ホームセンターの照明コーナーで、丸い蛍光灯の棚がすかすかになっているのを見たことはありませんか。
売り切れが続いているのではなく、そもそも作るのをやめる方向に動いています。水銀に関する水俣条約の決定を受けて、一般照明用の蛍光ランプは製造と輸出入が種類ごとに順番で禁止されていきます。「2027年末で蛍光灯が終わる」という言い方をよく見かけますが、実際は電球形の一部がもう2025年末で区切られていて、期限は1つではありません。
禁止されるのは製造と輸出入だけです。いま使っている蛍光灯をそのまま使うことも、店に残っている在庫を買うことも止められていません。効いてくるのは、切れたときに同じものが買えなくなる場面のほうです。
蛍光灯をLEDに替えられるかどうかは、ランプではなく、いま天井についている照明器具の側で決まります。電球形ならLED電球を自分でねじ込んで終わりですが、直管になると、器具によっては電気工事士に配線を触ってもらわないと危険な場合があります。
この交換でいちばんもったいないのは、「工事不要」と大きく書かれた直管LEDを買ってきて、合わない器具に付けてしまうことだと私は思っています。安定器を外さずに使って出火した事故が、国の機関に報告されています。パッケージの「工事不要」は、どんな蛍光灯器具にも付くという意味ではありません。
ちなみに日本照明工業会によると、国内で使われている照明のLED化率は2026年3月末で67.5%です。裏を返せば、まだ3台に1台はLEDになっていません。
製造終了の期限は種類ごとに違う
まず期限から片づけます。環境省がまとめている禁止の時期は、ランプの種類と、中に使われている蛍光体で分かれています。
- 電球形蛍光ランプ(30W以下)は2025年末まで。2026年1月1日から製造・輸出入が禁止
- 電球形の30Wを超えるもの、コンパクト形、ハロりん酸塩を主成分とする蛍光体を使った直管形と環形は2026年末まで。2027年1月1日から禁止
- 三波長形の蛍光体を使った直管形と環形は2027年末まで。2028年1月1日から禁止
よく言われる「2027年末」は、いちばん最後のグループを指しています。台所の細長い蛍光灯も、居間の丸い蛍光灯も、家庭にあるものはだいたいここに入ります。
日本照明工業会の説明も同じで、禁止されるのは製造と輸出入であって、流通在庫の販売や購入、そして使用は禁止されません。ストックしてある替えの蛍光灯を今日捨てる必要はありませんが、在庫はいつか尽きます。
しかも期限が近づくほど、メーカーは作る量を絞っていきます。器具が壊れる前に、ランプのほうが先に手に入らなくなる。順番が逆なんですよね。
参考:環境省の規制解説ページ
まず、家の蛍光灯を3つに仕分ける
家の中の蛍光灯は、形で3つに分かれます。ここを分けないと、店で何を買えばいいのかが決まりません。
- 電球形。白熱電球と同じねじ込み式で、玄関やトイレ、洗面所、ダウンライトに多い
- 丸形(環形)。輪っかの形をしていて、居間や寝室のシーリングライトの中身になっている
- 直管。細長い棒の形で、台所の手元灯、洗面台の鏡の上、書斎や事務所の天井に多い
難易度も、だいたいこの並びのとおりです。電球形がいちばん簡単で、直管がいちばん面倒。丸形はその中間で、「どこまでやるか」を自分で決めることになります。
脚立を出す前に、もう1つ見ておくものがあります。照明器具そのものに貼られた銘板、つまり型番や製造年が書かれたシールです。直管の器具なら「グロー式」「ラピッド式」といった点灯方式が書かれていることが多く、これが後で効いてきます。
シーリングライトの場合は、カバーを外した内側か、天井に接する面に貼ってあります。製造年も一緒に載っているので、スマホで1枚撮っておくと買い物のときに迷いません。
電球形はLED電球に替えるだけ。確認は3つ
電球形蛍光ランプは、3つの中でいちばん気楽です。ソケットに合うLED電球に替えるだけで、工事も資格も要りません。
