留守にするときは新聞の配達を止めるよう手配しましょう、と案内しています。
つまりポストの中身は、外から丸見えの「在宅センサー」でもあるわけです。郵便物が口からはみ出している家と、きれいに空っぽの家。下見する側からすれば、判断はあっという間でしょう。
加えて、濡れた封筒がくっついて中の書類が読めなくなる、投函口が詰まってその後の郵便物が入らない、といった実務的な事故も起きます。
ポスト対策は、防犯とトラブル防止をまとめて片づけられる、コストゼロの一手です。
郵便物は「溜まるもの」と「7日で返るもの」に分かれる
何もせずに家を空けた場合、届いた郵便物の運命は2つに分かれます。ここを混同していると、対策の優先順位を間違えます。
ポストに入るものは、ただ溜まる
普通のハガキや封書、ダイレクトメール、ポスト投函で完結する小さな荷物は、留守でもそのまま投函されます。誰も回収しないので、日数ぶんだけ積み上がっていく。これは前の章で書いたとおり、防犯上のリスクになります。
受領印が必要なものは、7日で差出人に戻る
問題はこちらです。書留や簡易書留、本人限定受取郵便、ゆうパック、代金引換など、対面で渡す必要があるものは不在票が入ります。
日本郵便によれば、受取人が不在だった郵便物は配達郵便局で7日間保管され、7日間以内に配達できない場合は差出人に返送されます。
7日という数字は、実家に1週間帰る人にはかなりシビアです。帰宅してから不在票に気づいた時点で、すでに手遅れになっているパターンがあります。
返送されて痛いのは、クレジットカードや通帳、行政からの書類、期限のあるチケット類。再送の手続きに何日もかかるうえ、相手に「戻ってきましたよ」と連絡させる形になるのも気まずいところです。
参考:日本郵便「郵便物の受取人が不在だった場合、配達郵便局では何日間保管されますか?」
不在届を出せば、最長30日まとめて預かってもらえる
ここで登場するのが「不在届」です。
日本郵便の案内では、旅行などで長期間不在にする場合、不在届で不在期間(最長30日)をあらかじめ届け出ておけば、その期間内に到着した郵便物等は届出期間の終了後に配達されます。保管期間満了日の翌日に、預かっていたぶんがまとめて配達されるという流れです。
つまり、ポストに溜まる問題と、7日で返送される問題を、1回の手続きで同時に消せます。しかも無料。私は初めて使ったとき、こんな仕組みが窓口に普通に置いてあったのかと、少し悔しくなりました。
出し方は「窓口に行くだけ」
不在届の提出先は、自宅への郵便物の配達を行う郵便局、または自宅の最寄りの郵便局です。オンラインでは完結せず、窓口へ持っていく形になります。
持ち物は、本人と確認できる資料(マイナンバーカードや運転免許証など)。用紙は郵便局にも備えてありますし、日本郵便のサイトからダウンロードして印刷したものでも提出できます。
出発直前に慌てないよう、郵便局が開いている平日のうちに済ませておくのが無難です。旅行の準備は前日夜に始まる人ほど、ここは先回りしておきたいところ。
知っておきたい3つのクセ
便利な制度ですが、細かいところに独特のルールがあります。
- 一部だけ止めることはできない。同居している家族の一部だけ、あるいは特定の種別だけを保管対象にする、といった指定はできません。世帯あての郵便物等がまとめて保管されます
- なりすまし防止のため、届け出をすると自宅に「不在届受付確認票」が届きます。心当たりのない確認票が入っていたら、それは要注意のサインという設計です
- 保管中に家族が在宅していることが判明した場合は、預かっていた郵便物がすべて配達されます
1つめは地味に大事です。同居家族がいて、その人は家に残るという状況だと、不在届はそもそも向いていません。
参考:日本郵便「長期間不在とする場合の郵便物等の配達について」
落とし穴:止めた郵便物は「期限」まで止まらない
不在届でいちばん注意したいのが、期限のある郵便物です。
止められるのは配達だけで、書類に印刷された支払期限や返送期限は待ってくれません。30日ぶんまとめて受け取ったら、払込用紙の期限が切れていた、更新の案内に気づくのが遅れた、という事故が起こり得ます。
私は公共料金や税金の払込用紙が来る時期に長期で家を空けたことがあり、帰宅後に日付を見て肝を冷やしました。ぎりぎり間に合いましたが、あれは運が良かっただけです。
不在にする月に届きそうな請求・更新の予定があるなら、出発前に支払いを済ませるか、口座振替やアプリ払いに切り替えておく。ここまでやって、ようやく安心して家を出られます。
30日を超えるなら「転居届」で転送に切り替える
単身赴任や長期出張、実家に数か月身を寄せるようなケースでは、30日では足りません。その場合は、郵便物を実際に滞在する住所へ転送する「転居・転送サービス」が選択肢になります。
転送期間は届出日から1年間です。ここで勘違いしやすいのが起算日で、転送開始希望日からの1年ではありません。早めに出しすぎると、そのぶん有効期間を先に使ってしまう形になります。
申し込みは、オンラインの「e転居」なら24時間受け付けで最短5分。ただし本人確認済みのゆうIDでのログインが必要です。窓口やポスト投函での提出もできます。
そしてもう1つ大事なのが、反映までの時間。日本郵便の案内では、転居届を提出してから登録までに3〜7営業日を要するとされています。「明日から転送してほしい」は通らないので、動くと決めた日に出すのが正解です。
