増え続ける高齢ドライバーによる車の誤操作事故。先日も長野で80歳男性が運転する車がコンビニに突っ込みニュースになっていました。
このような事故の原因とされるアクセルとブレーキ、あるいはバックとドライブを誤認する理由の一つとして、プリウスなど一部車種のシフトレバーに問題があるのでは?との指摘があがっています。
この記事を書いたのは2016年です。当時は「運転する人の問題か、車の設計の問題か」という議論が始まったばかりでした。
あれから状況は動いています。2028年9月からは、国産の新型乗用車にペダル踏み間違い時の加速抑制装置を搭載することが義務づけられます。当時ここで書いた「メーカーと政府が対策を打つべき」という話は、形を変えて制度になりました。
踏み間違いは、アクセルとブレーキだけの話ではありません。前進と後退の取り違え、つまりRとDを間違える事故も同じくらい起きています。駐車場で車が突然バックする、あるいは店舗に突っ込む。あの形の事故です。
車種によってシフトレバーの動かし方が違うこと自体、意識したことがない人は多いはずです。私も当時、写真を並べて初めて「これは間違えるかもしれない」と感じました。
前半は当時の指摘をそのまま残し、後半に今の対策と数字を足しています。義務化がいつ何に適用されるのか、いま乗っている車に何ができるのか、家族に高齢のドライバーがいるなら後半だけでも読む価値があるはずです。
マニュアル車と逆の配置のシフトレバー
Twitterユーザーの「あるぱか(@arupaka1go)」さんよると、アクセルとブレーキの踏み間違えに関連して、バックとドライブを間違えるというミスも多発しているとのこと。
高齢ドライバーがよくやってしまうアクセルとブレーキの踏み間違えに関連して、バックとドライブを間違えるというミスも多発していることはご存知だろうか。そして、なぜかそのミスはトヨタのプリウスで特に多いという。
その理由をTwitterユーザーの「あるぱか(@arupaka1go)」さんが指摘して、ネット上で大反響を呼んでいる。あるぱかさんによると、プリウスのシフトレバーの配置に問題があるそうだ。
LINK:プリウス乗りの高齢ドライバーが前進と後退を間違える理由がついに判明(netgeek)
こちらはプリウスのシフトレバー。