ただし、買う前に確認するものが3つあります。
1つ目は口金のサイズ。外した蛍光灯のねじ部分の直径がだいたい26mmならE26、17mmならE17です。ここを間違えると、そもそもソケットに入りません。
2つ目は密閉形器具に対応しているか。浴室灯や、ガラスのカバーですっぽり覆われた器具は熱がこもります。パナソニックは、放熱を妨げる密閉型器具での使用は短寿命の原因になるとして、対応した製品を選ぶよう案内しています。
3つ目は、取り付け先が天井に埋め込まれたダウンライトかどうか。天井裏に断熱材が敷き詰められている住宅では「断熱材施工器具対応」と書かれたものを選びます。断熱材で放熱が妨げられると短寿命や火事の原因になる、とメーカーははっきり書いています。
※壁のスイッチがつまみ式の調光器になっている部屋だけ、もう1つ。調光器対応と書かれたLED電球を選んでください。対応していないものを付けると、ちらつきや、うなるような音の原因になります。
丸形はランプだけか、器具ごとか
居間の丸い蛍光灯。ここが、いちばん判断の分かれるところです。
丸形(環形)をそのまま差し替えられるLEDランプは売られていますが、照明メーカー各社は、ランプだけの交換ではなく器具ごとの交換をすすめています。パナソニックは、使用年数が10年を過ぎると故障率が増加し始め、15年を超えての使用は危険が伴うと書いています。ランプを新品にしても、器具の中の安定器や配線は古いままだからです。
現実的な話をすると、丸形の蛍光灯シーリングライトは、天井に引掛シーリングという白い受け口が付いていれば器具ごと自分で交換できます。カチッと回して外し、新しいLEDシーリングライトを載せるだけ。工事費はゼロです!
引掛シーリングが無く、天井に直接ねじ止めされて配線が直結されている器具は話が別で、配線を外す作業になるので電気工事士に頼むことになります。
私は、丸形については器具ごと替えるほうが結局は近道だと思っています。丸形のLEDランプを探して器具との相性を心配するより、引掛シーリングに載るシーリングライトを選ぶほうが、選択肢も多くて早い。
電気代の話も少しだけ。パナソニックの試算では、蛍光灯の器具からLEDの器具に替えると消費電力が約56%減り、年間で約2,900円、10年で約29,000円の差になるとされています。器具代がまるまる浮くほどではありませんが、判断材料にはなります。
参考:パナソニックの交換ガイド
直管は点灯方式を先に見る
細長い直管蛍光灯。ここだけは、勢いで替えないでください。
直管の照明器具には点灯方式が3つあって、どれなのかで取れる手段が変わります。
- グロースタータ式。点灯管(グロー球)が付いていて、スイッチを入れてから点くまで一拍ある。ランプの型番はFLで始まる
- ラピッドスタート式。点灯管が無く、スイッチを入れるとすぐ点く。ランプの型番はFLRで始まる
- インバータ式(高周波点灯専用)。同じくすぐ点き、ランプの型番はFHFで始まる
見る順番は、器具の銘板が先、ランプの型番が後です。パナソニックの案内でも、FLから始まる蛍光灯は「銘板に『グロー式』の文字が表示されているグロー式器具に対応します」と、器具側の表示を基準に説明しています。銘板が薄れて読めないほど古ければ、点灯管があるかどうかを見ます。小さな筒が器具の端にささっていれば、グロースタータ式です。
市販の「工事不要」直管LEDの多くは、このグロースタータ式向けです。点灯管を外してLEDランプを差せば点きます。
問題はラピッドスタート式とインバータ式で、こちらは器具の中の安定器を電気的に切り離すバイパス工事が必要です。この配線作業は電気工事士の資格がないとできません。
ここを飛ばした事故が実際に起きています。製品評価技術基盤機構(NITE)は、ラピッドスタート式の器具に直管LEDランプを取り付ける際に安定器を取り外す工事をせず、安定器内部の部品がショートして出火した例を挙げて注意を呼びかけています。パッケージの「工事不要」は、その商品が想定している方式の器具に付けたときの話です。