なお転送期間が終わったあとの郵便物は差出人に返還されるため、期間中に各種サービスの登録住所を直しておく必要があります。転送はあくまで、住所変更を進めるための猶予期間という位置づけです。
宅配便は不在届では止まらない。7日の砂時計が回り出す
ここを勘違いしている人が多いのですが、郵便局の不在届は宅配便会社の荷物には効きません。ヤマト運輸や佐川急便は別の会社なので、当然といえば当然です。
ヤマト運輸の案内では、長期不在で受け取れない荷物の保管期間は、最初にご不在連絡票を届けた日を含めて7日間。クール宅急便は最初にご不在連絡票を届けた日を含めて3日間で、一部の品物は3日より短い場合もあるとされています。
そして保管期限の延長はできません。期限を超えると、依頼主(発送元)に確認のうえ返送されます。つまり不在期間にクール便を飛び込ませてしまうと、産直の桃や冷凍食品が、こちらの帰宅を待たずに旅立っていくわけです…。
「止める」のではなく「かぶせない」
宅配便の対策は、不在期間に荷物をぶつけないこと。具体的にはこの4つで、ほぼ足ります。
- 不在期間に到着する注文をそもそも作らない。出発前の数日は、通販の「お届け予定日」を必ず確認してから注文する
- すでに発送済みなら、追跡番号から配達日時の変更や受取場所の変更を申し込む。ヤマト運輸の案内では、営業所での受け取りへの変更や、別の住所への転送に切り替えられます
- コンビニ受け取り、宅配ロッカー、営業所止めを使い、帰宅後に自分のタイミングで回収する
- お中元やお歳暮のような「送られてくる」荷物は、贈り主に不在期間を伝えておく。これがいちばん確実です
保管日数は会社ごとに違います。ヤマト運輸以外の荷物は、不在票に書かれた保管期限の日付を見るのが確実で、記憶や噂で判断しないほうがいいところ。
ちなみに定期便も忘れやすい要注意枠です。食材宅配やウォーターサーバー、雑誌の定期購読は、不在期間ぶんをスキップ設定にしておくと帰宅後がすっきりします。
参考:ヤマト運輸「長期不在で荷物が受け取れない場合、荷物はどうなりますか?」
出発前チェック表:この順番でつぶすと漏れない
ここまでの内容を、実際に動く順番に並べ直しました。長期で家を空けるときに、上から順に確認してみてください。
1週間前までに
- 不在期間を確定する(郵便局に届け出る日数は最長30日)
- 30日を超えるなら、不在届ではなく転居・転送サービスを検討(登録まで3〜7営業日)
- 不在期間に届きそうな請求書・更新案内の有無を確認し、先に支払う/口座振替に切り替える
- 通販の注文予定を洗い出し、お届け予定日が不在期間に入らないよう調整
- 食材宅配・ウォーターサーバー・定期購読を休止またはスキップ設定
数日前までに
- 郵便局の窓口で不在届を提出(本人確認資料を持参。用紙は局にもある)
- 新聞は販売店に休止の連絡(警視庁も長期不在時の対策として案内している項目)
- 発送済みの荷物は、配達日時の変更または受取場所の変更を申し込む
- お中元など送られてくる荷物がありそうなら、贈り主に不在期間を伝える
- 宅配ボックスの中身を空にしておく(埋まっていると使えない)
出発当日に
- ポストの中身を全部回収して空にする
- ポストの施錠を確認(鍵がないタイプなら、投函口から見えにくい工夫を)
- 玄関前や庭に荷物・置き配の残骸を出したままにしない
- 「不在届受付確認票」が届いていたら、受け付けられている証拠なので確認しておく
紙に書き写すより、スマホのメモにコピーしてチェックボックスにするのが早いです。毎年のお盆と年末で使い回せます。
帰省先へ荷物を先に送る派なら、送料の考え方は別記事にまとめています。
関連記事:薄い荷物を一番安く送る早見表|厚さ3cmの壁とレターパックの使い分け
まとめ
長期不在のポスト対策は、郵便と宅配便で発想がまったく違います。
郵便物は「止める」。郵便局の窓口に不在届を出せば、最長30日ぶんを預かってもらえて、届出期間の終了後にまとめて配達されます。費用はかかりません。ポストが溢れて留守がバレる問題と、受領印が必要な郵便物が7日で差出人に返送される問題を、これ1枚で同時に片づけられます。
宅配便は「かぶせない」。ヤマト運輸の保管期間は不在連絡票を届けた日を含めて7日、クール宅急便は3日で、延長はできません。だから止めようとするのではなく、注文のタイミングをずらす、受取場所を営業所やコンビニに変える、贈り主に不在期間を伝える、という先回りが効きます。
30日を超える不在なら、不在届ではなく転居・転送サービス。転送期間は届出日から1年、登録までは3〜7営業日と考えて、思い立った日に申し込むのが正解です。
やることは、郵便は窓口で1枚、宅配便は到着日をずらす、新聞は販売店に一報。この3つだけで、帰宅後のポストは驚くほど平和になります。
個人的にいちばん推したいのは、やはり不在届です。窓口で数分、料金0円で、荷物の返送事故と防犯リスクをまとめて減らせる制度が、あまり知られていないまま置かれているのはもったいない。次の連休で家を空ける予定があるなら、郵便局に寄るスケジュールを1つ入れておく価値があります。
そして忘れずに、不在期間に期限が来る支払いだけは先に処理しておくこと。ここだけは制度が助けてくれない部分で、30日ぶんまとまって届いた封筒の中から期限切れの払込用紙が出てくる展開は、地味に効きます。