右上がR(バック)、右下にD(ドライブ)があります。
こちらはマニュアル車のシフトレバー。

Rは右下。これはプリウスとは逆の配置になります(車種によってはRが上の場合もあるようです)。
プリウスのような配置のレバーは、他にもトヨタのSAI、ホンダのフィット(ハイブリッド)、三菱アウトランダー(PHEV)、マツダアクセラ(ハイブリッド)、日産リーフなどにも採用されているそうです。
このシフトレバーの配置、皆さんはどう思いますか?
勘違いしやすい設計という指摘
このシフトレバーの形状は、2つの問題が考えられます。
1つは先の通りマニュアル車のシフトレバーと逆の配置になっている点。今はマニュアル車などほとんど見かけませんが、年配の方たちは思いっきりマニュアル世代です。無意識にRとDを混同してしまう可能性は考えられます。
もう1つは、前にシフト=前進、後ろにシフト=後退と勘違いしてしまいそうな点。一般的なオートマの直線式シフトレバーは[P→R→N→D]という順なので、上にRがある理屈はわかるのですが、意識していないとふとした時に誤操作してしまいそうな気がします。
根本的な原因は運転する人間
プリウスは人気車種で母数が多いため、事故の対象になることも多いでしょう。また、メインターゲットは年配の人たちなので、シフトレバーの問題が顕在化しやすい面もあると思います。
同じようなシフトレバーの車種の事故をあまり聞かないので、やはり根本的な原因はプリウスではなく運転する人だと思います。しかし、年配の方が運転することが多い車であれば、なにより使いやすさを最優先に設計しなければなりません。指摘するのであれば、それこそがプリウスの欠陥であり問題ではないでしょうか。
また、最近ネットでは「プリウスミサイル」というワードが作られ「プリウス=事故を起こす車」というイメージが強くなってきています。社会問題となっている現状、(シフトレバーの件に限らず)できるだけ調査・検証をして誤操作対策を打ち出す必要があります。
例えばですが、携帯の「らくらくホン」のような高齢者専用の車やオプション装備を用意してみるのはどうでしょうか。動作に応じて音声案内を流す仕様で、バックの際は「バックしますが、いいですか?」と音声案内を流し、さらに「確認」ボタンを押して初めてバックできる。このように一呼吸おいて運転すれば、パニックになることは減ると思います。
「恥ずかしくて買えない」「プライドが邪魔する」という方もいると思うので、政府が補助金を出して安価で購入できるようにする。「安い」という名目があれば購入のハードルも低くなると思います。政府にとっても事故の防止とイメージアップにつながるので、無駄なバラマキよりよっぽど有意義です。
これから一層深刻になる高齢化社会、意外とこういう車が売れるのではないでしょうか。
その後、義務化が決まりました
当時この記事で「使いやすさを最優先に設計すべき」「政府が補助金を出しては」と書きましたが、その後、国は制度の側から動きました。
国土交通省は、2028年9月1日以降の国産の新型乗用車に「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」の搭載を義務づけます。対象はAT車で乗車定員10人未満の乗用車。輸入車は2029年9月1日からです。
これは国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP29)で国際基準になったものを、日本の制度に取り込む形。しかも基準のベースになったのは日本の技術です。踏み間違い対策が国際的な標準になった、という流れですね。
性能の中身も具体的に決まっています。障害物の手前1メートルと1.5メートルで停止した状態からアクセルを完全に踏み込んだとき、衝突しないこと。あるいは衝突しても速度が時速8キロ以下で、障害物がない場合と比べて30%以上減速していること。どちらかを満たす必要があります。
参考:国交省、乗用車に「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」搭載義務化(Car Watch)
数字で見る踏み間違い事故
「高齢者の事故が増えている」という印象論ではなく、数字を見ておきます。
事故全体に占める踏み間違いの割合は、75歳未満が0.8%なのに対し、75歳以上は6.2%。およそ8倍の開きがあります。踏み間違いそのものは全年齢で起きていますが、割合として突出するのは75歳以上です。
死亡・重傷につながった事故に絞ると、60歳以上が7割を超えます。年齢が上がるほど、事故そのものよりも「事故が重くなる」ほうの傾向が強い。
事故の起き方にも特徴があります。駐車場での事故、後退中の事故、一度の事故で複数回ぶつかるケースが、高齢層で多いとされています。この記事で取り上げたRとDの取り違えは、まさに駐車場と後退の話です。10年前の指摘は、統計の傾向とも噛み合っていたことになります。
いま家族にできること
義務化は2028年9月以降の新型車が対象なので、いま乗っている車には効きません。手前でできる対策を並べます。
まず後付けの加速抑制装置。国土交通省が性能を認定した製品の一覧を公開していて、認定を受けたものから選べます。自治体によっては購入費の補助制度があるので、住んでいる市区町村の名前と「踏み間違い 補助金」で検索してみてください。
次に、乗り換えを考えるなら衝突被害軽減ブレーキと加速抑制装置が付いた車を選ぶこと。義務化の前でも、すでに多くの車種に搭載されています。
そして、車の設計そのものを確認すること。この記事で取り上げたように、シフトレバーの配置は車種によって違います。買い替えのときにレバーの動かし方が変わるなら、駐車場で何度か練習してから公道に出る。これだけでも取り違えは減ります。
参考:ペダル踏み間違い急発進抑制装置性能認定結果一覧(国土交通省)
まとめ
2016年当時、プリウスのシフトレバーの配置が話題になりました。RとDがマニュアル車と逆に見える、前へ倒すと前進だと思い込みそう、という指摘です。
私はそのとき「根本的な原因は運転する人」と書きました。ただ同時に、年配の人が多く乗る車なら使いやすさを最優先に設計すべきで、政府も補助金を出して対策を後押しすべきだ、とも書いています。
10年たって、その方向に制度が動きました。2028年9月からは国産の新型乗用車に加速抑制装置の搭載が義務化され、輸入車も2029年9月に続きます。装置の性能要件まで具体的に決まり、後付け装置には国の性能認定制度と自治体の補助が用意されました。
数字を見ると、踏み間違いの割合は75歳未満の0.8%に対し75歳以上が6.2%。「気をつける」だけで埋まる差ではありません。装置で止める、という発想が制度になったのは順当な流れです。
家族が高齢で、まだ古い車に乗っているなら、後付け装置と自治体の補助を調べるところから。買い替えを考えているなら、シフトレバーの操作が今の車とどう違うかを試乗で確かめる。この2つが、いま現実的に効く手です。
免許返納の話になりがちですが、車がないと生活が回らない地域もあります。返す・返さないの二択にする前に、装置で危険を減らす方法が現実に用意されている。そこは知っておいて損がないところです。装置が付いた車に替えるだけで、駐車場での不安はかなり減ります。

でも言訳ではアクセルとブレーキを間違えたって言っているのだが
つまり、構造云々はこれ書いたやつの妄想か