参考:NITEの注意喚起
器具が10年を超えているとき
ここまではランプをどう替えるかの話でした。もう1つ、器具の年齢という物差しがあります。
NITEは2026年3月26日にも注意喚起を出していて、使用年数が10年を超えている場合は器具ごとLED照明への交換を検討するよう呼びかけています。外観に異常がなくても内部の電気部品が劣化し、発煙や発火につながるおそれがあるという理由です。
東芝ライテックの資料では、居間や廊下のような使い方で15年、工場のように長く点けっぱなしの環境ではもっと短い年数を交換の目安としています。JIS C 8105-1 にある年間の点灯時間から逆算した数字です。
見た目では分かりません。外側はぴかぴかなのに、中の部品だけが歳を取っている…。だから銘板の製造年を見ます。製造年が2010年代前半より古い器具なら、ランプを1本替えるより器具ごと入れ替えたほうが、たいてい安全で結果も早いです。
なお、バイパス工事で配線を切り離した安定器から発火するおそれはない、とNITEは後日の補足で明記しています。きちんと工事をしたなら、そこは気にしなくていいという意味です。
買いに行く前のチェック表
脚立に乗る前に、これだけ手元に集めておくと店で迷いません。
- 照明器具の銘板を撮った写真。型番、製造年、点灯方式の表示
- 外した蛍光灯そのものの型番。FL・FLR・FHFのどれで始まるか、何形か
- 電球形なら口金のサイズ。E26かE17か
- 器具の取り付け方。引掛シーリングに載っているか、天井に直結されているか
- 点灯管の有無。器具の端に小さな筒がささっているか
- 浴室や密閉カバー、天井埋め込みのダウンライトかどうか
- 壁のスイッチが調光器かどうか
この7つが埋まっていれば、店員さんに見せるだけで話が終わります。逆に1つでも空いていると、「たぶんこれで合うと思うんですけど」という買い物になる。その「たぶん」が外れたときの徒労は、脚立の上げ下ろしのぶんだけ増えます。
写真は3枚でじゅうぶんです。器具の銘板、外したランプの型番、天井への付き方。この3枚があれば、ネット通販でも型番からたどり着けます。
照明器具に限らず、家電の寿命と買い替えの目安は別の記事にまとめてあります。
まとめ
蛍光灯の期限は1本の線ではありません。
電球形の30W以下は2025年末、電球形の30W超とコンパクト形とハロりん酸塩系の直管・環形は2026年末、三波長形の直管と環形は2027年末。止まるのは製造と輸出入だけで、手元の蛍光灯も、店に並んでいる在庫も、これまでどおり使えます。
替えるときに見るのはランプではなく器具のほうです。電球形は口金と密閉・断熱・調光の条件だけ、丸形は引掛シーリングに載っているかどうか、直管は点灯方式がグロースタータ式かどうか。工事の要否はここで決まります。
ラピッドスタート式とインバータ式の器具にバイパス工事なしで直管LEDを付け、安定器がショートして出火した例をNITEが挙げています。「工事不要」は商品の性質であって、うちの器具の性質ではありません。
器具が10年を超えているなら、ランプ選びより先に器具そのものを疑ったほうが早いと思います。外から見て分からないのが厄介で、頼りになるのは銘板の製造年くらい。NITEも10年超なら器具ごとの交換を検討するよう言っています。
私自身は、直管のバイパス工事を個人宅でわざわざやる価値はあまり無いと思っています。工事費を払って中身の古い器具を延命するより、器具ごと替えたほうが保証も付くし、次の10年を考えると気が楽です。丸形のシーリングライトなら、引掛シーリングに載せ替えるだけなので工事費すらかかりません。
とはいえ、在庫があるうちに丸形や直管の替えを1本だけ買い置きしておくのは、私はありだと思っています。切れたその日に店で選ぶと、たいてい「とりあえず点くもの」を買うことになりますから。